HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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理由/宮部みゆき
ハードカバーで読んで以来、6年ぶりに文庫版を読んだ。最初に読んだ時はあんまり面白くないと思っていたので「なんで直木賞なんか取れたんだろ」なんて書いた事があるが、その頃の私はこの作品の独創的な手法や「家族」について理解できてなかったんだろうなぁ…。第一読むの二回目だっつーのに犯人を忘れてるし!いや、普通に読んでも犯人はある程度予想できるのだが、殺人の「理由」が分からなかったのだ。この物語では、「理由」が非常に重要なキーワードになっている。そして登場人物全てが抱えるそれぞれの「理由」に共感できるかできないか、が評価の分かれる所のような気がする。若い頃の私には、その「理由」の意味が分からなかったんだなぁ…。
 そして二つ目のキーワードは「家族」である。この物語にはたくさんの家族が登場する。そしてその家族はそれぞれに問題を抱えている。借金地獄に陥った家族、進学問題で父親と対立する息子、嫁姑問題が激化する家、10代の未婚の母を抱える家族、父親が失踪して残された姑を養う妻…。しかしそれらは決して“単なる小説の中の出来事”ではないのだ。 いつ自分たちが同じ目に遭うか分からない、非常にリアルな問題に翻弄されてゆく登場人物を見ると、恐ろしさすら感じてしまうのである。
 一言で言えば、「競売物件を巡る殺人事件と、それをとりまく人間模様」ってヤツである。 超高層マンションを買ったがローンが払えず、競売に出した小糸家。そのマンションを競り落とした石田。しかしマンションは砂川一家に占有されていた。そして起こる殺人事件、犯人と疑われた石田は逃亡する。徐々に明らかにやってゆく、砂川家の人々の正体。そして逃亡する石田を発見した片倉家の人々。そして未婚の母となった宝井綾子と事件との関係は?一つの事件を中心に、蜘蛛の巣のように様々な人間が事件に絡め取られてゆくのだ。
 登場人物が多いので覚えるのに大変かと思ったが、全然そんなことはなかった。インタビューに答えるという形で登場人物たちが自分の言葉でしゃべるので、人間性やその人の育ちなどが想像しやすいのだ。独特なドキュメンタリータッチの作風が功を奏している。 その口調がまどろっこしく感じる部分もあるが、この実験的な手法を理解していれば不快ではないだろう。「家族」という血の絆に関わる、いくつもの悲劇が描かれた作品。オトナになった今なら言えるよ、「やっぱこれは直木賞受賞作品にふさわしい作品だったよ!」ってね。
理由 理由
宮部 みゆき (2004/06/29)
新潮社
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百器徒然袋-風/京極夏彦
待ってましたのシリーズ最新作。と言ってもこのシリーズの主人公はエノさんだ。眉目秀麗、腕力最強、おまけに元子爵の家柄という天に二物も三物も与えられた男が大活躍するこのシリーズは、エノさんファンの私にとっては本編よりもオモシロイ筈なのだが。前作よりも歯切れが悪い仕上がりである。京極作品はページが多いので有名だが、本作は無駄なページが多すぎる!なんかいつものノリと違うなぁと思って初出一覧を見てみたら、発表された雑誌がバラバラである。これにはビックリ。『雲外鏡』はe-NOVELSと週刊アスキーの両方に掲載されたらしいが、このシリーズ作品が講談社以外の出版社で発表されるとは思わなかった。おまけに一作目の『五徳猫』が発表されたのは2001年5月で、最後の『面雲鏡』が発表されたのは2004年5月。発表する媒体を変えながら3年もの月日が経っている訳だ。…何となく作者の迷走ぶりが感じられるなぁ…。
  物語は前作と同じく、本島という凡庸な一般人によって語られる。彼が何故、薔薇十字団と呼ばれる榎木津の一味に加わったかという経緯は前作に詳しいが、本作ではその後彼が“自ら望んで”事件に巻き込まれてゆく物語を紹介している。そしてその事件の片棒を担ぐのは、本島の隣の部屋に住んでいる近藤という紙芝居画家。前作ではサブキャラ的存在だった彼が、本作では事件発端の鍵を握る人物へと成長しているのが微笑ましい。『五徳猫』はスランプに陥った近藤に本島が左手を挙げた招き猫を買って行ったのが事件の始まり。福を呼ぶ招き猫は右手を挙げている筈だーという近藤の主張を確認するために豪徳寺に出かけた彼らはそこで「榎木津」という名前を耳にする。それが縁で知り合った女中の奇妙な相談事を解決すべく榎木津の元を訪れた本島は、そこで風俗店が絡んだ異様な事件に巻き込まれる事になるのだった。その事件を“暴力をもって”解決するのは、我らがエノさん。そしてその事件を発端に、『雲外鏡』『面霊気』という事件が起こるのである。
 『雲外鏡』は 本島が拉致されて危うく殺人事件の犯人にされそうになる事件。大阪の霊感探偵・神無月が仕掛けた挑戦に、エノさんはどのように対処するのか?『面霊気』は空き巣に入られた近藤の家から見つかった怪しげな面にまつわる事件。今度の敵はアノ羽田老人、エノさん一味が彼らに仕掛けた罠とは?という、正義と策略が入り乱れた奇怪な事件三編が収録されている。物語は割と単純なのだが、ちょっぴり頭の回転の鈍い本島が絡むと流れが悪くなるのだ。おまけに本島のセリフに余計な言葉が多すぎてテンポが悪い。ちょっと笑いをとろうとしてるのかもしれないけど、逆効果だなぁ…。第一彼って、こんなおしゃべりなキャラだったっけ??
 ハッキリ言って、シリーズもここまで来るともう惰性である。新刊が出たらとりあえず読まなきゃ、と思うけれども既にピークは過ぎていて、あまり心に残らない感じ。エノさんの馬鹿ぶりには拍車がかかっているし、京極堂の意地悪さには磨きがかかってるし木場の下品さにはもう手がつけられないし…。ただ一つだけ、前作と本作を繋げる仕掛けがあって、それは大変気に入った。前作では語り部の名字が最後の一行まで明かされなかったのだが、本作では彼の名前が最後まで明かされないというギミックが用意されているのだ。でもこれを明かしてしまったら、もう次作はないのかな~?エノさんが主人公という趣向はいいが、実は彼が出てくるページは全体の1/3くらいである。いや、もっと少ないかな?もっと彼が活躍してくれるならこのシリーズもアリなんだけども。まぁそれよりも本作でも前作でも紹介されていた「大磯の事件」がなかなか発表されないのが気になる。それが次回作になるのなら、はたまたエノさんが大活躍しそうな雰囲気ではあるのだが。とりあえず過大な期待はせずに、のんびりと新作を待つ事にしますわ。
百器徒然袋 風 百器徒然袋 風
京極 夏彦 (2004/07/06)
講談社
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