HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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闇に問いかける男/トマス・H・クック
WOWOWでドラマ化された『心の砕ける音』以来のトマス・H・クック。登場人物それぞれが負う傷と、そこに待ち受ける残酷な結末。そして明らかになる意外な真実。相変わらずのクック節は健在で、読後は何とも言えない切ない気持ちになる。でもそれが“救われない悲しさ”とはちょっと違った、どこか爽やかな印象を残すという不思議な物語である。今回はタイムリミットという設定だったので、登場人物に因縁を絡ませるのは難しいのではないかと思ったが、やってくれましたね~。さすがはクック。外国版:浅田次郎と呼ばせてもらおうかな。
 容疑者として捕まったスモールスは、読んでる側からすればいかにも犯人じゃない感じ。でも刑事達は彼を犯人だと信じ込んでいる。しかし警察署の中には怪しい人物が跋扈していて、真実が歪められるのではないかと読んでて不安を煽られる。しかし真実はそんな所にはなかったのだ。物語とはあまり関係がないのではないかと思われた人物のエピソードが、最後は見事に結末にハマってゆく快感。 これまでの「記憶シリーズ」とはちょっと違った手法だが、最後までハラハラしながら読める傑作だ。
 物語は刻々と過ぎてゆく時間を時計のイラストで表しながら進んでゆく。最初に与えられた時間は11時間だったが、それだけあれば1本の物語が書ける程、人は動けるものなのだなぁと感心したよ。そのスピード感や真実が明らかになってゆく過程の構成は、いかにも映画的。一番最初にピアースとコーエンが若かりし頃の取調室での模様が描かれていて、その後に本編の物語が始まる、という見せ方も映画にしたらキレイだな~って造りだし。映画にしたら『ボーン・コレクター』みたいな、どんでん返し系ミステリとして結構イケるんじゃないかな?
 今回は身近な人間が死んでしまうという悲惨な結末になるが、最後にキラリと光る未来が暗示されているところが良い。そしてその先を敢えて書かない終わり方だからこそ、 どことなく爽涼感を覚えるのだろう。何となく登場人物が多すぎてバタバタな感はあるが、面白かった。自分が過去に出来なかった事を、今になってどのように示したら良いのか?人から信じてもらえないという状況は、どれ程に辛いものか?子供を殺害された親は、人を憎むという感情とどのように向き合ってゆけば良いのか?人間が生きているうちに感じる様々な負の感情を、昇華しようともがく様が切ない。まぁどんでん返しの度合いとか切ない感情とか、過去の作品に比べると中途半端な気はしないでもないが、『アウトリミット』みたいなおバカな作品を読んだ後だと何となく高尚な気持ちになれるね。クック作品の代表として人に薦めるかどうかは微妙な出来だけど。
闇に問いかける男 闇に問いかける男
村松 潔、トマス・H.クック 他 (2003/07)
文芸春秋
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