HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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涙/乃南アサ
『凍える牙』以来の乃南アサ。これは何しろタイトルに惹かれて買ってしまった一冊と言って良いだろう。泣けるミステリって好きなのよね、ここのところ猟奇殺人が続いてたから期待しちゃうなぁ。私の泣けるミステリNo.1は『ショーシャンクの空に』、日本人作家だったら『永遠の仔』か『夜光虫』だが、果たしてその座を奪う事ができるような感動作品なんだろうか?
 という期待も虚しく、一度も泣けませんでした…。理由その1「舞台設定が1960年代であること」。当時を知っている人なら懐かしさも辛さも共感できるのだろうが、高度成長期以降に生まれて最先端の犯罪捜査を小説や映画で知ってしまっている私としては、その古さに驚くばかりで感情移入できなかった。DNA鑑定なんて言葉もない時代の事件だから仕方ないが、血液型が一致したくらいで犯人にされちゃたまらんわ。ラストの感動を盛り上げるための時代設定だったような気もするが、その効果もイマイチだ。
 理由その2「オチが途中で分かってしまう」。彼が事件とどのように関わっていたのか、それは捜査が進むと同時に解明されてしまう。最後にちょっぴり“驚きの事実”が隠されているが、それも読むと「え~?」って感じで拍子抜けだ。あれはね…彼が正義感が強くて誠実だっていう現れなんだろうけど、言い換えれば心の弱さを露呈しただけで何の解決にもなってないよねぇ。主人公が感じる違和感がそのまま伝わってしまっただけで、感動には結びつかない。考えてみれば、主人公の性格がかなり勝ち気でプライドの高いお嬢様ってあたりも感情移入できない原因かもしれないな。何週間も彼を捜す旅に出たり、当時はアメリカ占領下だった沖縄に行ったりするのに、お金も時間も制限されないなんてあり得ない!リアリティに欠けると思ったのはそういう設定だったからかもしれないな。
 二年間も探し続けた旅の最後の舞台は宮古島。嵐の中で向かい合う男女、やっと真実に辿りついた感動。その後に待ち受ける運命、それから30年後に知った新しい事実。舞台設定はバッチリなんだけどねぇ、どうして感動できなかったんだろ。それは逃走する彼の環境に違和感があったからかもしれない。旅先でいろいろな人に出会い、いろいろな情報を得て彼を捜し続ける萄子だが、彼の行動とその協力者たちの行動は不可解である。逃げてるんだか協力してるんだか、ハッキリして欲しいなぁ!って感じ。そして迎える淡々としたラストシーン。前作『凍える牙』の感想文に“余韻の残らないラストはちょっと物足りない感じがした”と書いてあったのでちょっと笑っちゃったよ。つまり乃南アサっていうのはそういう作家だって事だ。タイトルに期待して買った方は、肩すかし食らう可能性も。人によっては宮古島のラストで泣けるのかもしれないけど、要するに他人に甘えたおしているお嬢様がワガママ通した結果がああでした、っていう話だと私は思ってしまってね。一つの恋が終わる時は誰だって悲しいやね~。でもやっぱ、婚前交渉がない時代の恋愛感情を理解するのはちょっと難しかったかな。「優しい男」も、「優柔不断」と判断されるとツラいよね。
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