HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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夜光虫/馳星周
この本がハードカバーで発売された時、仕事絡みで読んだにも関わらずラストで大泣きした。そして馳 星周が大好きになった。『不夜城』も良かったけど、こんなに切ない気持ちになる話ではない。今でも、馳作品のナンバーワンと言ったら『夜光虫』だと私は思う。そのくらいの傑作。だから文庫になった時、速効で買った。その他の馳作品であのバイオレンスさがダメだった人でも、これならOKなのでは。
 うまくいかない人生に自暴自棄になってマフィアと関係を持ち、ひょんな事から殺人を犯してより深みにはまっていく男の物語。主人公はたった一人の女性に執着するが故に、どんどんその身を崩してゆく。そんな設定はいかにもな馳ワールドなんだけど、他の作品と大きく違うのは主人公が執着する女性が堅気だって事だ。親友の妻である女性に一目惚れして、密かに彼女を想い続けた彼が犯してしまった大罪。でもそれは物語のほんの序章に過ぎなかったし、精緻に組まれた計画の中ではほんのひとコマににしか過ぎなかった。その計画の黒幕は誰か?そしてその計画の結末は?読み出したらもう止まらない、止められない。そして最後に待っている、切ないエンディング。このバランスがたまらないのよ、いろんな意味の愛情に捕われた男が狂っていく様をバカだなあと一言ではすませられない執念を感じるのだ。
 人を貶めようとする時の原動力は“悪意”と“憎悪”であるが、主人公の裏切りは、そのどちらにも当てはまらない行為だったのが悲しい。彼は結局、他人に操られる事しか出来なかったのだ。保身のために重ねた罪も、操る側にしてみれば都合のいい出来事でしかなかった。愛する女性とやっと築いた幸せも、相手につけ込まれる餌にしかならなかった。その事に気付いた彼が必死で這い上がって果たした復讐。「しらを切れ、ごまかせ、丸め込め。」そうやっていろんな人を騙してきたのに、結局彼が手に入れたものは何だったんだろう?彼は何のために台湾まで行ったんだろう?なんて事は本人が一番考えてる事だと思うけど、あまりに苦しい物語である。
 台湾っていうのは不思議な国だ。これまでも『不夜城』などで読んで知ってはいたが、その複雑な歴史に翻弄されたお国柄というのはまだよく分からない。老人が日本語を話す国。台湾語と北京語が入り交じった国。キーマンである王東谷は「自分は皇民だ」と言う。天皇陛下を日本国民以上に尊敬している。今、向こうは日本ブームらしいが、その歴史の背景を若者は知っているのだろうか。そんな事を考えてしまう。でもちょっと行ってみたいとも思う。加賀が口にしていた“びんろう”って何なんだろう?食べ物は辛いのかな?『漂流街』なんかよりこっちを映画化した方が異国情緒たっぷりでいいのにな。国が違っても、人を愛する気持ちは同じである。それでいて家族の絆というテーマに直面せずにはいられない話で、泣けてくるよ。
夜光虫 夜光虫
馳 星周 (2001/10)
角川書店
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