HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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塗仏の宴/京極夏彦
一冊が新書で600Pを超えるボリューム。2冊読まなきゃ物語は解決しないけど、当時下巻にあたる「宴の始末」が発売されたのは「宴の支度」の半年後だった。そりゃあ完璧に内容を理解するのは難しかった事だろう。初めて読んだ時に作成した「人物相関図」が今回も役に立ったなぁ。何しろ登場人物が多くて、仕掛けが複雑で、難解な物語だ。今年の直木賞候補に京極夏彦の名前が上がっていたが、審査員が彼の作品を「最後まで読めなかった」と言っていたのが可笑しかった。いや~ホント、ここまで来ると“彼に対する愛”がなければ読了できないでしょうな。
 「徐福」をキーワードにして、いろいろな人物を巻き込んだ物語がバラバラな場所で進んでいく。占い師、霊感少年、気功道場、漢方薬局、風水経営指南、自己啓発講習、私設研究団体、新興宗教。それらの物語は最後の舞台となる韮山に集結し、終結するのだ。物語の仕掛けは複雑で面白い。でもそれをいろんな意味で理解するのは難しいのではないかと思った。悪意に満ちた所業、後味の悪い結末。催眠、記憶の操作がごく普通に行われる世界で、何が真実なのか読み手にも分からなくなってくる。読んでいる間中、どこか不安な気持ちがつきまとうような本なのだ。まさに“愛がなければ読めない”一冊だろう。
これまで以上に今までの事件の関係者が深く関わってくる物語なので、シリーズを読んでいない人お断りな一冊。しかしイマイチ理解できない部分が多いストーリー性と、大好きなエノさんがほとんど活躍しない設定である事から、私の評価は低い。多分シリーズ中一番低い。この物語は、今後のシリーズをふくらませてゆくために必要なスタート地点のような作品なのだろう。やっぱり犯罪モノには、探偵と対峙する永遠のライバルがいないといけないのが定石だからねぇ。
 「宴の支度」で語られる京極堂のウンチクが、全ての物語に関わってくる壮大なストーリー。しかも今回は『今昔続百鬼 雲』の主人公である多々良やシリーズ初登場の光保も妖怪マニアとして熱弁を振るってくれる。マニア勢ぞろいで、ますます妖怪オタク度に拍車がかかった一冊。物語にとって無駄な会話はないのだろうが、「無駄かも…」と思ってしまう程長くて白熱した妖怪談義に、どこまでついていけるかがポイントとなるだろう。
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テーマ:京極夏彦 - ジャンル:小説・文学

涙/乃南アサ
『凍える牙』以来の乃南アサ。これは何しろタイトルに惹かれて買ってしまった一冊と言って良いだろう。泣けるミステリって好きなのよね、ここのところ猟奇殺人が続いてたから期待しちゃうなぁ。私の泣けるミステリNo.1は『ショーシャンクの空に』、日本人作家だったら『永遠の仔』か『夜光虫』だが、果たしてその座を奪う事ができるような感動作品なんだろうか?
 という期待も虚しく、一度も泣けませんでした…。理由その1「舞台設定が1960年代であること」。当時を知っている人なら懐かしさも辛さも共感できるのだろうが、高度成長期以降に生まれて最先端の犯罪捜査を小説や映画で知ってしまっている私としては、その古さに驚くばかりで感情移入できなかった。DNA鑑定なんて言葉もない時代の事件だから仕方ないが、血液型が一致したくらいで犯人にされちゃたまらんわ。ラストの感動を盛り上げるための時代設定だったような気もするが、その効果もイマイチだ。
 理由その2「オチが途中で分かってしまう」。彼が事件とどのように関わっていたのか、それは捜査が進むと同時に解明されてしまう。最後にちょっぴり“驚きの事実”が隠されているが、それも読むと「え~?」って感じで拍子抜けだ。あれはね…彼が正義感が強くて誠実だっていう現れなんだろうけど、言い換えれば心の弱さを露呈しただけで何の解決にもなってないよねぇ。主人公が感じる違和感がそのまま伝わってしまっただけで、感動には結びつかない。考えてみれば、主人公の性格がかなり勝ち気でプライドの高いお嬢様ってあたりも感情移入できない原因かもしれないな。何週間も彼を捜す旅に出たり、当時はアメリカ占領下だった沖縄に行ったりするのに、お金も時間も制限されないなんてあり得ない!リアリティに欠けると思ったのはそういう設定だったからかもしれないな。
 二年間も探し続けた旅の最後の舞台は宮古島。嵐の中で向かい合う男女、やっと真実に辿りついた感動。その後に待ち受ける運命、それから30年後に知った新しい事実。舞台設定はバッチリなんだけどねぇ、どうして感動できなかったんだろ。それは逃走する彼の環境に違和感があったからかもしれない。旅先でいろいろな人に出会い、いろいろな情報を得て彼を捜し続ける萄子だが、彼の行動とその協力者たちの行動は不可解である。逃げてるんだか協力してるんだか、ハッキリして欲しいなぁ!って感じ。そして迎える淡々としたラストシーン。前作『凍える牙』の感想文に“余韻の残らないラストはちょっと物足りない感じがした”と書いてあったのでちょっと笑っちゃったよ。つまり乃南アサっていうのはそういう作家だって事だ。タイトルに期待して買った方は、肩すかし食らう可能性も。人によっては宮古島のラストで泣けるのかもしれないけど、要するに他人に甘えたおしているお嬢様がワガママ通した結果がああでした、っていう話だと私は思ってしまってね。一つの恋が終わる時は誰だって悲しいやね~。でもやっぱ、婚前交渉がない時代の恋愛感情を理解するのはちょっと難しかったかな。「優しい男」も、「優柔不断」と判断されるとツラいよね。
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