HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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地球儀のスライス/森博嗣
解説者があとがきでお薦めしたのは『小鳥の恩返し』『石塔の屋根飾り』『僕は秋子に借りがある』だった。私のお薦めは『小鳥の恩返し』『片方のピアス』、強いてもう一つ挙げるなら『河童』かな。二人のお薦めである『小鳥の恩返し』は、ちょっとしたフェイクに驚かされてちょっとしたギミックに騙されて、最後は真実を知って切なくなって。いろんなお楽しみがぎゅっと詰まったお話だ。こういう短編を書けたら、小説家は楽しくてしょうがないだろうと思う。
 次のお薦め『片方のピアス』は、双子のお話。私は双子が大好きなので、興味津々で読んだ。私が中学生の時好きだったのはテニス部の先輩、双子の弟の方だったなぁ…なんて思い出したりして。双子ネタなら誰もが考えつくようなトリックなんだけども、私の“双子好き”が貢献したって感じかな。
 『素敵な日記』は、アイディア勝負の作品。『僕に似た人』はちょっとファンタジー入ってて分かりづらかったので読み飛ばしてしまった。犀川と萌絵が登場する『石塔の屋根飾り』と『マン島の蒸気機関車』は私的にはイマイチだったが、本編で脇役だったアノ人が大活躍する様は小気味よかったかな。 『有限要素魔法』も不思議系のお話だけど、私は結構好き。死というものは結構すぐそばにあるものだよ、なんて事を考えたりした。『河童』は幼い頃の田舎の想い出をツラいと思っている人には向かないだろう。古傷を抉られるような切なさが漂う。『気さくなお人形、19歳』はVシリーズの小鳥遊君が登場するが、私はこのシリーズは嫌いなので。オチも想像通りでひねりがない。ダメである。『僕は秋子に借りがある』も、テレビのショートドラマくらいだったらいいかもしれないが、小説で読むとネタばればれである。女の子のキャラクタも好みじゃない。オチに気づいてないのは主人公だけ?って感じだな。
 そんな感じの短編集。これまでの短編集(『まどろみ消去』『今夜はパラシュート博物館へ』)に比べると、イマイチな仕上がりだ。犀川シリーズを全て読まないと気が済まない!という人にだけお勧めする。でもこのシリーズもいい加減ネタ切れなのかもしれないなぁ…。次回以降の刊行予定は全てVシリーズなので、しばらくは森作品ともお別れかもね。
地球儀のスライス 地球儀のスライス
森 博嗣 (2002/03)
講談社
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有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER/森博嗣
1998年に文庫化された『すべてがFになる』に続く内容となるシリーズ最終作。これを読んだら改めて『すべてが…』を読みたくなる事必至。あれは衝撃的な作品だったなぁ、以前ダ・ヴィンチの特集で「ゲーム化したい小説」の一位になったので読んでみたのだった。それで森作品にハマったのだ。何と言っても私は数字にめちゃくちゃ弱い女。登場人物が全て理系、という私にとってはまさにフィクションの世界にのめりこんでいったのよね。
 このシリーズでは、底辺に犀川と萌絵の恋愛と、犀川の隠された人格というテーマが流れていた。その全てが最終作で全て解決・解明するのか!というのが楽しみだったのだが、そこは何故か曖昧。まぁ二人は『封印再度』で婚約しているので、一応決着を見てるのかもしれないけどね。小学生の恋愛じゃあるまいし、さっさと先に進めば?とか三十路のオバさんはイライラしちゃう訳なんだけども。
 しかし今回の作品は、これまでみたいな美学はあまり感じられない作品だった。ある意味、真賀田博士の存在自体が美学なのかもしれないけど、ああゆう狂人ってあんまり好きじゃないんだよねー。リアリティがないし、愛すべきキャラじゃないし。しかも今回の仕掛けはかなり悪趣味だ。トリックを一生懸命考えている読者(=私)が可哀想じゃないかー!
 塙社長はかなり好みのキャラだったので、これっきりかと思うとちょっと残念。もっと前に出てきて物語をかき回して欲しかったなぁ、まだ読んでいない短編に登場する事を願うわ。この作品が最初に発表されたのは1998年。コンピュータの能力はこの3年で飛躍的に上がっているので作品中に登場するVR技術は今となってはお粗末だが、当時は最先端だったんだろうなぁと思う。かなり長い間VR技術を駆使したシーンが繰り広げられるので、ある程度のCG知識はあった方がイメージしやすいだろう。私はゲーム業界15年だからねー、エンタテイメント系3DCGの知識についてはバッチリでしたけれども。そのような設備や最先端技術の描写や設定に力を注いで、物語がお留守になっちゃったかなって感じの作品。でも『THE PERFECT OUTSIDER』という英題は結構気に入っている。物語の核心をつく題名、しかも『すべてが…』の英題『THE PERFECT INSIDER』と対になっているところもイイ。って言うか、そっから物語作ったのかなって感じだけど。そこら辺は今度発売になる『森 博嗣のミステリィ工作室』で明かされるかもしれないので楽しみにしていよう。この間ダ・ヴィンチでうっかり見ちゃった森先生の素顔を想像しながら読ませていただくわ。でも、やっぱ先生の顔はミステリィであった方が、良かったかなぁ…。
有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER 有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER
森 博嗣 (2001/11)
講談社
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数奇にして模型―NUMERICAL MODELS/森博嗣
待ちに待った森博嗣の最新文庫。犀川&萌絵シリーズは文庫本で揃えると心に決めているのだ。続きを読みたければいつでも新書が買える…それを敢えて文庫でしか読まないと決めて我慢する…。それがやりたい事三昧の私に課せられた小さなお約束なのである。なので、文庫が出たら嬉しくて一気に読んでしまう。実は集英社文庫のナツイチフェア対象本からとりあえず買った『女たちのジハード』を読んでいたのだが、あまりにつまらないので途中で止めてこっちを読み始めてしまった。その差は歴然、2週間かけても読み終えなかった『女たち…』だが、こちらは700Pの長編を3日間の通勤時間内で読み切った。やっぱ私はブラッディで猟奇で切ない話じゃないとダメだ。嘘つきで見栄っ張りで打算的な女達が奮闘する話なんかより、殺人事件の方がよっぽど美しいわ。
 今回のキーワードは「模型と人形の違い」である。「型と形の違い」とでも言おうか。形に拘ったものは模型にはならない。ミニチュアとモデルは違うのだ。老いたモデラの長谷川が語るこの“模型の哲学”は、かなり印象的だ。その後に犀川が説明する“数字と実体の関係”も興味深い。形は数字に還元できる。コピィできるものは形になる。型は、形をつくった意志までを表現したものなのだ。…何かちょっと分かる気がする。私は一生懸命“型”を作る人たちを知っている。でも私がプラモデルを作る時、そんな人たちの事を考える事はまずない。そこが、“伝達されない意志”なんだろう。オタク文化も理系が語るとこうなる。いや、何事もそうなのかもしれないけれど。
 これは、これまでのシリーズの中でもかなり気に入った作品である。犯人の考え方や行動の美学にこんなに共感できた作品は今までなかった。犀川と萌絵の会話のセンスもズバ抜けている。しかし森作品に出てくる女性というのは、何故いつもああなのだろう。男言葉でがさつ、それを美しくて潔いと思っているような女性たち。セリフも陳腐で薄っぺらい。萌絵の異常なキャラクタばかりが突出しているように思われているが、実は彼女が一番普通の女性に近いだろうと私は思う。ただ子供なだけだ。
 森作品は、時を経るごとに読者フレンドリーになっているような気がする。『幻惑の死と使途』でも書いたが、“殺人の動機に意味はない”というスタンスを貫いていた作者が、読者が納得できるような理由づけをしてくれるようになっている。しかもそれが恨みなどのありきたりな感情ではないところが美しい。そして途中にはさみ込まれる小さな謎も、全て物語の中で解明されるようになった。若きモデラが書き残したメモの謎。それが明らかになった時、何とも切ない気持ちでいっぱいになった。彼が残したもの、それは人形なのか模型なのか?そんな事を最後に考えさせられる、森マジックに今回も完敗であった。
数奇にして模型―NUMERICAL MODELS 数奇にして模型―NUMERICAL MODELS
森 博嗣 (2001/07)
講談社
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今はもうない/森博嗣
シリーズ八作目、いよいよ萌絵&犀川ワールドも後半である。本の裏表紙に『シリーズナンバーワンに挙げる声も多い』と書いてあったので、かなり期待して読んだ。そして見事に森マジックにハマった。これは前作『今夜はパラシュート博物館へ』同様、日本語を遊んで楽しんだ作品である。ここのところ翻訳本が続いていたので、久々に日本語の気持ち良さを味わったな~って感じ。翻訳本と日本人作家の本って基本的に違う世界のものだと思っているんだけど、それをしみじみと感じさせられる作家は意外と少ないんだよね。
 しかしそういう本だけに、話の内容を語るとネタばれになってしまう。事件の内容はこうだ。三階建ての豪華な洋館で発見された二人の死体。映写室と娯楽室という隣り合った部屋は、内側からしか鍵がかけられない仕組みになっていた。死体はそれぞれの部屋に一体づつ。完全な密室、しかも彼女たちの首には絞められた痕があったのだった…。という奇怪な事件に挑んだ西之園嬢。電話も通じない嵐の山荘に閉じこめられた9人。この中に犯人はいるのだろうか?
 事件解決までの道のりに交えて、西之園嬢と笹木のラブロマンスも描かれている。この辺りが「森作品は恋愛小説だ」と言われる由縁なのかもね。そしてラストで明かされる意外な事実。まぁ気をつけて読んでいれば、最後のどんでん返しも何となく察知できるかもしれない。私も何か違うぞ、何か怪しいぞという感覚はピリピリきてたんだけど、やっぱりネタ明かしされた時は素直にヤラレタ!って思った。そこが森作品の面白いところなんだよね。
 今はもうない、というタイトルが胸にしみる作品。実は私はこのフレーズが結構好きで、これまでもエッセイなどでたまに使っていたのだ。今はもうない、虚無感と懐かしさを漂わせるような不思議な響きを持つ言葉だ。今はもうないけれど、あの時は確かに身体で感じていた感覚や気持ち。今はもうないと思い返せる程、ずっと心に残っていた思い出。失ってしまったものを思い返す時に使う言葉、それはやっぱりどこか切ないものがあるでしょ。不変のものなんてこの世にはない。だからこそその時その時を大事にしたいと私は思うな。

今はもうない―SWITCH BACK 今はもうない―SWITCH BACK
森 博嗣 (2001/03)
講談社
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