HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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夜の記憶/トマス・H・クック
トマスは初めての作家である。“2000年このミステリーがすごい!7位”という帯の煽りに惹かれて買ってみた。全くノーチェックの作家だったのだが、めちゃくちゃ気に入ってしまった。物語の構成が巧い。人物の書き込みが巧い。思わぬどんでん返しにも大満足。血みどろと狂気、それでいてめちゃくちゃ切ない気持ちになる、まさにストライクゾーンな作品だった。何故今まで知らなかったんだろう?ミステリ傑作ランキングに3年連続ベスト10入りの実力派というベテラン作家のようなのに。
 推理小説として一級品でありながら、人間の心の暗い部分、悪意と策略という心理的な側面を見事にフィックスさせた所がスゴい。主人公がミステリ作家という設定も効いている。章の始まりに挿入されている文章は全て主人公ポールの作品からの引用となっている。その文章が深いのだ。彼が幼い頃に経験した事件、彼が封印してしまった記憶と照らし合わせて考えると、彼の苦しみがひしひしと伝わってくる。
 最後のどんでん返しで真実が明かされた時、かなりツラい気持ちになる事だろう。でもラストで新たな目的を見つけた彼らを見ると、ちょっぴり救われる。続編の予感がする終わり方…是非とも読みたいものである。あのままで終わられては何か夢見が悪い。この物語では二つの真実が明かされる。真実を知りたいという好奇心と知りたくなかった真実の存在、そんな事を考えさせられるストーリーだ。
 しかしこの本の“あとがき”は最悪だった。“あとがき”は作品の価値を左右する重要なファクトだ。この作品の“あとがき”は見事に価値を下げているね。延々と作品のあらすじを説明している“あとがき”なんか読者は期待していないと私は思うのだが…。唯一評価できるのは「この作品は気の弱い読者には勧められない」という書評を紹介してくれた事かな。この言葉は、この作品が秘めている深い闇の部分をうまく表現していると思う。それくらい、明かされた真実は重たい。恐怖が人の心をどのように支配するのか。そこに介在するどす黒い悪意を感じた時、対人恐怖症になってしまってもおかしくないようなツラい気持ちになる事でしょう。
夜の記憶 夜の記憶
トマス・H. クック (2000/05)
文藝春秋
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血まみれの月/ジェイムス・エルロイ
『ブラックダリア』以来久しぶりのジェイムズ・エルロイ。『BLOOD ON THE MOON』という原題に惹かれて読んでみた。そしたらメチャクチャ面白かった。やっぱ好きだわ、エルロイ。映画版『LAコンフィデンシャル』はデタラメな作品だったけど、原作は面白かったし。これはロイド・ホプキンス3部作の第一弾らしい。これは全シリーズ読むしかないでしょう!
 エルロイ作品には必ずトラウマを抱えた主人公が登場する。ロイド刑事も幼い頃に大変な経験をしたがために、大きな音や音楽に対して拒絶反応を起こしてしまう。しかしそれがラストシーンでは…というオチは王道。身長2メートル、見た目が良くて女好きな主人公、それでいて頭脳明晰。そんな彼の天賦の才能を見抜き、尊敬し理解しつつ彼を助ける昔のパートナー。そんな設定も王道。でもじわじわと犯人を追いつめていくスリル、犯人の狂気ぶりがめちゃくちゃ高価なスパイスになっているって感じだ。血みどろ、狂気、頭脳明晰、胸キュンな恋愛感情。私がハマるキーワードてんこ盛りな一冊なんである。
 これは犯人が先に分かっていて、それを警察が追いつめていくタイプのストーリー。これまで決して捕まる事はないと安心していた彼が、ロイドの頭脳によって初めて挫折するのだ。その過程に出来過ぎ感やご都合主義っぽい匂いが一切しない、正統派の推理小説。ただ今回のキーワードは「詩」。それだけに作中には何度も詩が登場するのだが、日本語に訳すとどうもね…。多分原文では韻を踏んでいたり、スラングとひっかけてあったりするんだろうが、そういう作者の狙い所が全然つかめなかったのが残念だ。原文も一緒に掲載してくれれば良かったのに。もちろんそれを読み解くほどの英語力は持ち合わせていないんだけども。
 車やオーディオなど、さりげない所でマニアックな小道具が使われていてちょっぴり嬉しい気分になれる作品。『ブラックダリア』事件もちらっと登場する。いろんなロスアンゼルスの顔が見れるのもロス好きな私には嬉しい舞台設定だ。やっぱ頭脳明晰な主人公はいいわ~。女好きにも程があるぞって思うけど。こんな旦那は欲しくないけど。光や音、色などの感覚を楽しめる作品。叙情的なエンディングもマル、である。
血まみれの月 血まみれの月
ジェイムズ エルロイ (1990/07)
扶桑社
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