HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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仄暗い水の底から/貴志祐介
映画化もされた事だし古本屋で安かったし。という訳で買ってみたのだが、それまでこの本が短編集だとは知らなかった。映画化されたのは『浮遊する水』というお話なのだが、これだけでよく映画に出来たなぁと感心。まぁ映画の予告篇で見たような、水道から髪の毛が!なんてシーンは小説にはなかったけれども。
 短編集と言ってもプロローグとエピローグがあり、その物語が『海に沈む森』という短編に繋がっているという、短編が一冊となって一つの世界観を確立している造りになっている。完全なホラー作品もあればどこかファンタスティックなホラーもある。どの作品も楽しく、時には切ない気持ちになって読んだ。なかなかの傑作である。
 私はマンションの屋上で子供のカバンが発見される事から恐怖が始まる『浮遊する水』より、東京湾に浮かぶ第六台場で発見した世界を描いた『孤島』の方が好きだ。『浮遊する水』は映画化する程の作品だったろうか?とも思うが、最も映像にしやすいテーマだったのかもしれない。乗客が忽然と消えてしまった高級クルーズ船で味わった恐怖を描く『漂流船』も、映像化しやすい作品のような気もするが。ちょっとしたギミックに楽しく騙された『ウォーターカラー』や、最後にほろっとくる『海に沈む森』などはかなり好きな作品。しかしマルチ商法にハマった夫婦に連れて行かれる『夢の島クルーズ』と突然消えてしまった妻と暴力夫の一日を描いた『穴ぐら』は、読んでてあまり気分のいい作品ではなかった。先が読める展開で、設定も薄っぺらい。まぁホラーの短編集としては大変面白い一冊だったので、全体的には満足だけど。
 物語には全然関係ないところで私が気になったところが一つ。『浮遊する水』では主人公の娘が拾ったカバンにキティちゃんの絵が描いてあったのでそれを欲しがるのだが、母親はそれを「どんなものでも猫ババはいけない」と諫める。そういう教育方針を、亡くなった主人公の母は「融通が利かないねぇ」と顔をしかめるらしいのだが、拾ったものを横取りするのは犯罪である。それを「融通が利かない」という母の方が全くもって理解できないぞ。それとも世間一般的には拾ったものをもらうのは当たり前なんだろうか?ちょっとしたエピソードの一つなんだろうけど、私はどうもそこが引っかかってしまって気持ちが悪かった。編集者が作者にその記述を指摘した上でそのような設定になったのだとしたら、作者の言い分というものを聞いてみたいものだ。
仄暗い水の底から 仄暗い水の底から
鈴木 光司 (1997/09)
角川書店
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