HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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金閣寺/三島由紀夫
日本を代表する作家でありながら、一度も読んでいなかった三島作品。まず最初に読むのなら…と選んだのがコレ。ホントは80年代に活躍したイギリスのロックバンドJAPANにいたデビッド・シルビアンが、映画『戦場のメリークリスマス』で発表した曲『Forbidden Color』の元になったと言われている『禁色』を読みたいと思っていたのだが、いきなり男色の話っていうのもなぁ…。コレを読んで三島作品を気に入ったら、是非ともチャレンジしてみたいところだ。
 と思って本編を読む前に二本のあとがきを読んだのだが、これを読んだらいきなり三島由紀夫に対する印象がガラッと変わってしまった。『潮騒』とか『春の雪』とか、耽美調な恋愛作家なのかと思っていたら、彼は実際に起こった事件を題材にした作品の評価が大変に高いらしい。言わば社会派小説の走りってヤツ??是非とも次は東京都知事選を題材にして後にプライバシー訴訟を引き起こしたという『宴のあと』を読んでみたいと思う。彼の生い立ちや辿ってきた人生を知ってからこの本を読むと色々と感じるものがあると思うので、あとがきを先に読む事をお薦めしたいな。
 生まれつき吃音というハンディを背負った主人公は、一種独特な美意識や対人関係を築くようになる。そんな彼は話で聞いた金閣寺の美しさに夢中になり、禅僧であった父の紹介で金閣寺に預けられる事になる。 戦争、そして敗戦。同じ寺の僧である鶴川との友情、大学で知り合った柏木との交流、そして鶴川の死。様々な経験をしてゆくうちに彼は次第に「金閣寺は燃えるべきだ」という考えに取り憑かれてゆく。寺の老師との確執から彼は堕落した人生を歩むようになり、ついには金閣寺に火を放つ。国宝である金閣寺が燃えさかる様はまるで目にしているかのような臨場感で、ひたすら虚しさが残る。
  物語は彼の告白という形で進んでゆく。情景の描写、人間の捉え方、どれもお耽美で哲学的だ。そして色の描写がとても美しい。日本語とは本当に美しい言語だとしみじみと感じる。主人公が歪んだ人生観を抱くようになる様々な人間関係も、設定はリアルだが情景はファンタジックである。柏木が華道の先生と関係を持ち、その後彼女を捨てるシーンでは、座敷に紫色のカキツバタがばらまかれる。暗い日本間に対比するカキツバタの紫と女の着物の薄紫。南禅寺の座敷で彼女が陸軍士官の男の茶碗に母乳をしたたらせるシーンも、かなり印象的だ。物語の本筋には関係のない小さなエピソードの1つ1つが、美に彩られている。彼が描く京都の寺社は本当に美しい。禅僧の物語だけあって仏教用語が多用されているのも、独特な世界観を巧く表現している。物語そのものは人間の生き方や考え方などかなり哲学的だが、嫌味なく読める傑作。主人公はかなり歪んだ感性の持ち主だが、それを“単なるワガママ”と切り捨てられない苦悩があるところも魅力の一つ。“悩める主人公”はこうでなくちゃね。ガンダムのアムロとかエヴァンゲリオンのシンジとか…あんまり知らないけど話に聞いただけでもムカつくようなお子ちゃまが主人公では、こんなに美しい物語は紡げないと思うよ。これを読んだ外国人が京都に行きたくなる気持ちが良く分かる物語。読んで損はない傑作でしょう。
金閣寺 金閣寺
三島 由紀夫 (1960/09)
新潮社
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