HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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鏡の中の日曜日/殊能将之
前作『黒い仏』でちょっとガッカリしちゃった殊能センセの最新作。今回も石動が名探偵ぶりを発揮してくれる。すっかり殊能作品のメインキャラとして定着したなぁ、石動。しかし何度読んでも彼の風貌が想像できない。どうしても太った人を想像してしまうのは、一体何故…?
 今回の 事件は私の大好きな「歪な館」が舞台。参考・引用文献の一覧にズラリと綾辻作品が並んでいたので思わずニッコリしちゃったわ。 しかも巻頭に館の図面と外観の絵が掲載されていて、とてもわかりやすかった。歪な館って、想像力が命だからねぇ。私のように記憶力のない女にはありがたいサービスである。
 相変わらず読みやすい文体で、セリフも自然で好みだ。今回もウンチクネタ満載で、殊能センセの知識の深さには毎度感心する。その辺はちょっと京極っぽい。そして途中に詩的なフレーズが挿入されたりするところは、森博嗣っぽい。館殺人事件と言えば、綾辻だ。そりゃ私が好きな訳だよ、京極も森も綾辻も、全作品読破した愛読者だからねぇ。
 そして今回も、ラストで思わぬどんでん返しが待っている。これはデビュー作『ハサミ男』に通じるギミックで、私はこういう仕掛けがとても好きだ。最初っから怪しいぞっていう感覚がビリビリきてて、最後に来る「やっぱり~!」みたいな爽快感がたまらないのだ。しかも今回は二段構えのギミック。最初の仕掛けはすぐ分かったんだけど、もう一つのは分からなかったなぁ…。読了した後すぐに頭から読み返したのは言うまでもない。しかし今回のはちょっと出来すぎな感も。まぁ、ありきたりなシチュエーションと会話って言われればそれまでかも知れないけどね。でも前作の汚名をすすぐ、ナイスな作品だった。287ページなので、二日もあれば読める分量もブレイクにはぴったり。 名探偵殺害という衝撃的な煽りに負けない、爽快感のある一冊である。やっぱりスキ~殊能センセ。 次作も楽しみにしてますわん。
鏡の中は日曜日 鏡の中は日曜日
殊能 将之 (2001/12)
講談社
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

うつくしい子ども/石田衣良
『池袋ウェストゲートパーク』以来、久しぶりの石田作品。テンポが良くて読みやすい文体は変わらず。著者初の長編だそうだが、275ページはかなり軽めの分量だ。素晴らしいあとがきにも書いてあったが、この物語は主人公による一人称と、新聞記者・山崎の動きを著した三人称を交えて書かれている。それがちょっと新しい感じで、違和感のある人もいるかもしれない。でも全編マコトの一人称だった『池袋…』よりは読みやすいのでは。 まぁ作品の出来は今ひとつと言った感であるけれども。
 被害者は9歳の少女。遺体に噛みついた痕がある。そして犯人は近所に住んでいた13歳の少年。とくればピンと来るのが1997年に起こった酒鬼薔薇聖斗事件だろう。 この作品が書かれたのは1999年、あとがきによるとこれは酒鬼薔薇事件を別の観点からとらえようと筆者が意図的に執筆した作品なのだそうだ。それにしてもね…あの結末はどうなんでしょう。もちろんこれはノンフィクションではない。しかしラストがああでは、読者が作者の意図を 読みとるのは難しいと思うよ?単にあの有名な事件をパクって小説書きました、といった感じの仕上がり。もうちょっと真実に近い形で家族の苦しみや主人公の成長を描く事も出来たのでは。
 猟奇的な事件が起こった時、犯人や被害者を追ったドキュメンタリーものが出版される事は多い。好奇心旺盛な人たちがそれを買い求め、ベストセラーになったりする。しかし身近に犯人がいた、という人たちの心境はどんなものか。家族が犯人だった場合、遺されたものはどのような対応をしたら良いのだろう。そして犯人が顔見知りだった場合、犯人やその家族を温かい目で見る事が出来るだろうか? 自分の恋人の弟が殺人犯だったとしても、本当にわだかまりなく彼と結婚する事が出来るのだろうか? 例え犯人が成人であっても、その罪は家族に大きな影を残す。理不尽だと思いながらも、彼らを敬遠してしまう人たちの気持ちも、分からないではないのだ。
 この作品を読んだ後、ネットで酒鬼薔薇事件を調べてみた。 主に当時の新聞記事を読んでいたのだが、中には犯人の顔写真を掲載している 個人サイトもあった。悪趣味である。しかしそれを見たいと思っている人がいるから、そのようなサイトがあるのだろう。事実、私も思わず見てしまった訳だし。犯人の顔が分かったからと言って、どうという事はないのだ。ただのヤジ馬根性である。「殺人の動機を知っても意味がない」という森作品の根本が、何となく分かったような気がした。
うつくしい子ども うつくしい子ども
石田 衣良 (2001/12)
文藝春秋
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ジャッカルの日/フレデリック・フォーサイス
『森博嗣のミステリィ工作室』という本の中に、著者が影響を受けたミステリ作品を100冊紹介するというコーナーがあった。年が近いせいもあるが、私の読書歴とかぶるかぶる。それで懐かしくなって実家の書庫をあさっていた時に見つけたのが本書だ。
 初刷は昭和54年、1979年だから20年以上前の作品である。私が最初に読んだのは大学生の時だった。就職活動の時、面接で「趣味は読書という事ですがどんな作品を読んでいるんですか」と聞かれて「フォーサイスが好きです」と答えたのを覚えている。横溝正史だのシャーロック・ホームズだのアガサ・クリスティだの、純粋な推理小説ばかり読んでいた私にとってこの本は「こんなジャンルの作品があったのか!」という衝撃の一冊だった。それから私はアクションものやスパイものも読むようになっていったのだから、これは私の人生に大きな影響を与えた金字塔的な作品なのである。
 まず追う者と追われる者のスリルがたまらない。フォーサイスの次作『オデッサ・ファイル』も同様の傑作だったが、本書は主人公のカッコ良さが秀逸。大統領の命を狙う殺し屋と言うと妙に暗くて孤独な男を思い浮かべてしまうが、彼は上品な頭脳派である。超一流ホテルで優雅に過ごす楽しみ方を知ってるし、酒場で下手なウンチクたれたりしない。そして地道な泥臭い手法でじわじわと彼を追いつめていくのがルベル警視だ。この対照的な二人の攻防戦に、駆け引きと保身だらけの政治の世界が絡んで物語はドラマティックに進んでいく。そして最後に用意されたサプライズ。今読んでも充分楽しめるミステリである。
 舞台は1960年代のフランス。当時の政治状況を理解していた方が、物語は数倍面白いだろう。あとがきによると、実在の登場人物もたくさんいるようなのだ。恥ずかしながら私は当時のフランス政策など全然覚えてなかったので、ジャッカルが登場するまではちょっとつらかった。第一「なぜドゴールは命を狙われなければいけないのか」が分からない。また他国と陸続きっていう環境は、島国である日本育ちの私にはなかなか理解できない部分もあり。4時間後にウィーンで待ち合わせ、なんて日本じゃ考えられない。イタリアで借りたレンタカーをフランスに持ち込むなんて事もできるんだねぇ。そういう所で育ったら、考え方もかなり違ったんじゃないかと思う。もちろんそれなりの政治的軋轢ってのは日本以上にあるのかもしれないけど。世界を股にかけた暗殺計画、日本人じゃ絶対考えられないプロットに脱帽する事しきりである。
ジャッカルの日 ジャッカルの日
篠原 慎、フレデリック・フォーサイス 他 (2000)
角川書店
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