HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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マンゴー・レイン/馳星周
馳星周お得意のアジアン・ノワール。舞台はバンコク、題名のマンゴー・レインとは雨季を告げる夕立の事だ。慢性的な交通渋滞とマンゴー・レイン、憂鬱な条件が揃ったこの街で起こった地獄のような数日間を描いた作品である。まぁテイストも設定もいつも通り。オチも予想通り。それでも次から次へと起こるアクシデントとトラブルの連続に、息つく暇もなく先を読みたくなってしまう。そんな作品。まぁ相変わらず人が死に過ぎでちょっと疲れたけどね。
 バンコクの街が舞台なので、巻頭にバンコク中心街の地図が載っていたのは有り難かった。もうちょっと広域の地図もあるとより分かりやすかったんだけど。細かい地名や小さな路地がしょっちゅう出てくるので、バンコクに行った事のある人だったらより面白かったんだろうなと思う。馳先生の手にかかると、どこの都市もノワールに変わる。世界中どこの都市にも裏社会っていうのは存在するんだろうなぁ。そしてやってる事もどこも一緒なんだろうなぁ。普通に生きてたら知る事もない世界、いやぁ~マジで「平凡が一番の幸せ♪」と思わずにはおれないね。「生まれてきた事を呪うような人生を送らせてやる」なんて言葉、一生聞きたくないじゃん!だからこそ小説という虚構の世界で知りたくもない世界を疑似体験するのが楽しいんだけどね。
 目的は一つ。物語は、その手段の描写だ。人間関係をキチンと理解していれば簡単だ。しかし一番面倒だったのがタイ人の名前を覚える事だった…。裏社会と密接に繋がった経済界と軍、そして政界。そんな腐った社会の中をうまく泳ごうとした結果、待っていたのは悲劇だった。馳先生の小説で待ち構えているのはいつも悲劇だ。そこが切なくてイイと思っていたけど、この間読んだ『獣たちの庭園』みたいな後味スッキリなノワール小説の方が好みかもしれないな。探偵小説と違って、やりっ放しな所が痛快で良いね。
 でも二度読みたいか、と言われたら否と答えるしかないかなと思う位の出来。 中国人の女が美しいのはイイとしても、あんまり魅力的な人物像ではなかったのでソゴウが命を賭ける価値が良く分からなかった。頭が良くて冷徹、という設定はアリだけど、何となくズルいだけの女になってしまっているのが残念だ。「博打をやる男とはつき合うな」という言葉を全国の女性に贈りたいと思わずにはおれない物語。まぁ馳先生ファンなら読んでもいいと思うけど、てな感じかな。

マンゴー・レイン マンゴー・レイン
馳 星周 (2005/03)
角川書店
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夜光虫/馳星周
この本がハードカバーで発売された時、仕事絡みで読んだにも関わらずラストで大泣きした。そして馳 星周が大好きになった。『不夜城』も良かったけど、こんなに切ない気持ちになる話ではない。今でも、馳作品のナンバーワンと言ったら『夜光虫』だと私は思う。そのくらいの傑作。だから文庫になった時、速効で買った。その他の馳作品であのバイオレンスさがダメだった人でも、これならOKなのでは。
 うまくいかない人生に自暴自棄になってマフィアと関係を持ち、ひょんな事から殺人を犯してより深みにはまっていく男の物語。主人公はたった一人の女性に執着するが故に、どんどんその身を崩してゆく。そんな設定はいかにもな馳ワールドなんだけど、他の作品と大きく違うのは主人公が執着する女性が堅気だって事だ。親友の妻である女性に一目惚れして、密かに彼女を想い続けた彼が犯してしまった大罪。でもそれは物語のほんの序章に過ぎなかったし、精緻に組まれた計画の中ではほんのひとコマににしか過ぎなかった。その計画の黒幕は誰か?そしてその計画の結末は?読み出したらもう止まらない、止められない。そして最後に待っている、切ないエンディング。このバランスがたまらないのよ、いろんな意味の愛情に捕われた男が狂っていく様をバカだなあと一言ではすませられない執念を感じるのだ。
 人を貶めようとする時の原動力は“悪意”と“憎悪”であるが、主人公の裏切りは、そのどちらにも当てはまらない行為だったのが悲しい。彼は結局、他人に操られる事しか出来なかったのだ。保身のために重ねた罪も、操る側にしてみれば都合のいい出来事でしかなかった。愛する女性とやっと築いた幸せも、相手につけ込まれる餌にしかならなかった。その事に気付いた彼が必死で這い上がって果たした復讐。「しらを切れ、ごまかせ、丸め込め。」そうやっていろんな人を騙してきたのに、結局彼が手に入れたものは何だったんだろう?彼は何のために台湾まで行ったんだろう?なんて事は本人が一番考えてる事だと思うけど、あまりに苦しい物語である。
 台湾っていうのは不思議な国だ。これまでも『不夜城』などで読んで知ってはいたが、その複雑な歴史に翻弄されたお国柄というのはまだよく分からない。老人が日本語を話す国。台湾語と北京語が入り交じった国。キーマンである王東谷は「自分は皇民だ」と言う。天皇陛下を日本国民以上に尊敬している。今、向こうは日本ブームらしいが、その歴史の背景を若者は知っているのだろうか。そんな事を考えてしまう。でもちょっと行ってみたいとも思う。加賀が口にしていた“びんろう”って何なんだろう?食べ物は辛いのかな?『漂流街』なんかよりこっちを映画化した方が異国情緒たっぷりでいいのにな。国が違っても、人を愛する気持ちは同じである。それでいて家族の絆というテーマに直面せずにはいられない話で、泣けてくるよ。
夜光虫 夜光虫
馳 星周 (2001/10)
角川書店
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漂流街/馳星周
何となく買い逃していた馳先生の作品。徳間書店から発行されるってのが何となく違和感だ。しかし物語は相変わらずの馳ワールド。セックス、暴力、嘘、裏切りの連続、ラストも期待通りだ。しかし今回は悪人たちの心をつかむ天使が登場する。それは盲目の少女カーラ。彼女の美しい歌声に、外国人も日本人も皆メロメロになってしまう。これは今までになかったパターンだ。そして今までになかっただけに、これもちょっぴり違和感かな。
 この作品のキーパーソンはカーラとケイだ。カーラは前述の通り、歌を歌う盲目の少女。ケイは、馳ワールドではお馴染みのタイプの悪女。欲望のためには身体を売る事も惜しまない、激しくて強い女性である。そしてマーリオはその二人に執着する。これも馳作品のお約束。報われない想いに切なさが溢れ出る作品である。
 そして相変わらず馳作品の主人公はタフである。裏社会に暗躍するさまざまな団体に追われて傷つけられて脅されて、それでもへこたれずに命を張るのだ。まずはヤクを関西のヤクザに売りさばこうという中国マフィア。その取引現場でマーリオは金とヤクを奪い、中国マフィアから追われる身に。次は店長の借金絡みでマーリオにつきまとう東京のヤクザ。彼らは金とヤクを奪ったのはマーリオだと気づき、カーラをさらって横取りを企む。彼らに対抗するため、マーリオはブラジル人のグループを使ってカーラを救出する作戦を立てるのだ。そこに絡んでくる福建の中国マフィアにペルー人、まさに東京を舞台にした国際紛争って感じ。殺人と嘘を繰り返すマーリオ、よくそこまで頭が回るもんだと感心するわ。やっぱ悪事はバカには出来ないね。
 馳作品を読んでていつも思うのが、「主人公は記憶力がめちゃくちゃイイ」という事である。主人公はどんな場でも、住所や電話番号を一目見ただけで記憶してしまう。そしてそれをいつでも引き出す事ができる。昔の友人の電話番号も然りだ。彼に携帯のメモリなんて必要ないんじゃないの?記憶力がイイ人って、何かカッコ良く見えるものだ。でも頭が良い人が激情型っていうのは困りものである。もちろんそういうタイプが主人公じゃなきゃ、馳ワールドは成り立たないんだけどね。自分の欲望のために人を殺すのも厭わない人種も世の中にはいるのだ。痴漢撃退などの行為もほどほどにしとかないとね。
漂流街 漂流街
馳 星周 (2000/09)
徳間書店
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鎮魂歌-不夜城2/馳星周
数年前にハードカバーで読んだ『不夜城』の続編の文庫本版。登場人物のほとんどは中国人や台湾人なので、名前が中国読みである。それが覚えられなくて苦労した。本を読んでいる時、漢字の読みにひっかかると一瞬頭が止まっちゃうんだよね。また登場人物がめちゃくちゃ多くて、誰が北京の人だか上海の人だか分からなくなっちゃったりもする。何しろマフィア以外にも金貸しやら人戦やら日本のやくざやらを巻き込んでの大騒動である。これは絶対に前作を読んでおく事をお薦めする。
 前作ほどの感動はなかったが、大好きな馳先生の作品だ。スピード感のある文体、細部まで練りこまれた仕掛け、印象的な健一のモノローグ。全てが好みで、あっという間に読んだ。人を信じる気持ち、人を愛する気持ち、人に騙される気持ち、人を裏切る気持ち。裏社会で生きる男達の鮮烈な生き様を堪能できる、切ない物語である。
 抗争の舞台は歌舞伎町。言わずと知れた繁華街、私も年に数回は利用している。滝沢が人戦メンバーと待ち合わせたのは落合下水処理場。高田馬場にあるテニススクールに行くのに使っている裏道は、まさにこの下水処理場の脇を通る。クライマックスでの銃撃戦の舞台は、花園神社。ここは酉の市に何度か遊びに行ったし、前の会社のすぐ近くであった。知ってる場所ばっかりで凄惨な事件が起こるので、臨場感もバツグン。堅気とは言え、歌舞伎町を歩くのはやっぱり怖いよぅ。そして極道の女がどのような目に合うかも、知れば知る程怖ろしい。もちろんこれはノンフィクションだって事は分かってるんだけど。それくらいリアルな描写って事なのよ。
 前作で自分の彼女をその手で殺さなければならなかった健一がどのような図を書いたか。真実が分かった時、その緻密さに思わず鳥肌が立ったくらいだ。そこまで人を駆り立てる感情とは何だろうと考えさせられる。憎悪と愛情、これはホントに背中合わせなんだな、なんて事も。報われない想いや愛する人を守りたいと思う気持ちが殺人へと駆り立てる。そして保身、金への執着がその身を滅ぼしてゆく。他人を呪わば穴二つってヤツね、ウソも方便なんてキレイ事も言ってられないような世界をフィクションでどっぷり楽しめる作品。成功を手に入れた男が相変わらず深い闇の中にいるというモノローグが、何とも切ない読後感だ。
鎮魂歌(レクイエム)―不夜城〈2〉 鎮魂歌(レクイエム)―不夜城〈2〉
馳 星周 (2000/10)
角川書店
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