HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
200205<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>200207
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
樒・榁/殊能将之
講談社ノベルス創刊20周年の「密室本」シリーズの一冊。メフィスト賞受賞作家が密室をテーマにした書き下ろし作品を刊行してゆくというシリーズである。121ページというライトなミステリだ。しかし…薄いだけに内容も薄かったかな?
 物語は過去の事件を追った「樒」と現代の「榁」の二本立てである。「樒」は著者の前作『鏡の中は日曜日』に登場した鮎井の追悼作品として発表されている。この辺の仕組みを語るとネタバレになってしまうのだが、この本を読む前に是非前作を読んでおく事をお薦めする。別に読んでなくても楽しめる作品だが、前作から続いている仕掛けのタネ明かしがあっさりしてるので分かりづらいかもしれない。
 しかし前作ほどのインパクトはなかったな。「榁」のオチのために「樒」があるのだが、密室ネタとしてはちょっと掟破りっぽい。どちらかと言うと「榁」はライトコメディって感じの造りなのだな。ちょっといろんな意味で強引な展開だし。石動の過去についてもいかにも“あとづけ”だもんねぇ。
 これを読んだら『鏡の中は…』を読みたくなる事必至。もちろん私も読みました。それで改めて前作の面白さを味わって、殊能センセの才能を再確認するのだ。この作品で彼を評価してはいけない~!しかし「樒」には水城が扱った「空穂邸事件」の関係者がチラッと登場している。水城が扱った事件については『鏡の中は…』で題名だけ紹介されているので、いづれ全ての事件簿が刊行される事だろう。それを楽しみに待ちましょう。何度も言うけど、この作品で殊能センセを評価してはいけないからだ。
樒・榁 樒・榁
殊能 将之 (2002/06)
講談社
この商品の詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

仄暗い水の底から/貴志祐介
映画化もされた事だし古本屋で安かったし。という訳で買ってみたのだが、それまでこの本が短編集だとは知らなかった。映画化されたのは『浮遊する水』というお話なのだが、これだけでよく映画に出来たなぁと感心。まぁ映画の予告篇で見たような、水道から髪の毛が!なんてシーンは小説にはなかったけれども。
 短編集と言ってもプロローグとエピローグがあり、その物語が『海に沈む森』という短編に繋がっているという、短編が一冊となって一つの世界観を確立している造りになっている。完全なホラー作品もあればどこかファンタスティックなホラーもある。どの作品も楽しく、時には切ない気持ちになって読んだ。なかなかの傑作である。
 私はマンションの屋上で子供のカバンが発見される事から恐怖が始まる『浮遊する水』より、東京湾に浮かぶ第六台場で発見した世界を描いた『孤島』の方が好きだ。『浮遊する水』は映画化する程の作品だったろうか?とも思うが、最も映像にしやすいテーマだったのかもしれない。乗客が忽然と消えてしまった高級クルーズ船で味わった恐怖を描く『漂流船』も、映像化しやすい作品のような気もするが。ちょっとしたギミックに楽しく騙された『ウォーターカラー』や、最後にほろっとくる『海に沈む森』などはかなり好きな作品。しかしマルチ商法にハマった夫婦に連れて行かれる『夢の島クルーズ』と突然消えてしまった妻と暴力夫の一日を描いた『穴ぐら』は、読んでてあまり気分のいい作品ではなかった。先が読める展開で、設定も薄っぺらい。まぁホラーの短編集としては大変面白い一冊だったので、全体的には満足だけど。
 物語には全然関係ないところで私が気になったところが一つ。『浮遊する水』では主人公の娘が拾ったカバンにキティちゃんの絵が描いてあったのでそれを欲しがるのだが、母親はそれを「どんなものでも猫ババはいけない」と諫める。そういう教育方針を、亡くなった主人公の母は「融通が利かないねぇ」と顔をしかめるらしいのだが、拾ったものを横取りするのは犯罪である。それを「融通が利かない」という母の方が全くもって理解できないぞ。それとも世間一般的には拾ったものをもらうのは当たり前なんだろうか?ちょっとしたエピソードの一つなんだろうけど、私はどうもそこが引っかかってしまって気持ちが悪かった。編集者が作者にその記述を指摘した上でそのような設定になったのだとしたら、作者の言い分というものを聞いてみたいものだ。
仄暗い水の底から 仄暗い水の底から
鈴木 光司 (1997/09)
角川書店
この商品の詳細を見る

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

最も危険な場所/スティーヴン・ハンター
新刊コーナーで何となく見つけたハンターの新作。あらすじを見ると、主人公はアール・スワガーだと言うではないか。彼は『極大射程』『ダーティホワイトボーイズ』『ブラックライト』の主人公ボブ・スワガーの父である。ボブ・スワガーのシリーズを読んでいた私としては、これは読まなければいけないでしょう!と一気に読んだのであるが、あとがきを読んだらアール・スワガーのシリーズは既刊の『悪徳の都』の方が先だったらしい。最後まで読んじゃってから分かってもな~。道理でこの本の中でアールの父の話がたまに出てきたはずだよ、『悪徳の都』ではアールの父・チャールズの死の真相が明かされるらしいのでね。
 前述のボブ・シリーズにも登場し、ボブを影ながら支えていた弁護士のサム。彼が調査係、アールが実行部隊という役割分担で物語が進んでいく。そのサムは『ブラックライト』で殺されてしまったのだよね…。そんな事を思うと、何となくしんみり。この物語は、彼がいなければ始まらない。そして彼がいなければ、真実を知る事はできなかったのだ。
 ティーブスという町がどのようにして出来上がったのか。命からがら逃げ出したサムが調査をしてゆく過程の中に、真実が隠されている。いろいろな人物の名前が出てくるが、混乱しないように。ここをキッチリ理解しておかないと、ラストでの“秘密の暴露”のシーンでビックリできないからね。
 しかし…私はアールが取った行動を正当だとは思えない。どんな理由があるにせよ、人間を“狩る”なんて行為は許されないのだ。なのでティーブス壊滅作戦が続く下巻は、かなりヤな感じ。上巻の後半、アールが拷問を受けるシーンもヤな感じだが…。それでもサムが事件の真相を暴いていく過程がめちゃくちゃ面白くて、やっぱりハンターはストーリーテラーだなぁと感心せずにはおれない。銃に関する知識の豊富さも、相変わらず。最後に用意されたサプライズっていう設定も私好みだ。最後にさわやかな(?)ビックリ感を楽しめるように、複雑に絡み合った真実をしっかり捉えながら読みたい一冊だ。ちなみに原題は『PALE HORSE COMING』、「蒼ざめた馬が来る」である。これは物語のキーワードになる言葉。下巻の中盤、涙せずにはおれないかもね。
最も危険な場所〈上〉 最も危険な場所〈上〉
スティーヴン ハンター (2002/05)
扶桑社
この商品の詳細を見る

最も危険な場所〈下〉 最も危険な場所〈下〉
スティーヴン ハンター (2002/05)
扶桑社
この商品の詳細を見る

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。