HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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黒い仏/殊能将之
『美濃牛』でデビューを飾った名探偵・石動戯作の二作目。今作はやけに薄いなぁ、前作は京極並みの分厚さだったのに…。と言う漠然とした不安はあったのだが、その不安は見事に的中。やっちゃったね、殊能さん。こりゃイカンよ。そして講談社も本格ミステリとか謳っちゃイカンよ。前作の知的さや巧みさとは無縁の世界だし、ちっとも本格じゃないじゃん!
 それでも最初は身元不明の死体、怪しい天台宗の僧侶、中国からの秘宝など、それなりに本格ミステリの匂いはしていたのだ。目撃者から得た情報を元に、徐々に被疑者が絞られていくという流れも推理小説っぽくて良かった。ちょっと強引な展開かな、と思いもしたが、それはこの本の薄さだったら仕方ないと納得。全く関係ないと思われていた二つの出来事が一人の人物で繋がってゆく辺りは、それなりにワクワクしながら読んだものだ。
 物語が急転するのは中盤から。世界は急激にあっちの世界へ飛んでいく。その章を読み始めた時は、あまりの変化に思わず「夢オチ?」とか思ってしまった。そりゃないよ、殊能さん。それをやられちゃあアリバイも証拠品も何もあったもんじゃないじゃない。それまでの福岡県警の捜査や石動の調査は一体何だった訳?
 続編が出そうな終わり方をしているけど、この世界はもう結構ですわ。この薄さだし、とりあえずお試しでこんな世界はいかがでしょう?てな扱いであって欲しいと心から願う。これまでの精彩さはどこへ行っちゃったの殊能さん~!まぁ相変わらず色んな事キチンと調べてあるなぁと感心はしたけれど。でもそういう登場人物出すのは禁じ手だと思うなぁ、本格ミステリと謳うのであれば。まあ一言で言えば『殺したハズの女が蘇る。しかし殺されたのは双子の姉だった!』レベルのオチ。じっくり構想を練って、次作の完全復活を願いますわ、殊能さん。わざわざ発売日に買いに行ったファンの私をガッカリさせないでね。 

黒い仏 黒い仏
殊能 将之 (2001/01)
講談社
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ブラック・ライト/スティーヴン・ハンター
『ダーティホワイトボーイズ』に続くシリーズ三作目。感想文には「これをシリーズと呼ぶのはどうかなぁ」と書いたが、実は前作がなければこの『ブラックライト』は成り立たないのだ。この作品はこれまでの二作の集大成って感じ。しかもラストでは意外な事実が判明したりする。いやぁ、何となく上巻で怪しいなぁと思ってはいたのだが、まさかねって感じ。もー!どうして皆すぐ若くて健気な女と関係しちゃうかな。こりゃ作者の趣味だな、きっと。
 これまでのシリーズの中ではさらっと流されていたボブの父親の死だが、この作品で初めてその裏側が明らかにされる。ギャング団のボスによる様々な隠蔽工作を乗り越えて真実に迫っていく彼らだが、遺体を火葬しちゃう日本だったら真実は闇の中だったんだろうなぁ。40年前に土葬された遺体を掘り起こして検屍しちゃうんだもんね、棺桶ってのは案外保存状態良いものなのね、なんて変なところで感心してしまったわ。
 このお話では赤外線暗視スコープがキーワードになっている。それが一番最初に読んだスティーヴン・ハンター作品である『魔弾』にもどことなく通じる所があって面白かった。スコープに映し出される画像が詳細に説明されているので、私も実際にスコープを覗きたい気持ちになってしまったよ。赤外線を使用すると、その熱を感じて蛇が現れるというエピソードもなかなか面白い。そのエピソードが何度も引用されるので、最後はスナイパーが蛇に咬まれてあっさり死亡!なんていうストーリーも考えていたのだが、もちろんそんなクダラナイ設定で終わるお話ではない。林の中で繰り広げられる死闘のラストは、スコープの特性を逆手にとった作戦で痛快だ。そんなの銃を知らない私に思いつく訳ないわ、私にはストーリーテラーの才能はないようである。
 善と悪、家族愛、なんて事を考えさせられるお話。愛憎っていう言葉がある位だからね、憎しみと愛情はまさに裏返しなんだなぁと実感。そしてパイ親子とボブ親子の繋がりを考えてたら、性善説・性悪説なんて言葉を思い出してしまった。また子供の教育とは、なんてテーマも。そんでもって相変わらず主人公にはちょっと頭の回転の悪い従者がつくわけよ、これはもうハンター作品の定番と言ってもいいのかも。前作でバドの長男として紹介されていた頃のラスはもうちょっと頭のいい子だと思っていたのになぁ。お勉強できてもお仕事には全く関係ない、なんて実社会でありがちな設定で笑えるわね。

ブラックライト〈上〉 ブラックライト〈上〉
スティーヴン ハンター (1998/05)
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ダーティホワイトボーイズ/スティーヴン・ハンター
『極大射程』に続くシリーズ二作目。という見解で読み始めたのだが、前作の主人公ボブは全然出てこなかった。物語の途中でボブのお父さんの話がチラッと出てきたので、これで一応“ボブ繋がり”になっているのだろう。でもこれをシリーズと呼ぶのはどうかと思うなぁ、まぁ外伝という扱いという事ならOKでしょう。
 前作とはガラッと違う舞台設定。物語の始まりは刑務所である。しかも主人公は罪悪感というものが欠如したラマーという白人男性。“ダーティホワイトボーイズ”は『どーしようもない白人のワル』ってな意味らしいが、まさにラマーにピッタリ!という言葉である。この人がねぇ…頭は切れるんだけど、下品なのよ。体つきもマッチョだし。つまりは私の好みじゃないって事なんだけど、その他の登場人物がうまくまとめてあるのでイヤがらずに読めた。前作でも思ったけど、この作家はホントに登場人物の設定が上手である。しかもヒーロータイプの主人公には小心者の従者がつく、というのがパターンのようだ。しかしこれが意外と功を奏して物語に味が出るのよ、今回のラストなんて痛快!って感じである。
 ラマーを追い続ける警察官のバドもまた様々な事情を抱えたややこしい人物だ。頭はいいけどひきこもりがちな長男と、ちょっぴり出来は悪いけど野球の腕だけは一流の次男、そして既に愛情を失ってしまった妻との暮らし。そんな家庭環境の彼は、同僚の若い妻との不倫に溺れている。積極的に彼を求める愛人との不倫生活を続けるために、彼は毎日せっせと嘘を重ねる。その様が痛々しくて滑稽でイライラするのよ、不倫するならもうちょっとさっぱりと出来ないもんかなぁ、なんて思う。奥さんには嘘をつくべきだけど、愛人に嘘ついちゃいけないよね。まあそういう不器用なところが、この物語にはピッタリなキャラクターなのかもしれないけれど。
 これまでのスティーヴン・ハンターものと同じく、これも追う者と追われる者との攻防がスリリングで楽しい作品である。あとがきにも書いてあるが、本書はこれまでの軍事アクション物とは趣が異なる作品。それでも相変わらず銃に関しては豊富な知識で、その魅力と存在感が生き生きと描かれている。でもねぇ…何度も言うけど主人公が好みじゃないってのは結構イタイんだよね…。あと訳し方も好みじゃなかったなぁ、スラングをそこまで汚い日本語にしなくてもいいんじゃあ?って感じ。まぁオデールが知的障害者っていう設定だったので、ちょっとファンタジー入っちゃったような言い回しもあるんだろうけどさ。次作の『ブラックライト』はホントにボブが登場するシリーズもの。でもこれが扶桑社だと、また同じ様な訳し方になっちゃうのかも。…新潮文庫から出てくれれば良かったのに…。なんて思ってしまうのは失礼かしら?

ダーティホワイトボーイズ ダーティホワイトボーイズ
スティーヴン ハンター (1997/02)
扶桑社
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