HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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溺れる魚/戸梶圭太
ここんとこ二度目の『ハンニバル』を読んでいたので、久々の新作。大好きな窪塚洋介クンが出演する映画の原作本だ。窪塚クンの役は“色白で小柄な女装趣味の刑事”の秋吉である。彼とペアを組んで公安刑事の内偵をする白洲刑事の役は椎名桔平。本の序盤を読んだだけで、なんてピッタリな配役なんだろうと思った。特に窪塚クン!彼は小柄じゃないけれど、小顔で耽美な彼だったら秋吉の役はピッタリだ。戸梶圭太という作家は初めてなので、あまり期待せずに読み始めたがかなり面白かった。初めて『ハサミ男』を読んだ時の衝撃に似てる。文体がものすごくスタンダードでしっかりしてて、かなり好みだ。キャラクター設定も練りこんであって、セリフ回しが生き生きとしているのがイイ。ノーチェックだったなぁ、戸梶圭太。これまでの作品も読んでみようかなと言う気になった。かなり気に入ってしまったわ。
 特に終盤に登場する御代田という警視正がメチャクチャ好みでカッコイイのだ。丁寧な物腰でありながら冷徹。スッキリとしたスタイルで、『踊る大捜査線』の筧利夫を思い出すキャラクターだ。彼みたいに上品で物腰は柔らかいんだけどやる事はゴーカイ!っていうキャラクター、好きなんだよね~。優雅で上品な深町という賭博場の借金取り立て屋もかなり好みだ。それに比べて伊勢崎の汚らしさと言ったら!“自称・耽美派”な私の世界には生息しない生き物。全身から悪臭が漂う大男なんてイヤだよぅ。こんなモノが警察官、しかも公安の刑事だとは…。ぶるぶるぶる。
 その他にもちょっとイっちゃった革滅派の活動家とかいかにもなチンピラとか現代アートの芸術家とか、ホントに多彩な登場人物たちが生き生きと描かれている。こういう世界ってホントにあるんだろうなぁと思いこんでしまうようなリアルなストーリーに必要不可欠な人物ばかりだ。ラストは大金を巡っての大捕物。そして最後にニンマリした意外な人物。このあっけないような、その先を想像させるようなオチが殊の外気持ち良かった。いつもだったらこのような漠然としたドタバタした終わり方じゃ納得できない私なのだが、何故か「それもアリ!」って気持ちになっちゃったのが不思議だ。これ以上説明は要りません、っていう位にキャラクターがしっかり描かれていたからかも知れない。が、やっぱり二人の刑事の行方は気になるよねぇ。
 これまで読んだ本では平然と人を撃ったり殺したりするような登場人物が多かったのだが、ここの登場人物は皆、人を撃ってはげーげー吐いて、死体を見ては精神が崩壊しちゃったりする。それが案外普通の反応なのかもね、人間臭くてイイじゃん。しかし終盤はホントに読んでて身体が痛かった。昔映画で見て気持ち悪くなっちゃった「割り箸を鼻の穴に入れて突き上げる」なんてレベルの痛さじゃないんだよね、このバイオレンスさはちょっとツラかったかも。あと匂い。体臭や饐えた部屋の匂い、大量の血の匂いがページからわき上がってくるような描写、これもかなりリアルだ。ところで『溺れる魚』とは、脅迫犯人のコードネームである。脅迫に応じなかった際に犯人が行う破壊工作にちなんで名付けられた、言い得て妙なキーワードだ。このセンスにも脱帽!スピード感あふれるストーリー展開で、一気に読める傑作。日本の現代ミステリを読むならこれ!という位、お薦めしたい一冊である。

溺れる魚 溺れる魚
戸梶 圭太 (2000/12)
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