HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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ローズガーデン/桐野夏生
『顔に降りかかる雨』 と『天使に見捨てられた夜』の主人公である村野ミロと、『水の眠り灰の夢』の主人公でありミロの義父である村野善三が登場する、シリーズの短編集。このシリーズを読んだのは5年も前なので詳しい人間関係を忘れてしまっていたのだが、確かミロの夫はジャカルタで自殺したような気が…。そして夫の話もそれ以降の物語では一切出てこないし、つまりはミロという女性の人生に落とした影の一つでしかなかったはずだ。それが今になって何故?て事は彼の自殺の状況も詳しく紹介されるのか??と思ってつい購入してしまったのだが。いやぁ、なかなかショッキングな作品だった。『顔…』『天使…』で知ったミロとは全然違う人物が、ここにはいたのだ。
 あまりに前2作とのギャップが激しかったのでネットで調べてみたら、ミロシリーズにはもう一作『ダーク』という作品があるらしい。文庫本になっていないので私は未読なのだが。どうやら本作はこの『ダーク』に繋がるミロの世界、らしい。これまでは割とあっさりした探偵小説だったミロシリーズが何故こんなドロドロの愛憎ドラマになっちゃったのか…?作者はミロをどうしたかったのか…?これまでイイ先輩、イイ父親としてミロを助けてきた村善とミロが肉体関係を持っていたという設定には、ショックと同時に嫌悪感を覚えてしまう。村善はミロの母親を心から愛していたのだ。悲しい現実が二人を引き離してしまったけど、血の繋がっていない彼女の娘を引き取ろうと思った村善の男意気が魅力だったはずなのに、何故こんな事に…。ミロの夫の話も中途半端だし。何とも後味の悪い作品である。
  『漂う魂』はミロの住むマンションで起こった幽霊騒動を解決する話。知らない他人同士が同じ建物で住むという現状、そしてそこにはびこる悪意の存在。会社でもマンションでも、他人同士が同じ時間と空間を共有していれば多少の不快感を感じるものだ。それが形となって表現された時の恐怖を描いた物語。普通はやらないよ、と思うけど、悪意を表現する事で自己満足を得る人間はたくさんいる。虚しい話だ。『独りにしないで』は中国人ホステスに入れ込んだ男が殺されてしまった事件を調べる話。恋は相手がいなきゃできない。でもその相手に裏切られていたと感じた時、その気持ちはどうなるのか…。愛憎とはよく出来た言葉である。新宿の夜のあやしい匂いがぷんぷんと伝わってくる秀作。『愛のトンネル』は転落事故に巻き込まれて死んだ女性の身辺を調べるうちに意外な事実が判明してゆく物語。人間の本心なんて言わなきゃ分からない。でも言葉にしてもどうしようもない時もある。それが聞こえてしまう分だけ悲しくなる。そんな愛情の結末をミロがちょっぴり持て余してしまった、消化不良な作品だ。
 短編集としてどうか、と言えばまぁまぁ良かったがミロシリーズとしてどうかと言われれば微妙な評価。『独りにしないで』は新宿らしさがよく出ていて面白かったが、他の作品は犯人の動機もやり方にも美学がなくて虚しさが残る。『ローズガーデン』は探偵小説ではないので、より一層 評価が下がるが…。シリーズ全部を読まなきゃ気が済まない!というファンのみにお薦めな本だな。そして前2作のファンには違和感が残る作品となるだろう。でもここまで読んだのなら、是非とも『ダーク』を読みたいものだ。ミロと村善の関係がここで壮絶なラストを迎える…らしいよ。果たして文庫化されるかどうか、微妙な作品かもしれないけどね。
ローズガーデン ローズガーデン
桐野 夏生 (2003/06)
講談社
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