HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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骸骨乗組員/スティーヴン・キング
『暗黒の塔 ガンスリンガー』の解説で引用されていた『霧』が読みたくて、本棚から引っ張り出して読み直してみた。発行日は1986年だから、16年も前だ。この頃私はキングにめちゃくちゃハマっていて、毎日のように文庫本を買っていた。その頃の本なので、本棚から出してきたはいいがカバーもしおりもなくてボロボロ。まぁそんな本でも逆に、読み込んだんだなあっていう愛情がわいてきたりするんだけど。
 『霧』を初めて読んだ時はあまりにデタラメな設定についていけず、私の評価は低かった。当時の私は若かったせいか、ご都合主義やデタラメなものというのを受け入れる度量がなかったのだ。小学生の頃に江戸川乱歩を読んだ時もそうだった。『霧』にも、乱歩と同じような体験がある。昔、キングファンの同僚と話をしていた時の事。彼はキングの真骨頂は『霧』だと言った。デタラメな生き物が出てくる話はリアリティがなくて恐怖を感じない、と反論する私に彼はこう言ったのだ。「あれが、いいんだ」。それ以来封印していた『霧』を改めて読む。彼が「いい」と言った世界を、今の私は理解できるだろうか!?
 その他の短編は、『握手しない男』以外はフツーの出来。目に見えない恐怖や、子供の頃に「こんな事があったら怖いだろうなぁ」と何となく感じていた世界を描いたものが多い。『握手しない男』は『痩せゆく男』を彷彿とさせるストーリーで、ふんわりとした感じのラストがイイ。しかし、この本の読みどころはやっぱり中編の『霧』だろう。ある日突然町にやってきた白い霧。霧の中に発生した不気味な生物に襲われる人間達。スーパーマーケットに閉じこめられた人たちの人間関係は、徐々にバランスを崩してゆく。不気味な生物の恐怖、群衆となった人間心理の恐怖。原因も結果もハッキリしない結末でありながら、舞台設定とその描写が見事な作品だった。傑作である。
 『霧』を改めて読んで、心から面白い!と思えた自分に驚いた。そして何だか嬉しかった。映像が目に浮かぶ緻密な描写がキングの魅力だが、だからこそわざわざ映画化する必要はないんだろうなと改めて思った。それくらい、これは視覚的な作品なのだ。この物語に出てくる生き物を、読んだ人みんなで描いてみたいなぁ。多分みんな同じ絵を描くんだろうと思う。でもやっぱり、この作品は映像で見てみたいと思ってしまう。最近のキングに失われてしまった、いかにもキング!な作品だ。これがキングの真骨頂だという気持ち、よーく理解できましたよ。
スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員
スティーヴン キング、スティーヴン キング 他 (1988/05)
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