HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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●悪魔の寵児 ●鬼火/横溝正史
横溝三昧も、今回が最終回。ホントはまだ沢山持ってるハズなんだけど、引越を繰り返しているうちに見つからなかった本もあるのよね。本が見つかったらまた読み始めよう。金田一シリーズの最後は『悪魔の寵児』。戦後の闇取引で財をなした実業家の周りに次々と起こる殺人事件、しかも被害者は全て実業家の愛人だった。しかも物語の序盤で男と心中した女は実業家の妻、しかし数日後には妻の死体が忽然と消えてしまう。妻の昔の夫、実業家の昔の妻、新しい愛人の夫、昔の妻が経営する悪趣味な蝋人形館、怪しげな風体の人形師…。横溝ワールドを構成するファクターは完璧だ。あまり評価されていない作品のような気がするが、私は結構面白かったぞ。『幽霊男』に似たギミックだったりもするけれど。
 『鬼火』は金田一とは全く関係のない短編集。表題の『鬼火』は湖畔に建つ荒廃したアトリエで起こった、従兄弟同士の壮絶な物語。『蔵の中』は、あとがきなどにも引用される事も多い作品。物語の中に物語が入りこむ、現実と創作の境目が曖昧になってゆく狂気の物語だ。『かいやぐら物語』は少し精神を病んだ青年が、月光の下で謎の美女から聞く物語をファンタジックに描いた作品。月と狂気を絡ませた、夢幻的な美しい作品である。
 『貝殻館綺譚』は偶然殺人の現場を目撃してしまった女性が徐々に狂気に捕らわれてゆく話。死者の復活、私の大嫌いな土曜ワイド劇場なみの設定などのデタラメさがちょっとイヤな感じだったかな。『蝋人』は芸妓と美少年騎手の恋愛と、芸妓のパトロンが繰り広げる愛憎劇。様々な障害を乗り越えて愛を成就しようとする、若い二人の行く末が痛々しい物語だ。『面影双紙』もあとがきに引用される事が多い作品。土蔵の一室で友人が語った、家族にまつわる恐ろしい物語。物語の舞台とラストで使われる小物と題名が見事にマッチした傑作である。関西弁と標準語のちゃんぽんで語られる口調が心地よい。
 横溝作品の魅力の一つに、“セリフ回しの美しさ”があると思う。昔のやんわりとした言葉がどことなくエロティックで不気味で、物語を引き立てるのだ。事件解決にあまり関係のないシーンでも、登場人物たちは生き生きとしゃべる。それが嫌味ではなくしつこくなく、丁度良いバランスで読者を引き込んでゆくのだ。後年の作品『白と黒』は団地が舞台となるなど、時代と共に設定が変わっていった横溝作品だが、やはり斜陽族という言葉が使われていたような時代の物語が彼の真骨頂ではないかと思う。誰にもマネできない独自の世界。人間の奥に潜む残忍さや逃れられない宿命に突き動かされる本能、そして愛すべきキャラクターである金田一耕助。それらを創造した横溝正史は、やはり天才である。本人はトリックにかなり悩んだらしいが、小説家たるもの、物語の構成と文体が一番問題な訳で。「これが、生きている彼女を見た最後になった」なんて文章で読者を引き込んでゆく、一種のネタばらしも全く嫌味じゃない。今となっては使い古された表現かもしれないが、彼の物語の中ではそれが素晴らしく効果的なのだ。そんな手段を小賢くなく使えるあたりも、彼の才能であり魅力なのだろう。すっかり横溝作品にハマった数ヶ月。一生の思い出になる期間だったかもしれない。残りの本も、必ず全て読みますよ!
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

●幽霊座 ●幽霊男/横溝正史
『幽霊座』は金田一シリーズの短編集。表題作の他『鴉』『トランプ台上の首』が収録されている。『幽霊座』は歌舞伎のお話。さりげなくエラリィ・クイーンを引用しているが、要するに大がかりなトリックものってヤツだ。複雑な人間関係は相変わらず、短い中にいろいろ詰め込んであるので読み応え充分の短編である。『鴉』は密室もの。密室から姿を消した夫、三年後再び繰り返される悲劇…とネタは面白そうなのだが、トリックや動機などに多少不満が残る。あの短さで横溝ワールドを語るのは、無理があるんじゃないかなぁといった感じだ。
 『トランプ台上の首』は題名通り、首を切り取られた死体を巡る物語。発見されたのが“首のない死体”ではなく“胴体のない死体”という所がミソだ。首だけが発見される、というシーンもショッキングで良い。しかしなぁ…トリックは今ひとつといった感じ。これじゃあ土曜ワイド劇場だよ…。「何故胴体を隠したかったのか?」と一生懸命考えちゃった私がバカみたいじゃん!種明かしまでのストーリーが面白かっただけに肩すかし食らった感じ~。まぁ中にはこういう作品もあるという事で。
 『幽霊男』は、死体を芸術的に演出する男の物語。ヌードクラブに所属するモデルたちが次々と猟奇的に殺されていく。ひとクセもふたクセもあるヌードクラブの会員たち、そして“幽霊男”と名乗る怪しい客。ノーマルではない男達が巻き起こす悪趣味な殺人事件である。そのアブノーマルさが当時は新鮮だったのかもしれないが、トリックや真犯人の正体などは結構強引。特に最初の被害者の弟である浩吉クン、君の行動はかなり突飛で強引だぞ。殺人現場を芸術的に演出するという目的以外には、あまり美しさを感じない物語。吸血癖のあるエキセントリックな画家、美しい謎のマダムなど、横溝ストーリーを構築する登場人物は揃ってるんだけどね。惜しいお話である。
 横溝三昧も終盤に入るとそれなりに駄作もあるものだなぁと思うが、まぁ人気作家ならそれも仕方ないかと思うし。赤川次郎だって、全てが傑作って訳じゃないでしょう、きっと。私は読んだ事ないので分からないけれど。しかし横溝正史は「男装した女性」が好きだなぁ~。当時は新しいギミックだったのかもしれないけど、デタラメさ加減という意味では結構スレスレの線だと思うぞ。しかしそれも戦後のドタバタを表す一つのキーワードなのかもしれない。今ほど全てが自由じゃなかった世界、そんな日本を実際に生きた作者の言葉は、歴史物とは違うリアリティに溢れているのだ。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

闇の楽園/戸梶圭太
『溺れる魚』が気に入ったので、文庫化された著者のデビュー作を読んでみる事に。相変わらずいろんな事をキチンと調べてありますよ、若き社会派作家って感じかなぁ。複雑な人間関係とか二重三重にかけられた策略とか、一歩間違えば単なるドタバタ劇を上手く一つの物語にまとめてある。700ページを超える長編だが、スピーディな展開であっという間に読める傑作だ。
 キーワードは「都心から二時間ほどの田舎にある巨大な敷地」。その土地を巡って、土地の所有者と主人公とカルト教団と産業廃棄物業者と町会議員と町長とその娘とその彼氏と町役場の職員…などなどが大騒動に巻き込まれてゆく物語だ。暴力と狂信、罠とセックスと暴動。そんな状況がスピーディに展開して、人間関係をぐちゃぐちゃにしてゆく。カルト教団の存在が、実に不気味でいいテイストになっている。ホントにあるんだろうなこんな話…と思えてしまうリアルさもイイね。
 あとがきは映画版『溺れる魚』の堤監督。その中でも語られていたが、戸梶作品の魅力は「実在する言葉」である。ブランド品や芸能人、コンビニの名前などが全て実名で出てくる。リアルな単語たちが創作にリアリティを与える、その手法はまるでスティーブン・キングの様ではないか。登場人物の生き生きとしたセリフも、その一つ。いかにも創りました、想像してくださいっていうノンフィクションものとは違う魅力があるのだ。
 物語全体の奥深さは『溺れる魚』には敵わないが、デタラメさ加減は本作の方が好み。ご都合主義的な強引な展開もあるが、まぁそこはご愛敬。「破天荒な犯罪をポップなノリで描く」という紹介がピッタリな作品だ。相変わらずぼやけたラストがイマイチ気に入らないが、そこは今後の作品に期待って所かな。石田衣良と共に、これからが楽しみな作家だ。
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●犬神家の一族 ●夜歩く ●蝶々殺人事件/横溝正史
あまりにも有名な『犬神家の一族』は、丁度読み終わった頃にテレビで石坂浩二版の映画を再放送していたので、そっちも併せて観たりして。島田陽子が美しくてビックリしたなぁ。これは『獄門島』と『悪魔の手鞠唄』を合わせた様なプロット。莫大な遺産を引き継ぐ、というあたりは『女王蜂』にも似ている。ドロドロとした血縁関係と愛憎劇というテイストもお約束、これこそが横溝ワールドの集大成なのかもしれない。あまりにも偶然が重なりすぎる設定なので、私はそんなに好きな作品ではないのだけれど。
 『夜歩く』は、「顔のない死体」モノ。『本陣殺人事件』に収録されている『黒猫亭事件』と同じテーマを扱った作品だ。テーマは同じだが、より濃密な設定になっていて奥が深い。テーマ以外にも、探偵小説のとある手法が使われていてオモシロイ。あまり世に知られていない作品だが、それはやはり設定に問題があったのだろうなぁ…。当時は差別に対して寛容だったのかもしれないが、「せむしのくせに!」はどう考えてもヤバいでしょ。犯人がバレる過程の詰めがイマイチ甘かったかな、という感はあるが私は結構好きな作品である。
 『蝶々殺人事件』は、金田一耕助が登場しない物語。由利先生シリーズの三作が収録されている。物語の記録者である新聞記者の三津木と私立探偵をやっている由利先生のペアが事件を解決してゆくという、ホームズとワトスンのような設定。だが、新聞記者が警察に入り込んで情報もらってくっていうのはどうもリアリティに欠ける。それとも昔はそういう状況もアリだったのだろうか?でも表題にもなっている『蝶々殺人事件』は最後にちょっとしたオチがあってイイ感じだ。今後この二人のペアが活躍する作品はあるのか、期待しながら横溝三昧しようかな。
 血縁と財産ネタはもう尽きたのか、『蝶々…』では濃密な男女関係というテーマが取り上げられている。理性が押さえきれない程、誰かを狂おしく想う心。それがどんなに歪んだ愛情であっても、どこかでそれを受け入れてしまう女性が描かれている。男女の愛情というテーマはいつの時代も変わらずにあるのだけれど、昔の男性の視点から描かれた世界はかなり強引で淫靡だ。愛した女を連れ去って船に三ヶ月も監禁した挙げ句、女の背中一面に蜘蛛の入れ墨を入れてしまう男。実兄から求愛され、殺人を企む女。今となっては変態猟奇事件としか扱われないような設定が、切なく思えてしまうのは時代のせいだろうか?いや、やっぱりそこが横溝ワールドなんだろう。今ほど女性が強くなかった時代に、不条理な愛から必死ですり抜けようとする彼女たちが痛々しかったりもするのだ。今後はそんなに有名じゃない作品が続く横溝三昧。そんな中に、キラリと光るお気に入りの一作が見つかったりすると、より嬉しい気持ちになるよね。
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●悪魔が来りて笛を吹く ●悪魔の手鞠唄 ●獄門島/横溝正史
引き続き、横溝正史三昧。子供の頃に読んだ時はあまり面白くないと思った『悪魔が来たりて…』だが、それは単に登場人物の関係が複雑すぎて理解できなかったせいではないかと思われる。今になって読むと、むちゃくちゃ濃密でオモシロイぞ。濃密と言うか禁断と言うか…。現代ではこのような設定の物語はタブーに近いのかも知れないな、ヘタすると虐待とか言われちゃう世の中だからねぇ。
 次は悪魔繋がりで手鞠唄。これは映画でも見たし本は何度も読んだので犯人も動機も全て分かっていたのだが面白かった~。ちょっと無理めな設定だが、あの世界観なら良し!でも映画と本ではラストがちょっと違っていたのだね、それはすっかり忘れていたよ。本の設定では、あのシーンこそが泣き所なのに!磯川警部の微笑ましいエピソードも、慎ましくてマルだ。
 殺人を犯さなければいけなかった理由、というお話なら『獄門島』である。初めて読んだ時、あの衝撃的なラストにかなりショックを受けた。こんな事があるのか!というような、やり場のない切なさ。殺人現場がいかにも絵画的、というあたりは『手鞠唄』に通じる設定で。暗闇の中、提灯一つで長い階段を昇ってゆく殺人犯、というシーンは思わず鳥肌が立つような恐ろしさだ。
 横溝正史のどこが好きって、犯人が極悪人ではないところだ。殺人には全て意味があって、逃れる事のできない柵というものがある。ただのシリアル・キラーではない。訳分からない理由で殺しているのではない。その動機に絡む、狂おしい程の愛憎劇にぐいぐい引き込まれてゆくのだ。やっぱり、殺人に動機は必要だと私は思う。 そうでなければ、悪とは何かという定義が出来なくなってしまうではないか。殺人に動機はいらない…なんてのは、ストーリー構築に自信のない現代作家の詭弁なのではないかと思ってしまう。そのくらい、濃密で緻密な物語。私の横溝三昧は、まだまだ続くのであった。
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