HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
200211<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>200301
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子
「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山弁で「とても、怖い」という意味である。と言うことを、この本で知った。当たり前だが。その名の通り、この本に収められた短編の舞台は全て岡山である。想像通り、筆者の出身は岡山県だそうで。生まれ育った土地の言葉で、こんな印象的な題名がつけられていいなぁ。関東地方出身の私にとっては、ちょっぴりうらやましいぞ。
 表題の「ぼっけえ、きょうてえ」は女郎の一人語りというスタイルで物語が進む。これがとても巧みで、彼女が話しかけている相手の描写が一切ないだけにラストの一言にゾーッとするのだ。言われた相手がどんな顔をしたのかも、分からない。それが余計に怖くてねぇ…。また、彼女も大事なくだりを出し惜しみしながら話す。しかも「こんな話を聞いたら旦那さんホントに寝られんようになるよ」などと何度も繰り返し言いながら、徐々に確信に迫る話をしていくのだ。スタイルとして、とてもよく出来た作品だと思う。最後に明らかになった事実が、本当に怖いかどうかは別として。
 「密告函」は明治時代に岡山の田舎で流行ったコレラ病にまつわる恐怖の物語。これを読むと、本当に怖いのは人間なんだなぁとつくづく思うよ。誰かをないがしろにしたり傷つけたり甘えたり、他人の気持ちを踏みにじって勝手な事ばっかりやってるといつかしっぺ返しがきますよ。それも自分が想像していた以上の形でね…という物語。奥様に迷惑かけて好き勝手やってる世のお父様方、これを読んだらかなり背筋が寒くなるのではないでしょうか?
 漁業の村に嫁いできたユミの人生を描いた「あまぞわい」は、全体的にファンタジー入ってる物語。民俗学や伝説に基づいた造りは面白いが、その世界に入っていくのがちょっとツラかったかな。「依って件の如し」は農業で細々と生計を立てている村で起こった殺人事件にまつわる物語。これは舞台設定が横溝正史チックだっただけに、もう少し物語をわかりやすく描いていれば面白い作品だったのに…という感想。主人公のシズが見る「牛のお化け」というものの正体が実はリアルであったにも関わらず、ラストで種明かしされるまでは幻想の世界の生き物のような扱いで登場するので「あっちの世界のお話」っぽい造りになっているのが残念だ。
 岩井志麻子は初めて読んだ作家だったが、なかなか味わいのある物語でどれも面白かった。京極夏彦が解説を書いているのにも注目だが、その内容は今ひとつ…。まぁ軽くホラーしたい気分の時にぴったりな本なのでは。全体で200ページ位なので、一日でさくっと読める。この四篇の中でもう一度読みたい!と思うのは「密告函」くらいかなぁ…という感じではあるけれども。
ぼっけえ、きょうてえ ぼっけえ、きょうてえ
岩井 志麻子 (2002/07)
角川書店
この商品の詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

監禁/ジェフリー・ディーヴァー
『悪魔の涙』が気に入ったので、彼の初期作品を読んでみる事にした。これはジェフリー・ディーヴァーが高く評価された『静寂の叫び』の前に発表された作品だが、なかなかの良作である。「そんなのアリ?」的な展開も多少あるが、恐ろしく狡猾で知能の高い犯人を相手にどこまで真実に迫れるのか、最後までドキドキしながら楽しんだ。それでもやはり『静寂の叫び』を読んでみないと、彼の真骨頂は味わえないのかもしれないなぁ。
 最後まで犯人が分からないパターンの『悪魔の涙』と違い、こちらは犯人の視点に立った誘拐事件からスタートする。動機は何なのか、両親たちは犯人を見つける事ができるのか。追いつめる側と追われる側の攻防戦はまさにサスペンス!といった造りで面白い。似ている所では『羊たちの沈黙』タイプと言うかコロンボシリーズと言うか。まぁ解決直前の詰めがイマイチ甘くて、最後は肩すかしくらったりもしたのだが。
 邦題は『監禁』だが、原題は『SPEAKING IN TONGUES』。「意味不明=神がかり、神の言葉を話す」といったような意味である。つまりはアーロンの事を指しているのだが、その題名でも分かる通りこの物語の面白さは一歩二歩先を読んで行動するアーロンの知能の高さである。決して「監禁」がキーワードではないので、猟奇モノとか陵辱モノとかを期待して読んではいけない。どうしてこんな邦題にしたのか、意味不明でまさにSPEAKING IN TONGUESであるなぁ。
 何故アーロンはテイトの娘を誘拐したのか。誘拐した後、彼は何をするつもりなのか。テイトとどのような関係があるのか。などの疑問を一気に解決するラストでは、衝撃的な事実が告げられる。そこらへんの造りが、いかにもディーヴァー。そして爽やかな読後感を残すエンディング。『悪魔の涙』同様、かなり映画的な物語の造りである。映像関係の仕事をしてた人かと思ったら、ディーヴァーは元弁護士だそうで。それでなくちゃ、あんな犯人の行動は想像つかないよねぇ~。アーロンの人を煙に巻く話し方なども、前職での経験が生きているのかもしれない。『羊たちの沈黙』などの知能犯と違うところは、ディーヴァーが描く犯人には明確な動機がある事だ。場当たり的な犯罪は存在しない、細部まで緻密に仕組まれた計画の上に成り立っている。多少のトラブルも、フレキシブルかつ頭脳的に処理していく。その辺が私の好きなところ。パズルにも似たサスペンスが堪能できる作品だ。でもまぁ、初めてディーヴァーを読むなら『静寂の叫び』以降のものから選んだ方が良いのでは。本作はディーヴァーの実力を認めた上で読む事をお薦めする。それなら、多少の齟齬も気にならないはずだ。
監禁 監禁
ジェフリー ディーヴァー (2000/09)
早川書房
この商品の詳細を見る

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

ジェラルドのゲーム/スティーヴン・キング
あとがきでは似たような設定に『ミザリー』を挙げていたが、私は『クージョ』に近いかな、と思う。両手をバンザイした格好で手錠に繋がれたまま放置される…。想像しただけで恐ろしい状況だが、そこに次々と新たな敵が現れるのだ。それは実在するものだったり、精神的なものだったり。そして最終的に彼女がとった行動、これがかなり読んでいて辛かったなぁ…。
 あとがきに「彼女はかなり出血する」と書いてあったので覚悟はできていたが、ものすごいスプラッタである。かなりグロテスクな小説もへっちゃらぴーな私だが、このシーンは電車の中で読んでいて力が抜けてしまい、これ以上読んだら貧血起こすかもしれないと思って読むのをやめた程。あまりにリアルな描写のシーンは読み飛ばさせてもらったよ。本を読んでいて気持ちが悪くなってしまったのは二度目かな…。ハッキリ言って、血や痛みに弱い人は絶対に読まない方が良いでしょう。傑作!っていう訳でもないしね…。
 物語は緊張状態におかれたジェシーの思考に過去の出来事を語る様々な“声”が入り込んできて、その“声”とジェシーが語りながら進んでいく。そういう設定から彼女の過去や現状が説明されていくのだが、そこらへんがちょっとイっちゃってて馴染めない人もいるかもしれない。そこがキング・ワールドとリンクする重要なシーンなのだけれども。
 1963年に起こった皆既日食が、この物語の大きなポイントになっている。そこで思い出すのが『ドロレス・クレイボーン』」(映画名「黙秘」)だ。この二作は、主人公が幻想の中で互いの姿を認め合う、という形でリンクしている。物語そのものは独立しているので、どちらから先に読んでもどちらかを読まなくても全く問題ないけれども。しかし本作は設定にいろんな要素を盛り込みすぎてしまい、今ひとつまとまりのない仕上がりである。特にラストのオチとも言える人物、この設定はなくても良かったかもね…。恐怖にはいろいろな形がある、というのを同時に感じる事のできる設定にしているのは理解できるが、ちょっと偶然に過ぎるきらいがあって素直に納得できなかったかな。でも絶対に経験したくないリアルな出来事の方が、現実にはあり得ないクリーチャーが出てくる物語よりもフィクションを感じる。そんな事に改めて気づかせてもらった作品として記憶に残るかも。
ジェラルドのゲーム ジェラルドのゲーム
スティーヴン キング (2002/09)
文藝春秋
この商品の詳細を見る

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。