HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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日輪の遺産/浅田次郎
浅田次郎を読んだ人から必ず薦められたのが本作。どんだけ面白いんだ!と期待しながら読んだのだが…うーん、何となく不完全燃焼な出来映え。浅田次郎流・物語の進め方が分かってしまったせいもあるんだろうが、サプライズはあまりなかったなぁ。敢えて言うなら、元日銀マンの行く末くらいだろうか。ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが。
第二次世界大戦中、帝国陸軍がマッカーサーより奪った時価二百兆円の財宝。それは一体どこに隠されているのか…。戦後50年経って、その財宝の在処を示す老人の手帳を手にした二人の男。二人は財宝を手にする事ができるのか?
という物語だが、この二人の男がまた魅力がなくてねぇ…。『シェエラザード』の時もそうだったんだけど、“小心者”なのに“虚勢を張る”性格で、変に世渡りが巧くて、でも大勢には弱いタイプ。あ~好みじゃない!ラストの構成は、何となく『シェエラザード』に似ているかな。みなまで言わないのが美学、みたいな感じ。その美学はとても良く分かるんだけど…「ここまで一生懸命読んだのに結論はそれかよ!」みたいなちょっとした不満が残る。しかも明らかになる事実はかなり重い。後味が悪い作品である事は間違いないだろう。
何かしっくり来ないんだよね、という感じがずっと続くので何でだろう?と思ったのだが、それは地主の男とその妻の性格のせいなんだろうと思う。その正体はすぐに分かると思うが、あんな体験をしていながらその図々しい性格は何??みたいな…。浅田次郎的・賢い女性っていう設定はいつも同じような性格だなぁ。まぁそれが作風ってヤツなんだろうけど。
全員が薦める程いいとは思えなかったが、次が読みたくて夢中になってしまう面白さは充分名作の域だろう。でも切なさよりは虚しさが残る設定。私達の現在の繁栄は、そういうものの上に成り立つのかもしれないと考えさせられる一作。そういう国を思う気持ちっていうのもどんどん失われている昨今、将来の事や過去の悲劇もなーんも考えてない若者に是非とも読んで欲しいと思う作品だ。

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浅田 次郎 (1997/07)
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邪魅の雫/京極夏彦
お待たせしました、京極夏彦の最新作。前作の出来がイマイチだったので多少心配していたのだが…今回は面白いよ!全817ページの大作も一週間で読破。私の大好きなエノさんの恋愛事情も垣間見る事ができて、ファンも納得の一冊だ。
東京の江戸川で起きたサラリーマン殺人事件。その事件現場近くで目撃されていた香具師の男は、殺された男の恋人らしき女の写真を持ち歩いていた。その後、大磯で女子学生の死体が発見される。その被害者と香具師の男が平塚で目撃されている事が分かり、事件は一気に連続殺人事件へと発展する。エノさんの縁談が悉く破談になる理由を探っていた益田、戦時中に特殊な毒薬を研究していた人物と知己であった中禅寺、真犯人の意図に気づき始めていた榎木津。それらが全て一つに繋がった時、待っていたのは悲しい結末だった…という物語だ。
舞台は大磯と平塚。二箇所を移動しながら連続殺人事件が起こるのだが、物語を語る登場人物の一人がかなり愚鈍な人間なので、その言葉をまともに聞いていると段々分からなくなってくる。でも事件の重要人物の正体は、割とすぐに分かるんじゃないかな。それを理解しながら読むと流れも解りやすいだろう。
「邪なことをするとー死ぬよ」というエノさんの名ゼリフが切ない殺人事件。いわないで。その言葉が悲しくて胸につきささる。ちょっと人が死に過ぎな感はあるが、プロットが楽しめる名作だと思う。エノさんの新たな一面も感じられる一作。何度でも読み返したいと思えるシリーズ作は久しぶりだな、是非とももう一度頭からゆっくり読んでみようっと。


邪魅の雫 邪魅の雫
京極 夏彦 (2006/09/27)
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