HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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数奇にして模型―NUMERICAL MODELS/森博嗣
待ちに待った森博嗣の最新文庫。犀川&萌絵シリーズは文庫本で揃えると心に決めているのだ。続きを読みたければいつでも新書が買える…それを敢えて文庫でしか読まないと決めて我慢する…。それがやりたい事三昧の私に課せられた小さなお約束なのである。なので、文庫が出たら嬉しくて一気に読んでしまう。実は集英社文庫のナツイチフェア対象本からとりあえず買った『女たちのジハード』を読んでいたのだが、あまりにつまらないので途中で止めてこっちを読み始めてしまった。その差は歴然、2週間かけても読み終えなかった『女たち…』だが、こちらは700Pの長編を3日間の通勤時間内で読み切った。やっぱ私はブラッディで猟奇で切ない話じゃないとダメだ。嘘つきで見栄っ張りで打算的な女達が奮闘する話なんかより、殺人事件の方がよっぽど美しいわ。
 今回のキーワードは「模型と人形の違い」である。「型と形の違い」とでも言おうか。形に拘ったものは模型にはならない。ミニチュアとモデルは違うのだ。老いたモデラの長谷川が語るこの“模型の哲学”は、かなり印象的だ。その後に犀川が説明する“数字と実体の関係”も興味深い。形は数字に還元できる。コピィできるものは形になる。型は、形をつくった意志までを表現したものなのだ。…何かちょっと分かる気がする。私は一生懸命“型”を作る人たちを知っている。でも私がプラモデルを作る時、そんな人たちの事を考える事はまずない。そこが、“伝達されない意志”なんだろう。オタク文化も理系が語るとこうなる。いや、何事もそうなのかもしれないけれど。
 これは、これまでのシリーズの中でもかなり気に入った作品である。犯人の考え方や行動の美学にこんなに共感できた作品は今までなかった。犀川と萌絵の会話のセンスもズバ抜けている。しかし森作品に出てくる女性というのは、何故いつもああなのだろう。男言葉でがさつ、それを美しくて潔いと思っているような女性たち。セリフも陳腐で薄っぺらい。萌絵の異常なキャラクタばかりが突出しているように思われているが、実は彼女が一番普通の女性に近いだろうと私は思う。ただ子供なだけだ。
 森作品は、時を経るごとに読者フレンドリーになっているような気がする。『幻惑の死と使途』でも書いたが、“殺人の動機に意味はない”というスタンスを貫いていた作者が、読者が納得できるような理由づけをしてくれるようになっている。しかもそれが恨みなどのありきたりな感情ではないところが美しい。そして途中にはさみ込まれる小さな謎も、全て物語の中で解明されるようになった。若きモデラが書き残したメモの謎。それが明らかになった時、何とも切ない気持ちでいっぱいになった。彼が残したもの、それは人形なのか模型なのか?そんな事を最後に考えさせられる、森マジックに今回も完敗であった。
数奇にして模型―NUMERICAL MODELS 数奇にして模型―NUMERICAL MODELS
森 博嗣 (2001/07)
講談社
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