HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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西郷札/松本清張
タイトルに惹かれて、実家の書庫から借りてきた作品。松本清張は好きなのだが、学生の頃読んだっきりだから20年振りくらいだ。しかし『壬生義士伝』 以来、幕末に興味を持った私としては、「西郷」なんてキーワードを見逃す訳にはいかないのだ!
 『西郷札』は西南戦争の際に薩軍が発行した軍票の買い上げで一攫千金を目論んだ男が、謀られて破滅していく物語。昭和の現代に新聞社が開催するイベントの資料として「西郷札」が出品され、それを調べてゆくうちに「西郷札」にまつわる上記の物語が明らかになってゆくというミステリ仕立てになっている。いかにも元新聞記者だった松本清張らしいプロットの物語である。
 それ以外の時代小説は、徳川時代の初期のものと幕末から明治維新にかけての時代のもの。維新後に一人の旧幕臣が辿った人生を描く『くるま宿』、江藤新平の末路を描いた『梟示抄」(ぎょうじしょう)』、同年同月同日に生まれた三人の子が維新後にどのような人生を歩んだかを描く『秋々吟』、昔の隠し子を巡る事件を描いた『権妻』、添い遂げる事のできなかった初恋の女性を思い続ける『恋情』が幕末から明治の作品である。明治維新が、当時の幕臣にとって如何に大きな波であったかが窺える物語ばかりだ。
 家康に引き立てられていた本多正純の人生を描く『戦国権謀』、領地替えによって起こった悲劇を描く『酒井の刀傷』、家光に仕えた大老の子孫が辿る人生を描いた『二代の殉死』、恐ろしい容貌を持って生まれた家康の子の人生を描いた『面貌』、あらぬ噂によって人生が狂わされた男の物語『噂始末』、一晩の遊びの残り香が事件を引き起こす『白梅の香』は徳川時代の物語。当時の藩主の目に見えない苦労が分かった気になった。
 全てが史実ではないだろうが、フィクションとのバランスが素晴らしい。泰平の世へ動いてゆく徳川時代の初期と、民主主義の確立へ動いてゆく明治時代という二つの時代。それぞれの社会情勢を人生に絡めた物語の見事な構成力、描写力。現代小説だけではない、松本清張の魅力が堪能できる一冊だ。しかし家康の死因が“鯛の油揚げによる中毒”って…。油で揚げてあるのに中毒?第一、油揚げって唐揚げや天麩羅とは違うのか?鯛の油揚げなる食物が如何なるものなのか、是非一度食してみたいものである。
西郷札 西郷札
松本 清張 (1965/11)
新潮社
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