HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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安楽病棟/帚木蓬生
このHPで感想文を書くようになる前から、箒木蓬生は好きな作家だった。ここのところあまり好きなテーマの本がなかったのでご無沙汰だったが、『閉鎖病棟』以来三年ぶりに読んでみる事にした。精神科医として活躍している筆者が描く医療の世界、そこには底知れぬリアリティとドラマティックな結末が待っているのだった。
 最初は様々な老人が自らの人生を語る、というスタイルで始まる。何故彼らが痴呆病棟に入らなければならなかったのか、それはどれもあまりに切ない物語だった。その背景は様々だ。しかしそこには、人間として避けては通れない“老い”の現実がリアルに描かれている。これは読んでいて結構ツラかった。私もいつかはこういう時を迎えるのだ。子供がいない夫婦が年老いていった時、お互いを思いやるという気持ちをどれだけ持てるものなのか。そんな事をしみじみと考えてしまったよ。
 10人以上もの患者を看ている看護婦の視点で語られる病棟での物語は、耳に優しい語り口調でとても読みやすい。登場人物が多くて覚えるのが大変なのだが、患者のプロフィールをさりげなく語る造りになっているので助かった。前述の通り、最初にそれぞれの患者の入所のいきさつが語られているので感情移入しやすい。そんな中、患者が死に直面するシーンではかなりグッとくるものがある。それがまさかあんな実験の結果だったとは…って、それは医師と彼女の会話を読めば想像つく話なんだけどもね。
 『閉鎖病棟』もそうだったのだが、切なくて残酷な物語に花を添えるのが淡い恋心というテイストだ。箒木蓬生はその辺のバランスがめちゃくちゃウマい。あざとくなくしつこくなく、殺人という行為の中にひっそりと恋する気持ちを絡ませてくる。それはまるで桜が散ってゆく様を見ているような、スローモーションの世界なのだ。ここのところバイオレンスな物語ばかりだったので、久々に清涼感のある終わり方で気持ちが和んだ。けれど、この物語が問いかけてくる問題はあまりに重い。人間はいつか必ず年老いていって、身体も思うようには動かなくなって、ついには物事の判断すらできなくなってしまう。それを動屍と呼ぶのは果たして正しいのだろうか。安楽とは一体何なのか。私はこの本を読んで、自分の生き方をしみじみと考えさせられたよ。夫婦が二人で暮らす意味とは何なのか。私は、二人で語り合って感じ合いながら人生を作っていく事ではないかと思う。もし私が植物状態や重度の痴呆になってしまったら、その目的は果たされなくなる。そんな私でも生きていた方がいいと旦那は思うだろうか?やっぱ私は医師の考え方と同じだな。私は「自発的安楽死」の道を選ぶわ。意思表示の書類を入院前に作っておかなければね。
安楽病棟 安楽病棟
帚木 蓬生 (2001/09)
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