HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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レッド・ドラゴン/トマス・ハリス
レクター博士三部作の第一作目。ここでのレクター博士は超脇役であるが、その存在感と異様さは健在だ。『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』に登場するクロフォードもグレアムと共に事件の捜査に当たる。しかし訳者が違うとこうも雰囲気が変わるものなのか、と実感。クロフォードのしゃべり方がジジくさいよぅ。「~している」という所を「~しとる」、「~と言っていた」を「~と言っとった」とか言うので、これまで読んだのとキャラクター違う~って感じ。某少女マンガのキャラクターを思い出してしまったわ、まぁこれは分かる人にしか分からない超マニアックな話題だけれども。
 物語は、その後の二作に比べるとかなりファンタジー入った感じ。犯人のダラハイドはウィリアム・ブレイクの絵に魅せられて徐々にコワレてしまうのだが、そこら辺の心情に入り込めないとあっちの世界のお話で片づけられてしまう。そこを彼の身体的なコンプレックス、幼少期の体験などを盛り込んで納得させているのだな。しかしどうも彼の容貌が想像できなくて困った。彼のイメージがボヤけてしまうので、下巻での死闘や盲目の女性との恋愛シーンなどにもイマイチ入り込めない。これは映画版を見た方がわかりやすいのかもしれないなぁ、作品としての完成度は期待できないだろうけど。
 三部作は全てそうなのだが、この物語は捜査側と犯人側のストーリーが同時進行する。捜査側がどうやって犯人に近づいていくのか、いつ犯人の残した小さな痕跡に気づくのかをワクワクしながら読む事ができるのだ。『刑事コロンボ』を見ているような感覚。そういう組み立て方のストーリーはストレスがなくて好きだ。犯人が最後まで分からないタイプの推理小説も好きだけど、読む側に与える情報やエピソードをキッチリ組み立ててくれないと読んでる方はラストで肩すかし食らったりしてイライラするしね。
 ただちょっとお話長かったなって感のある内容。小さなエピソードや伏線がちまちま出てきて捜査を横道に逸らすので、なかなか先に進まないのだ。レクター博士の登場も、そんなエピソードの一つ。「次の満月の夜までに犯人を見つける」という目的があった事など、終いにはすっかり忘れていたよ。もう半年くらい経っちゃったかと思った。ただ犯人に近づくきっかけに気づいてから先は早かった。あっという間の展開で、事件はグズグズと終結に向かっていく。ラスト直前のちょっとしたアクシデントもB級ホラーっぽい。ま、物語のラストなんて得てしてそんなものかもしれないけれど。これを読むと、後の二作の洗練された作風を改めて感じる。作者も成長してるのね、と。作者の原点を見たようで、ちょっと微笑ましい気持ちがした。
レツド・ドラゴン〈上〉 レツド・ドラゴン〈上〉
トマス・ハリス、トマス ハリス 他 (1989/10)
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溺れる魚/戸梶圭太
ここんとこ二度目の『ハンニバル』を読んでいたので、久々の新作。大好きな窪塚洋介クンが出演する映画の原作本だ。窪塚クンの役は“色白で小柄な女装趣味の刑事”の秋吉である。彼とペアを組んで公安刑事の内偵をする白洲刑事の役は椎名桔平。本の序盤を読んだだけで、なんてピッタリな配役なんだろうと思った。特に窪塚クン!彼は小柄じゃないけれど、小顔で耽美な彼だったら秋吉の役はピッタリだ。戸梶圭太という作家は初めてなので、あまり期待せずに読み始めたがかなり面白かった。初めて『ハサミ男』を読んだ時の衝撃に似てる。文体がものすごくスタンダードでしっかりしてて、かなり好みだ。キャラクター設定も練りこんであって、セリフ回しが生き生きとしているのがイイ。ノーチェックだったなぁ、戸梶圭太。これまでの作品も読んでみようかなと言う気になった。かなり気に入ってしまったわ。
 特に終盤に登場する御代田という警視正がメチャクチャ好みでカッコイイのだ。丁寧な物腰でありながら冷徹。スッキリとしたスタイルで、『踊る大捜査線』の筧利夫を思い出すキャラクターだ。彼みたいに上品で物腰は柔らかいんだけどやる事はゴーカイ!っていうキャラクター、好きなんだよね~。優雅で上品な深町という賭博場の借金取り立て屋もかなり好みだ。それに比べて伊勢崎の汚らしさと言ったら!“自称・耽美派”な私の世界には生息しない生き物。全身から悪臭が漂う大男なんてイヤだよぅ。こんなモノが警察官、しかも公安の刑事だとは…。ぶるぶるぶる。
 その他にもちょっとイっちゃった革滅派の活動家とかいかにもなチンピラとか現代アートの芸術家とか、ホントに多彩な登場人物たちが生き生きと描かれている。こういう世界ってホントにあるんだろうなぁと思いこんでしまうようなリアルなストーリーに必要不可欠な人物ばかりだ。ラストは大金を巡っての大捕物。そして最後にニンマリした意外な人物。このあっけないような、その先を想像させるようなオチが殊の外気持ち良かった。いつもだったらこのような漠然としたドタバタした終わり方じゃ納得できない私なのだが、何故か「それもアリ!」って気持ちになっちゃったのが不思議だ。これ以上説明は要りません、っていう位にキャラクターがしっかり描かれていたからかも知れない。が、やっぱり二人の刑事の行方は気になるよねぇ。
 これまで読んだ本では平然と人を撃ったり殺したりするような登場人物が多かったのだが、ここの登場人物は皆、人を撃ってはげーげー吐いて、死体を見ては精神が崩壊しちゃったりする。それが案外普通の反応なのかもね、人間臭くてイイじゃん。しかし終盤はホントに読んでて身体が痛かった。昔映画で見て気持ち悪くなっちゃった「割り箸を鼻の穴に入れて突き上げる」なんてレベルの痛さじゃないんだよね、このバイオレンスさはちょっとツラかったかも。あと匂い。体臭や饐えた部屋の匂い、大量の血の匂いがページからわき上がってくるような描写、これもかなりリアルだ。ところで『溺れる魚』とは、脅迫犯人のコードネームである。脅迫に応じなかった際に犯人が行う破壊工作にちなんで名付けられた、言い得て妙なキーワードだ。このセンスにも脱帽!スピード感あふれるストーリー展開で、一気に読める傑作。日本の現代ミステリを読むならこれ!という位、お薦めしたい一冊である。

溺れる魚 溺れる魚
戸梶 圭太 (2000/12)
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