HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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シャーロック・ホームズの叡智/コナン・ドイル
私のオトナ買いによるホームズ物語の旅も、いよいよ最後。これまでに発売された 『冒険』、『思い出』、『帰還』、『事件簿』から割愛された作品を収めた最後の短編集である。いやぁ、楽しい一か月だったなぁ。やはり作品は発表順に読むに限る。しかし作品は事件発生と同時に発表された訳ではないので、全ての作品を読破した今となっては事件の年表を作りたい気持ちでいっぱい。確か日本のシャーロキアンの方のホームページに年表が載ってたような気がしたけど、自分でも作ってみようかな~。そうすればホームズ・ワールドの理解がより一層深まる事間違いなしだろう。
 『技師の親指』は有名な作品だ。怪し気な屋敷での作業後、指を切られながらも命からがら逃げ出してきた水力技師が語る恐怖の一夜とは。そしてその屋敷では一体何が行われていたのか?という物語。結構無謀な設定ではあるが、かなりの恐怖感を味わう事ができるだろう。『緑柱石の王冠』は国家の宝を預かった銀行員がうかつにもその宝の一部を盗まれてしまう物語。どーしてこの時代の人たちは重要なものを軽く人に預けるかなぁ…。おかげでこのテの事件でホームズは大活躍ではないか。『ライゲートの大地主』は田舎で療養中のホームズが迫真の演技で窃盗事件の真犯人を見つけだす事件。『ノーウッドの建築士』は知り合いの息子に遺産を譲るという遺書を書いたその日に失踪した老人の意外なトリックを暴く物語。この物語で指紋の重要性が語られているが、それは当時の最先端の捜査方法だったらしい…。微笑ましい話である。
 『三人の学生』は奨学金テストのカンニングをした犯人をホームズが探すという意外な物語。こんな事件まで天下のホームズが扱うなんて!興味ある事件ならば事件の規模を選ばない、ホームズならではの物語と言えるだろう。『スリー・クォーターの失踪』も同じく学校で起こった事件。試合直前に姿を消してしまった花形選手の行方をホームズが探し出す。そこに隠された悲しい物語が、いかにもホームズらしくて良い。『ショスコム荘』は無気味な設定が印象に残る物語。寂れた納骨堂に並べられた古い棺なんて、イギリスならではの設定かもね。『隠居絵具屋』は残酷な結末が待ち受ける、ホームズ物語にしては珍しい設定の物語。事件が片付いた後に悲報がもたらされるという設定の物語はいくつかあるが、このようなトリックと犯人像は珍しい。なかなか新鮮で面白かった。
 訳者は解説の中で度々「アメリカ英語の味を活かして訳す事ができなかった」と書いている。そう言われると原書を読んでみたくなるよね。19世紀の英語って今とずいぶん違うんだろうか?しかしこのホームズシリーズでは本文中によく(訳注)が出てくる。訳者である延原 謙は当時のイギリスを語るには必要だと判断されたのだろう、実に親切で分かりやすい訳文だった。最近の翻訳物では訳注ってあんまり見ないもんなぁ。ちょっぴり新鮮である。この短編集では私の好きな“キラリと光るホームズの嫌味” があまり出てこないのが残念だが、毛色の変わった作品ばかりが集められている印象がある。でも出来れば本国と同じ作品を収録した短編集を出して欲しかったなぁ…。シャーロキアンと話をする時困るじゃない!?そんな機会あるのか?って感じだけど!
シャーロック・ホームズの叡智 シャーロック・ホームズの叡智
延原 謙、コナン・ドイル 他 (1955/09)
新潮社
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シャーロック・ホームズの事件簿
作者が最後に書いた短編集。新潮文庫ではそれぞれの短編集から割愛された作品ばかりを集めた「叡智」が残っているが、本土で発売されたのはこれが最後だ。私のホームズ読破の旅も、いよいよ終盤である。
 『高名な依頼人』は女たらしの悪人に惚れこんでしまった令嬢の目を覚まさせるためにホームズが策を講じる物語。『白面の兵士』は連絡がつかなくなってしまった戦友を捜して欲しいと依頼される物語。子供の頃読んで私は、物語のオチとなる病名を初めて知ったのだった。『マザリンの宝石』は自宅に訪れた犯人から見事に盗まれた宝石を奪い取る物語。「空家の冒険」と同じトリックが使われているのだが、今回は物語に捻りが効いてて面白い。『三破風館』は自宅を家具ごと全て買い取りたいという不思議な依頼に疑問を持った婦人が、ホームズに謎の解明を頼む物語。
 『サセックスの吸血鬼』は子供の血を吸う妻の真実を暴く物語。『三人ガリデブ』はガリデブという変わった名字を持つ男の元に舞い込んだ遺産相続話。「赤毛同盟」や「株式仲買店員」と同じトリックを使いながらも、新たな設定で読ませてくれる。『ソア橋』は橋の上に残った跡から、ホームズが新たなトリックを解明する物語。『這う男』は夜な夜な奇妙な行動をとる男の謎を解明する物語。『ライオンのたてがみ』は隠居生活の地で起こった奇妙な殺人事件を解決する物語。『覆面の下宿人』は自宅に引きこもって生活している女性が抱える心の悩みをホームズが癒してあげる物語。ホームズが探偵というよりセラピストになってて面白い。全体的にやり過ぎな設定が多くて傑作は少ないような気がしたが、ドイルの新たな挑戦があちこちに見られるのが素晴らしい短編集だ。
 これまでの作品はほとんどがワトスンの記述による語り口になっていたが、『白面の兵士』と『ライオンのたてがみ』はホームズ自身が語る形になっている。また『マザリンの宝石』は三人称で書かれているのだ。人気に溺れず、晩年も読者に新しいサービスを提供しようとするドイルの心意気は大したものである。また時代の変化に合わせて通信手段が変わっている点にも注目だ。これまでは電報しか使っていなかったホームズが『三人ガリデブ』では電話を使っているのだ!「最後の挨拶」では車にも乗ってるしね。ホームズは時代とともに生きていたキャラクターなんだなぁと思うと、より親近感がわくというものだ。しかしこの頃の作品は会話の口調がちょっとヘンで笑える。『マザリンの宝石』で犯人と対峙するシーンでは、痛いところをつかれた犯人が「ふんだ」と言う。「ふんだ」って、子供の会話じゃないんだから…。原書では何と書いてあったのか気になるところだ。これまでもよくあったのだが、『三人ガリデブ』ではアメリカ英語とイギリス英語の違いを指摘するシーンがある。面白いのは、アメリカ英語を使う人のことを「アメリカなまりがある」と書いている事だ。やはりイギリスから見ればアメリカは“なまり”なのかねぇ?アメリカ英語がスタンダードになってしまった現代をドイルが見たら、さぞ嘆かわしいと思うのかもしれないね。
シャーロック・ホームズの事件簿 シャーロック・ホームズの事件簿
延原 謙、コナン・ドイル 他 (1953/10)
新潮社
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シャーロック・ホームズ最後の挨拶/コナン・ドイル
60歳になったホームズが最後に扱った『最後の挨拶』を含む短編集。これでホームズ物語も最後なの?と思わせるような題名だが、この後にまだ短編12篇が収録された「事件簿」が発行されるのでひと安心。ただし「事件簿」は全て以前にホームズが扱った事件を発表しているので、『最後の挨拶』はまさにホームズの“最後の事件”である。
 『ウィスタリア荘』は友人の館に招かれたイギリス人紳士が体験する不気味な一夜から壮大な復讐劇が始まる物語。『ボール箱』は「思い出」の1篇として発表したのだが、その残虐性と不倫性から収録を延ばしたと言われる作品。人間の耳には遺伝の兆候がよく現れるというのを知った物語だ。『赤い輪』は不思議な下宿人に悩む女将の相談を解決するのだが、鏡を使ったトリックが印象的な物語。子供の頃に読んだ時の本の挿絵が今でも頭に浮かぶ。『ブルース…設計書』は「海軍条約文書事件」同様、国家機密が盗まれる事件。一見事故死に見える死体を他殺だと見破るホームズの観察力に感心する。
 『瀕死の探偵』はホームズが東洋の伝染病(失礼な!)にかかって瀕死状態に陥る物語。熱に浮かされたホームズが「あんなに繁殖力の強い牡蠣がどうして海底を埋め尽くさないのかが不思議でならない」などと言う様がかわいらしい…。『フランシス…の失踪』は失踪した資産家の娘を意外な所から発見する物語。これを読んだら、棺の形が気になってしょうがなくなるだろう。『悪魔の足』は恐るべき毒物を使ったトリックを暴く物語。現代では無理なトリックだと思うが。『最後の挨拶』は養蜂と読書の隠居生活に入っていたホームズが担ぎ出されて国家の危機を救う事件。最後のオチに使われた本のタイトルがめちゃくちゃお茶目で笑える。どれも秀逸で、外れがない。今までの短編集の中で一番面白かったかもしれないな。
 傑作揃いの短編集だったせいか、子供の頃に読んだ作品が多く収録されていた。前述の通り『赤い輪』と『フランシス…の失踪』のトリックは今でも覚えていた程だ。しかしファンとしてはやはり『最後の挨拶』が一番気になる作品だろう。あのホームズが60歳になってる!でもその行動力と知性には全く衰えがない!その粋な性格も変わっていないし。犯人が「一生かかってもこの仇は必ず返す」と毒づいた時のホームズの台詞が最高なのだ。「おきまりのスイート・ソングだね。そんなものは若い時から聞き飽きている」なんて言えちゃうホームズは、やっぱり好みだなぁ…♪『ボール箱』で紹介されるエピソードからしても、ホームズの才能にウットリする。ワトスンの挙動から彼が何を考えていたかを言い当てるシーンなのだが、これも子供の頃から深く印象に残っていたエピソードだ。これは『ボール箱』が「思い出」から削除された時に違う作品にも引用されたエピソードだと言うから、ドイル本人も気に入っていたのかもしれない。「目で見るのでなく、頭で見なければいけない」とホームズは言う。ホームズ物語を読むたびにそう心がけようと思うが、彼のように出来る訳はないのだ。フィクションだと分かっていても、それがなんか悔しくて。とりあえず身近な旦那でも観察しながら、“ホームズの眼”を学ぼうかしらね…。
シャーロック・ホームズ最後の挨拶 シャーロック・ホームズ最後の挨拶
延原 謙、コナン・ドイル 他 (1955/04)
新潮社
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恐怖の谷/コナン・ドイル
ドイルが最後に書いたホームズ物語の長編。以降は全て短編になる。これも『緋色の研究』『四つの署名』同様、一部を現在の事件、二部を事件の発端となる時代の話をする形をとっている。ホームズの長編で、二部形式をとっていないのは『バスカヴィル家の犬』だけなのだそうだ。しかし本作は第二部がかなり面白い!他の長編の第二部は時代考証や舞台設定がゴタコタしていて飽きてしまう場面もあったのだが、この作品は第二部だけでも独立したミステリになっているのだ。もしかしたら代表作である『バスカヴィル…』よりも面白いかもしれない。
 物語は、モリアティ教授の動向を探っている情報屋から受け取った暗号の手紙を解読するシーンから始まる。これが冒頭からいきなり楽しいのだ。今まではあまり見る事のなかった“調子のいい”ワトスンとのやりとりが絶妙で面白い。数字とアルファベットからなる暗号を即座に“何かの本のページ数を表している”と判断するのがどうもスッキリしないが、暗号についての論文を書いた事のあるホームズが言うのだから、プロから見ればそこまでは初歩中の初歩なのだろう。そう思って読まないと、その後の展開が面白くないからね。
 暗号の解読を終えたところでマクドナルド警部から、暗号通りの人物が惨殺されたというニュースを聞く。ここで舞台はサセックス州へ。館の周りをとりまくお堀、毎晩揚げられる跳ね橋。怪しげな靴跡、微妙に食い違う証言。殺人事件のトリックは途中で分かったのだが、事件の裏にあんな物語が隠されていたとは知らなかったなぁ。子供の頃読んだ時にはあまり印象に残らなかったんだろうか?まさに大どんでん返し、これこそ私の大好きな展開だ。
 本作の裏側を読みとるキーワードは“モリアティ”と“年代”である。第一部が起こった時期は明記されていないのだが、第二部が1875年と書いてあるので第一部は20年後の1895年の出来事だと推測される。しかし解説では“第一部は12年後なので、モリアティに関する情報に齟齬がある”と指摘しているのだ。「最後の事件」は1891年に起こったのだが、その時ワトスンはモリアティ教授の事を知らないと言っている。しかし本作が1887年に起こっているなら1891年の時点でワトスンはモリアティを知っているはずだ、という指摘である。しかし本作の第一部の最後で登場人物は確かに「20年前の話ですが」と言いながら昔の話をするのである。第一部が20年後の1895年ならば齟齬はない筈だ。訳者がどこから12年後という設定を読みとったのかは不明なのだが、気になるなぁ…。今度読む時は、年代の表記に注意してみよう。私の最も不得意とする分野なんだけどね!
恐怖の谷 恐怖の谷
延原 謙、コナン・ドイル 他 (1953/08)
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シャーロック・ホームズの帰還/コナン・ドイル
『シャーロック・ホームズの思い出』の『最後の事件』で滝壺に落ちて行方不明になってしまったホームズが復活した『空家の冒険』を収録した短編集。原書では13作品が収録されていたが、本書からは3篇が割愛されて『叡智』に収録されている。何故この本が13などという縁起の悪い数になっているか、が解説で説明されているのだがこれがなかなか面白い。当時の読者の熱烈ぶりは恐ろしいものがあるが、その気持ちはよーく分かるよ。今読んでも充分面白いもんね。
 『空家の冒険』は復活したホームズが自分の命をつけ狙う悪党を捕まえる話だが、そんな事よりも読者にとっては“なぜ滝壺から助かったのか”という説明の方が大いに気になるところである。これについてはちょっと面白い話があって。大槻ケンヂが『わたくしだから』という本の中で滝壺に落ちる前にホームズが使った技について説明しているというので読んでみた。確かに本書でホームズは「僕は日本のジュウジュツを知っていたので…」と語っているが、何も柔術をカタカナ表記しなくても良いだろう、と私も思っていたのだ。そしたらやはりそこには深い謎が隠されていたのだった!ジュウジュツは原書では「BARITSU」と書いてあるらしい。バリツとは何か?何故カタカナでジュウジュツと訳されているのか?その辺はあまりに長い説明になるので前述の本を参照という事で割愛。興味のある方は面白いので是非読んでみてください。
 『踊る人形』は暗号解読モノとしてあまりに有名な作品。『美しき自転車乗り』は遺産相続騒動に巻き込まれた女性が体験した恐怖の物語。『プライオリ学校』『第二の汚点』は意外な犯人にビックリする物語。『黒ピーター』『アベ農園』は同情されない被害者が登場する物語。『犯人は二人』はこれまでとは逆の立場で世の悪を成敗するのが楽しい物語。『六つのナポレオン』『金縁の鼻眼鏡』は意外なトリックが有名な作品だ。私は『第二の汚点』が一番好きかな、ラストのホームズの台詞が最高にカッコイイのだ。やはり男はスマートでスノッブでストイックでなければね♪
 今までの短編集と比べると多少質の落ちる作品が多いような気もするが、『空家の冒険』はシャーロキアンには欠かせない物語なので必読だ。しかしいづれも「物事を相対的に見て現状を科学的に検証する」というお手本が満載な物語ばかり。こんな風に世の中を見ていたら、不思議な出来事などこの世にはないと思える事だろう。『プライオリ学校』の推理には齟齬があり、それをドイル本人も知っていたと解説には書いてあったが、物事を相対的に見ていればそれも誤差の一つに過ぎないと言える気もする。そんな事が気にならないくらい、ホームズの観察力と解析の速さには驚くばかりでウットリだ。しかし本当にスゴいのは、そんなキャラクターを生み出したドイル本人だよね。ホームズに傾倒すればする程、ドイルの才能に感服している私なのであった。
シャーロック・ホームズの帰還 シャーロック・ホームズの帰還
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