HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
200510<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>200512
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
蜘蛛の巣のなかへ/トマス・H・クック
わりと“救いようのない不幸”を題材にする事が多いクックだが、前作『闇に問いかける男』は希望が持てる終わり方で面白かった。今回のエンディングはどんな感じなんだろう?そしてそこに辿り着くまでにどんなギミックが隠されているんだろ?今回も胸がきゅんとするような切なさに溢れた作品なのかしら?とワクワクしながら読んだのだが…。うーん、私が読んだ彼の作品の中ではワースト1かな、ハッキリ言って全然面白くなかったです。
  テーマは「父と子の愛」なんだけど、主人公のロイが人間的に幼すぎて全く同感できないのだ。30歳過ぎても父を憎んでいたり昔の恋人との別れを引きずってプチ人間不信に陥っていたり。くだらない事で末期ガンの父と真剣に口喧嘩すんなよ…もうイイ年したオトナなんだから!と突っ込みたくなるシーンが満載。事件の裏に潜んでいる事実を何も知らずに勝手に町を出て友人も恋人も作らずに教師生活を送って、20年ぶりに故郷に戻ってきたと思ったら都会人ぶった振る舞いで父をイライラさせて…。ハァーと溜め息をつきたくなるほどコドモだ。なので最後に父と和解する結末にも、感動はあまりなかった。そんな幼い頃の感情のもつれなんか、とっくに自分で消化しておくもんだろう普通?って感じだよ。
  田舎町の保安官っていうのがどういう立場の人なのか良く分からないんだけど、物語に登場する保安官にはワルモノが多い。で、本作には登場する保安官とその手下は、揃ってワルモノである。しかし何で彼らが野放しになっているのか…。田舎町とはそういうもんなのか??生まれた町から一歩も出ないで人生を終えるという生活や、家族代々同じ場所に住んでいて住民は皆知り合い、みたいな所に住んだ事がないので、この閉鎖的な町が抱える問題っていうのもイマイチ理解できなかった。親子揃って保安官という一家が登場するのを見て「特定郵便局みたい…」と思ったのだが、あながち間違いじゃないのかもね。
 タイトルの「蜘蛛の巣」とは、家族との絆、土地のしがらみなど、ロイの故郷そのものの事である。蜘蛛の糸に絡まってしまったロイは、蜘蛛の巣の中心にいる人物を引きずり出そうとする。しかし巣の中心にいる蜘蛛は老獪なのだ。そう簡単には尻尾を出さない。結局彼は自分の手を汚す事なく面倒な人間を片づけてしまう。彼に操られていた弟の仇を取らなければ…!とロイが決意するまではまだいいが、その解決方法が単純過ぎ。もっと頭使って策略で彼を貶めてくれるのかと思ったら、最後は暴力かよ。一生懸命最後まで読んだのに、この結末には心底ガッカリした。本の帯に「9.11のワールドトレードセンター崩壊以後、クック作品は変わった」と書いてあったが、変わらなくていいですよ先生…。確かに9.11の事件は作風をも変えてしまう程の衝撃だったろうとは思うけれど、『夜の記憶』を読んだ時の感動はどこへやらって感じ。唯一、あんなに情けなくてダメダメだったロイがちょっぴり成長したのだけが救いだったかな。それも前述の通り元が悪すぎるだけなので、感動すべきポイントじゃないとは思うんだけどね…。クックファンも読む必要はないでしょう。感動を期待すると、エラい目に遭いますよ。
蜘蛛の巣のなかへ 蜘蛛の巣のなかへ
トマス・H・クック (2005/09/02)
文藝春秋
この商品の詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

半落ち/横山秀夫
2003年の直木賞候補に挙げられながら、物語のオチに欠陥があると評価されて落選したという曰く付きの作品だ。映画化もされた程の名作でありながら問題になったそのオチとは一体何なのだろう?と興味津々で読んだのだが…。うーむ、確かにそのオチが事実と違うと分かっても、それ以上に何となくスッキリしない読後感。それは彼が二日間を“空白にしなければならなかった”という動機がいまいちピンと来なかったからかな…。まぁ彼のような気持ちになる人もいるでしょう。でもそれって、そんなに隠し通さなきゃいけない事??という気がしてしまうのよねぇ。以下はネタバレになるので、これから本書を読む方は要注意。
 殺害後、彼が歌舞伎町に行った事は確かだった。彼が以前骨髄を提供した患者が歌舞伎町のラーメン屋で働いているのを知っていたので、自決する前にその患者が元気になった姿を一目見たいと思ったのだ。 しかし彼は元気になった患者の姿を見て、骨髄提供者の登録が抹消される51歳の誕生日までに、せめてもう一人に骨髄を提供して命を分け与えたいーーと思うようになった。そして彼は自決を思いとどまって自首し、監獄の中でひたすら骨髄提供者に選ばれるのを待つ事にしたのだった。自分が歌舞伎町に行った事を話せば、骨髄提供者である事がバレてしまう。そのために彼は黙秘を続けるしかなかったのである。…という設定なのだが。
  問題のオチは「受刑者は骨髄提供者になれない」という骨髄バンクの見解があるため、梶が自決を思いとどまる動機に意味がなくなってしまう、という事らしい。この問題はミステリ界全体を巻き込んだ大騒動になったのだが、今は何事もなかったかのようにこうして文庫版も発売されている。まぁ私的には受刑者が提供者になれるかどうかはどっちでも良いや。ただ彼が「51歳の誕生日に自決する」事を匂わせておきながら、51歳までに骨髄提供者になりたいという目的を隠し通した意味がイマイチ分からん。彼が最初からその目的を話しておけば、関係者が何となく口をつぐみながら彼を見守っていかなきゃいけないという面倒な事態は避けられたのに…。まぁそこは物語なので、その黙秘がなければラストの感動はないと分かってはいるんだけどね。話の頭だけ話しておいて「やっぱ続きは話せないな~」と言われ、やっと続きを聞き出したらホントに大した事じゃなかったというガッカリ感というか。「え?そんな話をもったいぶってたの?」みたいな。いやそれでもラストでは思わず涙が滲んでしまった程じーんとする設定だったけどね。
  警察や検察、張り番の新聞記者との関係や裁判官の葛藤など、かなり内情を詳しく描写していて感心した。まぁ作者は新聞記者の経験があるからだろうけど、今までにないリアリティで面白かったなぁ。上記のような“オチの欠陥”なんかどうでも良くなってしまう位、物語に引き込まれてしまったよ。やっぱり梶が目的を言わなかった理由は分からないけど、そこにたどり着くまでの過程は秀逸の物語。特に印象に残ったのは、服役中の梶の様子を熱心に聞く刑事が刑務官に「警察は身内意識が強いですね」と言われた時の言葉だ。「いけませんか。組織の一員を助けるのは当然です。組織のために身を粉にして働いているのに、何かあった時には助けてくれない。そんな組織で働けますか」と彼は言う。組織を嫌ってきた私には目から鱗の名ゼリフだ。ま、それが実際キチンと行われている組織がどれくらいあるのか、は疑問ですけどね…。先が知りたくてどんどん読んで、最後にはホロッとさせられる。物語の構成も巧い。細かいところで気になる事もあるかもしれないが、読んで損はない名作である事に間違いはないでしょう。
半落ち 半落ち
横山 秀夫 (2005/09)
講談社
この商品の詳細を見る

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。