HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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死の記憶/トマス・H・クック
もう最近はすっかりクック三昧。記憶シリーズを読破すべく挑んだ本作は、原書では『夜の記憶』よりも前に書かれた作品で、記憶シリーズの第一作目である。まぁ何度も言うけど、邦題に「記憶」とついていてもそれぞれの作品には何の関係もないんだけどね。
 確かに前に読んだ『緋色の記憶』や『夜の記憶』よりは今ひとつな作品である。どうせだったら原書の発行順に読みたかったなぁ。この作品は他のに比べて話の練り込みが甘いし、主人公の苦悩に同調するような設定でもないのが残念だ。訳し方がイマイチだったのもイタかった。台詞回しがちょっとおかしくてしっくり来ないんだよな、インタビューで会話が進んでいくというシチュエーションのせいかもしれないけど。やっぱり物語を生き生きとさせるのは登場人物の会話が鍵だと私は思うのだ。会話が生きていないと、感情移入度もかなり下がってしまうのよね。
 スティーヴの回想という形で物語は進んでいくのだが、途中に何度も妻と子を失ってしまった、といった記述が入る。これまでの流れから、どんな陰惨な形で彼が独りぼっちになってしまうのかとても気になっていたのだが、結末はビックリする程あっさりしていた。事件の真相は想像通りだったけど、まさかあんな形で物語が終わってしまうとは…。しかもあれだけじゃあ家族殺人の動機としてはちょっと弱いよね。やっぱり物語全体に漂う淫靡な匂い、あれが動機にも絡んでくるんだろうと思うけれど、それはちょっと深読みかしらん?
 結婚して子供が出来て、妻と子供を守るのが当たり前だと思っている主人公。それを自らの手で壊してしまった彼の父の気持ちは如何なるものだったのか。近づけば近づく程、今の自分の生活が何の刺激もないものに思えてしまう。平和な日常生活に忍び込んでくる悲劇と破滅の匂い。そのきっかけは、大抵が小さな嘘だったりするのだ。嘘が誤解を生んで、二人の気持ちに徐々にヒビが入ってくる。気づいた時には、そのヒビはもう修復できないくらい大きな傷になっている。それが悲劇の始まり。誤解と勘違いって、似てるようで実は性質の違うものだったりするんだから。そして大抵の男性は、そういう事に鈍感で無頓着だったりするんである。そして女性よりも男性の方が未練がましいよな、とこの作品を読んで再確認。執念深いのも、案外男性の方かもね。
死の記憶 死の記憶
トマス・H. クック (1999/03)
文藝春秋
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緋色の記憶/トマス・H・クック
『夜の記憶』以来のクック。どちらにも“記憶”という題名がついているが、シリーズものという訳ではない。ただいづれも記憶に関係のあるストーリーである、という関係だけのようだ。原題を見ても全然繋がりはないようだし。あとがきによると、もともとクックは“過去”“記憶”という要素を追求してきた作家らしい。『夜の記憶』で見せてくれた見事などんでん返しを今回も期待してしまうわ。
 主人公のヘンリーはアメリカの小さな田舎町で学校を営む一家に生まれる。厳格な父と厳しい規則に縛られた生活。ごく普通の、当たり前の一生をその村で過ごすと思っていた彼の前に、美しい女性が教師としてやってきた事から事件は始まる。世界中を旅しながら暮らしてきたという彼女の話に、小さな村しか知らなかった彼らは夢中になる。そして、いつか世界に旅立つ事を夢見るようになるヘンリー。しかしそんな夢を見ていたのは、彼だけではなかった。それが悲劇の始まりになるのである。
 物語の中心にあるチャタム校事件は一体どんな悲惨な事件だったんだろうと、読み進むにつれ気になってくる。村全体を揺るがした大事件である、やっぱり村人全員殺戮!とか超猟奇的殺人事件!などのショッキングな事件を想像してしまう、ちょっと歪んだ感性の私。しかし事件そのものは大した(失礼!)事件ではなかった。恐ろしいのは、その事件の裏に隠されていた真実である。誰が誰に何をしたのか。その引き金は何だったのか。最後の数行で明かされる真相に、老弁護士ヘンリーの悲しさをひしひしと感じる。
 自分が知っている事は、真実ではないかもしれない。所詮他人の気持ちなど完全に理解できる訳がないのだ。それが分かるようになるまで、私は随分時間がかかったものだ。それを幼いヘンリーに求めるのは酷というものだろう。しかし『夜の記憶』に比べれば、そのショッキング度はイマイチだ。幼い頃には分からなかった人の気持ちが、年をとって、その村に暮らし続けたからこそ分かるようになったヘンリー。自分しか知らない真実を、誰にも言わずに墓場まで持っていく事ができるのだろうか。そんな事を考えてしまった。できればそんな秘密を持つような人生は送りたくない。だって私はおしゃべりなんだもん!
緋色の記憶 緋色の記憶
トマス・H. クック (1998/03)
文藝春秋
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人質カノン/宮部みゆき
この文庫本が本棚に入っているのに気づいて、ちょっとビックリした。少し前に、違う本と一緒に買っていたらしい。そのくらい、私にとっては“気にならない本”だったという事だ。宮部みゆきの短編は割と好きだが、外れる確率もかなり高い。何故かというと、彼女は明らかにショタコンだからだ。私は子供が登場する物語ってあんまり好きじゃない。思考回路が違う彼らに感情移入ができないし、理不尽な行動も“子供だから”で片づけられてはミステリは成り立たないと思う。まぁそういう人は、この本は読まない方が良いだろう。
 何しろ短編のほとんどの物語に子供が登場する。子供と言っても小学生から大学生まで様々だが、要するに自立していない人種という事だ。それ故に、彼らは家族に甘えきっている。人生でちょっとイヤな事があると、ふてくされて社会生活を放棄してしまったりする。『過去のない手帳』も『八月の雪』も、そんな彼らがとある事件をきっかけに立ち直っていくという物語。私にしてみれば「そんな甘えたさんが何を言ってやがる!」って感じなんだけど。
 『十年計画』は、途中までは割と面白かった。二人の女性の会話から読みとるシチュエーションを想像するのも楽しかったし。でもその楽しいシチュエーション当ても、裏表紙の解説でネタばらしされてて興ざめだ。表題作も残忍さだけが印象に残って、結局何が言いたかったのかイマイチ分からなかったし。この短編集は、ハッキリ言って“外れ”でしょう。
 日常のささいな出来事が、人の人生観を変えてゆく。同じように過ぎていくように見える毎日だけど、見方を変えれば自分も変わってゆくんだよ。そのような事を言いたかったのだろうが、う~ん、何か辻褄合わせな説教みたいでイヤだなぁ。宮部みゆきは東京の下町生まれ。人情溢れる町で生まれ育った彼女は、都会の我関せず的な人間関係を淋しいと思っているのかもしれない。人は淋しがりな生き物なのだなぁと、彼女の作品を読んでいるとしみじみ思う。人は見栄を張る生き物なんだなぁとも。でもそういうのって、ハッキリ言ってくだらない。と、私は思っちゃうんである。もっと若いうちに読んでいれば、印象も違ったかもね。
人質カノン 人質カノン
宮部 みゆき (2001/09)
文藝春秋
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R.P.G/宮部みゆき
久しぶりの宮部みゆきの長編。『模倣犯』に登場した武上刑事と『クロスファイア』の石津刑事が再会して一緒に事件を解決していく…のだが、私はどっちもまだ読んでいないんだよね~。『模倣犯』は文庫になったらすぐ読もう。『クロスファイア』は超能力系だからと敬遠していたのだが、これを機に読んでみる事にするよ。石津刑事の降格の理由とか知りたいし。
 場所はとある警察署の取調室。ここで行われた取り調べが物語の全てだ。これは場所と時間が限定された、舞台のような設定のミステリなのである。設定は、いいと思う。新しくて面白い。でもね…タイトルからある程度物語が予想できちゃうんだよね。終盤で明かされる犯人も予想通りだ。それでもドキドキしながら物語を楽しめたのは、宮部みゆきの筆力の素晴らしさだろう。嘘にまみれた設定。どれが本当でどれが嘘か、物語に差し込まれているメール文をちゃんと読んで想像しながらもう一度読んでも面白いだろう。
 宮部みゆきの作品は「何もそこまでやらなくても…」という設定が多い。多聞に漏れず、これもその集大成みたいな物語である。描きたい事が先にあって、それの辻褄合わせのために周りを固めていったような設定。まぁ嫌悪感を覚える程ではないけどね。犯人は分かっているけど、そのために何故あんな事をしなきゃいけなかったのかがイマイチ説得力に欠ける。まぁそんな事言っちゃったら、この物語は成り立たないのだけど。
 作者はあとがきで「地の文のなかに真実ではない記述がある」事を謝っているが、私にはそれがどこなのかさっぱり分からなかった。先にあとがきを読んでいたにも関わらず、である。相変わらず集中力の弱いヤツ。ちょっと悔しいので宮部みゆきのファンサイトのBBSに質問してみたけどレスはナシ。ああ気になる!分かった人がいたら是非教えて欲しいわ。気になったのは、「自分を裏切った人間を決して許さない」という登場人物。私に似た性格なので、その気持ちはよく分かる。でもそこまで強く“負の感情”を保ち続けるにはかなりのエネルギーを消費するはずだ。それを他に向けた方が、エネルギー効率はイイよね絶対!
R.P.G. R.P.G.
宮部 みゆき (2001/08)
集英社
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バグ/松岡圭祐
『催眠』や『千里眼』シリーズで有名な松岡圭祐の作品。これは『催眠』の後に書かれた著者の長編第二作目らしい。私の所属するゲーム業界が舞台だったので、思わず手にとってしまった。エンターテイナーの松岡がゲーム業界をどんな風に描いているのか?楽しみ半分、不安半分って感じである。
 そしてその不安は見事的中。て言うか、まず大人気ゲームの名前が「アクセラ」ってのが大笑いだ。それを知って思わずこの本をレジに持っていってしまったと言っても過言ではない。これは3Dタイプのパズルゲームなのだが、シリーズ3作目までで総数三千万本を売り上げたのだそうだ。シリーズって言っても全て同じシステムのパズルゲーム。『テトリス』をモチーフにしているのは間違いないけど、いくら何でも三千万本はふかし過ぎだろう。しかもアクセラマークってのが小中学生に大人気で、文具や飲料などのタイアップ商品を出している会社は200社にも及ぶ…らしい。第一「アクセラ」を動かすハード「プロシード」に契約しているサードパーティの数が46社ってのは少なすぎだ。上記の提携会社の数と逆なんじゃなの?って感じ。てな具合に、ゲーム業界人なら突っ込みまくりの作品なんである。
 物語の方は、小学生の自殺未遂事件から始まって、津久井に対する疑惑、ライバル会社の陰謀、桐生の家庭事情などのトラブルを経て、意外な真犯人が発見されるまでを描いたミステリ。それぞれのピースが全てパチッとはまって終了するが、肝心の自殺未遂の動機だけはイマイチ分からなかった。おまけにねぇ、全国に広がった小中学生の事故の原因っていうのが笑っちゃうのだ。ネタばれになるので詳しくは言えないが、普通分かるって、あんな事したら!著者はお酒飲めない人なのかな?なんて思ってしまいました。
 一般の人はゲーム業界をこんな風に見てるんだなぁ、としみじみ。テレビドラマ『ビューティフルライフ』を見た美容師の友人が「あんな事実際にはあり得ないよ!」と言ったのを思い出してしまった。上記で触れた点以外にも突っ込み所は満載である。リアルとフィクションの狭間ってのは本当に難しいものだ。この本を業界人じゃない人が読んでどう思うのか、是非とも聞きたいものである。違和感なく読めたなら、アナタは業界人じゃありません!と言い切っても良いでしょう。
バグ バグ
松岡 圭祐 (2001/08)
徳間書店
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ルー=ガルー ― 忌避すべき狼/京極夏彦
京極夏彦の新作は文庫化まで待てない。これは“読者からの応募による未来社会の設定を盛り込んだ画期的なインタラクティブ小説”らしいよ。あの京極夏彦がSFを書いたらどうなるのか…期待半分不安半分で、読後の感想としては“微妙”って感じかな。
 SFと言ってもそう未来の話じゃないので、SF嫌いな私でも大丈夫な設定になっている。確かに50年後の世界はこうなってるかも、と思わせるような社会。動物を食べちゃいけない事になってるから食べ物は全て合成食品だし、他人との交流はメールが主流だ。みんな自分専用の端末を持っていて、それを持っている事が“自分が存在する証”になっている。そして近未来では「がんばって」という言葉を他人に言ってはいけないらしいよ。他人との接触(=リアルコンタクト)を異常に嫌うようだし、世の中全てが滅菌されていて有機物を嫌がる傾向のようだ。そんなんでどうやって子供作るんだろ?なんて余計な心配してしまったわ。
 主な登場人物は「いかにも」京極夏彦が好きそうなお人形タイプの女の子である。しかしその子たちは皆、普通に男言葉でしゃべる。それがどうも馴染まなくてねぇ…。コンピュータおたくの女の子の押しつけがましいしゃべり方もイヤだったし、京極作品にしては珍しく話し言葉が不快な作品だった。ストーリーも荒唐無稽な冒険活劇って感じだし、ラストもいまいちしっくりこないし。あまり私好みではなかったかな。
 伏線をてんこ盛りに張りすぎて、結局消化できてない造りの作品。いかにも怪しい人が思った通りの悪人だったりして、意外性もないし。ただ一つだけ気になったフレーズがある。それは「嗅覚には言葉がない」である。考えてみると匂いを表す言葉ってのは実に曖昧である。“苺の匂い”とか言っても、苺を知らない人にはその匂いの感覚は伝わらない。“甘い匂い”とか“酸っぱい匂い”っていうのは味覚から匂いを連想させる言葉であって、匂いそのものを表す言葉ではないのだ。匂いって結構奥が深いのかも。私は匂うモノって何でもあんまり好きじゃないので、いろいろ考えさせられる言葉だった。ま、そんな事に気を取られるくらい、中身はフツーの娯楽小説だったって事で。妖怪シリーズの新作を本当に心待ちにしていますわ、京極先生!
ルー=ガルー ― 忌避すべき狼 ルー=ガルー ― 忌避すべき狼
京極 夏彦 (2001/06/23)
徳間書店
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