HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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骨音~池袋ウエストゲートパーク3/石田衣良
「この世で一番速い音がなんだかわかるだろうか?」という書き出しで始まる『骨音』。テレビドラマの『IWPG外伝~スープの回』の元となった物語だ。この一文で既にメロメロ。ドラマを先に見ていたので物語は知っていたが、よりバイオレンスでキングことタカシのクールな格好良さが際立っている。つーかドラマ版ではキング、ほとんど出てなかったからねぇ…。
  『西一番街テイクアウト』は西口で売春婦をしているヒロコとその娘、香緒をヤクザの手から守るためにマコトとその母が奮闘する物語。これまで小説版ではほとんど登場しなかったマコトの母(ドラマでは大活躍なのだ)の活躍、そしてラストのタイマン勝負で見せるタカシのスピーディなファイティング・スタイルは明らかにドラマ版を意識してるんじゃないかなぁ…。それがドラマ版のファンにはとても嬉しい仕掛けだった。『キミドリの神様』はマコトが池袋で地域通貨を発行するNPOから偽札を製造する犯人を見つけて欲しいと頼まれる物語。私はNPOには詳しくないが、そんな活動があるのかとかなり興味を持った。ま、実際には小説のようなカラクリがないと運営は難しそうだが。
 『西口ミッドサマー狂乱(レイブ)』は150Pにも及ぶ書き下ろし!合法ドラッグが蔓延する社会と、ドラッグと直結したレイヴの世界を描いた中編だ。レイヴ会場で取引されている凶悪ドラッグ「スネークバイト」の売人を捕まえるためにマコトが奮闘する物語。久しぶりにマコトの恋愛模様が楽しめる。この物語の締めくくりは、池袋西口公園で開かれるゲリラレイヴ。Gボーイズが周辺の道路を封鎖、会場周辺はジャマーによって携帯電話の電波を遮断して行われるレイヴパーティ。合い言葉はミッドサマーレイヴ、まさにIWGPにピッタリのイベントなのだ。これがめちゃくちゃ臨場感があって、読んでいるだけで興奮しそう。さ、さすがは石田センセイ…♪義足の歌姫トワコはめちゃくちゃ魅力的な女性だし、マコトとのラブシーンも最高にカッコイイ。そして彼女が最後に選んだ道にも、感動した。この作品はイイぞ!もしかしたらIWGPシリーズの最高傑作かも。
 今までのシリーズ作よりも物語の構成や文体が洗練されているし、登場人物が生き生きと描かれていて感情移入しやすい。1作目や2作目よりも 断然イイ。もちろん外伝よりも全然イイ。あとがきが宮藤官九郎(クドカン)ってのもイイ。クドカンもあとがきで書いているけど、ホント石田センセイって見た目も柔らかな優男だしサイン会の時に聞いた話し方も「知的で物静かな男性」って感じなのに、センセイが書くのは骨が折れた時の音にハマる男だとか売春だとか闇金融だとかドラッグでラリった男達の話。あんな風貌のセンセイのどこからそんな暴力的な話が?と思ってしまうのだが、それはそれでまた一つの魅力なんである。間違いなく本作はシリーズ最高傑作だ。IWGPファンなら必読。これからシリーズ読む人にもお勧めだが、物語の中にチラッと『外伝』の話が出てくるので、そっちを先に読んでおいた方が感情移入度もアップ。そんな作品。ますます石田センセイに惚れた作品。シリーズ4作目の『電子の星』も発売された事だし、まだまだこれからもIWGPにハマっていきそうである。
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石田 衣良 (2004/09/03)
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ルージュ・ノワール赤・黒~池袋ウエストゲートパーク外伝/石田衣良
愛する石田衣良先生の最新文庫作は、『IWGP』の外伝である。主人公の小峰が行動を共にするのはマコトの同級生だったヤクザのサル、そして仕掛けの一部にはキングも登場して物語を盛り上げてくれる。ま、あくまで外伝なので彼らの活躍はサブストーリー的な構成なのだが。この作品、シリーズ2作に比べて断然文章が巧くなってて面白いぞ。
 真夏の早朝の池袋。狂言強盗の後に起こった、仲間割れによる殺人事件。ヤクザに脅されて犯人を捜し始める小峰。彼の本業である映画製作に絡んだ恐喝事件、明らかになった犯人、金を取り戻すための最後の賭け。ここまでの物語が335Pにぎっしりと、そしてスピーディーに描かれている。全てのエピソードに割かれたページ数も内容も丁度良く、テーマが多い割に飽きることがない。まぁ映画製作絡みの恐喝事件は、キングを登場させるだけの“つけたし”っぽいお話だけれども。
 カジノがテーマという事で、最後はルーレットの大勝負が仕掛けとなる。これはね…。ルーレットのルールや形状が多少なりとも分かってないと臨場感ゼロだろう。題名になっている「赤・黒」は、球の落ちる場所が赤か黒かを賭ける手法で倍率は2倍。1点賭けで戻ってくる金額は元金の36倍。それだけ覚えて、手に汗握るラストゲームの行く末を見守ろう。
  トリックにまみれた物語、カジノで身を滅ぼした男が這い上がってゆくクライム・サスペンス。話のネタは馳星周チックだが、相棒のサルが知性的でイイ味を出している。そこら辺が馳先生の物語と違うところ。ヤクザの種類も様々、それが池袋テイストなのかどうか分からないが、主人公にも知性の光が残っている分だけ救われる話だ。ま、最後の大勝負をルーレットでって辺りがちょっと強引だけれども。単なるノワール小説ではない、謎解きの楽しみも味わえる石田先生独特のストーリーだ。『IWGP』ファンなら必読、スマートな先生の知性あふれる物語を堪能しましょう!
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波の上の魔術師/石田衣良
2002年4月からフジテレビで放映されていたドラマ『ビッグマネー!~浮世の沙汰は株しだい』の原作。作者は『池袋ウェストゲートパーク』の石田衣良。ドラマが始まった時から読みたくてしょうがなかったのだが、私はハードカバーは買わない主義。1年半待って、やっと文庫本を手に入れたという訳である。本文も300P弱なので軽い気持ちで読める。ドラマを見ていた人にも違和感なく、と言うよりむしろドラマを見ていた人の方が細部まで状況が把握しやすい事だろう。
 物語は株式市場を舞台に展開するが、株の知識があまりない人でも解るようになっているので安心だ。どちらかと言うと、数字に弱い人の方が大変かもしれない。買った金額より高い金額で株を売れば儲かる、というのが普通の株取引だが、投資家である小塚老人は信用取引を行っているのだ。つまり相場の高い時に先に売り注文を出して、株価が下がったら買い戻す。この時の差額が利益になるという仕組み。このシステムを理解していないと、「秋のディール」の仕掛けや興奮が半減するので、株数と株価とその差額による利益額、なんてモノが速攻で解ると大層スリリングで面白い事だろう。数字苦手な私は小塚老人の説明ナシでは理解不能でしたが。
 私の大好きなクライムサスペンスもの。ただね…ドラマの時も思ったんだけど、内部協力者が多すぎなんだよ!金にモノ言わせて内部協力者を作るのも必要なんだろうけど、ちょっとリアリティに欠けるんだよなぁ~。私はおしゃべりだけど、会社がらみの極秘情報は同業他社の人には絶対にしゃべらないよ。その辺のモラルが欠けてる人間がいてこそ成功する計画。そこだけがちょっと気になったかな。登場人物像はドラマ通りで間違いない。て言うか植木等が演じた小塚老人は本当にピッタリだったなぁ~。ドラマの方が人間模様がより深くなっていて、「秋のディール」の仕掛けも解りやすいかもしれない。本を読む前にドラマのビデオをレンタルするのもお薦め。ドラマの出来も素晴らしいよ。
 タイトルの「波のうえの魔術師」とは小塚老人の事である。株の値動きを波に例えて、株は波の低い時に買い、高い時に売る。この波の動きを的確に読めなければ、相場師とは言えない。そのために白戸がどれほどの努力をしてきた事か。金儲けはラクじゃないのである。物語の終盤に小塚老人が白戸に引導を渡すシーンがあるが、これはなかなか感動的だ。日本のGDPは500兆円。それに対して日本の総資産額は約8,000兆円。1%で運用しても80兆円の利益が出る。その莫大な国の資産を、これからは若い世代が有効に活用していかなければならないのだ。「市場という新しいフロンティアは目前に拓けている。この国の富を守り育むひとりの自由な兵士になるといい」と言われた白戸は、「秋のディール」のツケを払って新しい海へと繰り出していく。何と爽快で感動的な話なんだろう!スティーヴン・キングの『刑務所のリタ・ヘイワース』を読んだ時と同じような読後感。金を稼ぐというよりは金を産むという発想、私は気に入ったぞ。人生一度きり、相場張る位の度胸も必要かもね。
波のうえの魔術師 波のうえの魔術師
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うつくしい子ども/石田衣良
『池袋ウェストゲートパーク』以来、久しぶりの石田作品。テンポが良くて読みやすい文体は変わらず。著者初の長編だそうだが、275ページはかなり軽めの分量だ。素晴らしいあとがきにも書いてあったが、この物語は主人公による一人称と、新聞記者・山崎の動きを著した三人称を交えて書かれている。それがちょっと新しい感じで、違和感のある人もいるかもしれない。でも全編マコトの一人称だった『池袋…』よりは読みやすいのでは。 まぁ作品の出来は今ひとつと言った感であるけれども。
 被害者は9歳の少女。遺体に噛みついた痕がある。そして犯人は近所に住んでいた13歳の少年。とくればピンと来るのが1997年に起こった酒鬼薔薇聖斗事件だろう。 この作品が書かれたのは1999年、あとがきによるとこれは酒鬼薔薇事件を別の観点からとらえようと筆者が意図的に執筆した作品なのだそうだ。それにしてもね…あの結末はどうなんでしょう。もちろんこれはノンフィクションではない。しかしラストがああでは、読者が作者の意図を 読みとるのは難しいと思うよ?単にあの有名な事件をパクって小説書きました、といった感じの仕上がり。もうちょっと真実に近い形で家族の苦しみや主人公の成長を描く事も出来たのでは。
 猟奇的な事件が起こった時、犯人や被害者を追ったドキュメンタリーものが出版される事は多い。好奇心旺盛な人たちがそれを買い求め、ベストセラーになったりする。しかし身近に犯人がいた、という人たちの心境はどんなものか。家族が犯人だった場合、遺されたものはどのような対応をしたら良いのだろう。そして犯人が顔見知りだった場合、犯人やその家族を温かい目で見る事が出来るだろうか? 自分の恋人の弟が殺人犯だったとしても、本当にわだかまりなく彼と結婚する事が出来るのだろうか? 例え犯人が成人であっても、その罪は家族に大きな影を残す。理不尽だと思いながらも、彼らを敬遠してしまう人たちの気持ちも、分からないではないのだ。
 この作品を読んだ後、ネットで酒鬼薔薇事件を調べてみた。 主に当時の新聞記事を読んでいたのだが、中には犯人の顔写真を掲載している 個人サイトもあった。悪趣味である。しかしそれを見たいと思っている人がいるから、そのようなサイトがあるのだろう。事実、私も思わず見てしまった訳だし。犯人の顔が分かったからと言って、どうという事はないのだ。ただのヤジ馬根性である。「殺人の動機を知っても意味がない」という森作品の根本が、何となく分かったような気がした。
うつくしい子ども うつくしい子ども
石田 衣良 (2001/12)
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