HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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輪違屋糸里/浅田次郎
「壬生義士伝」以来の浅田次郎の新選組もの。しかも主人公が島原の芸妓という異色の設定である。糸里と言えば、新選組ファンなら芹沢鴨の殺害現場に居合わせた芸妓である事は既知の事だろう。殺害現場から逃走した後は行方知れず、という事しか伝わっていないため「実在した人物なのか?」という憶測も飛んだという“幻の登場人物”だった糸里。彼女が主人公となる物語で、新選組がどのように描かれるのか…新選組マニアの私にとっては興味津々のテーマである。
物語は音羽太夫が芹沢鴨によって切り捨てられる事件から始まる。音羽太夫を姉のように慕っていた糸里天神。彼女は新選組の土方歳三に恋しながらも、その想いを伝えられないまま新選組の内部抗争に巻き込まれてゆく。そして粛々と進められてゆく、芹沢鴨暗殺計画。恋か芸の道か。愛する土方のために、彼女はどのような決断を下すのか?芹沢鴨暗殺という闇の事件を、女たちの視点で捉えた異色作である。
「壬生義士伝」で新選組に対する土台がしっかりしている浅田次郎が描く幕末の世界は、まるで現代の出来事のように色鮮やかで生々しい。登場人物の設定はフィクションも多いが、それを感じさせない程に生き生きとした台詞回し。京都と江戸の文化や言葉遣いの違いがエピソードの中でさりげなく説明されていて、それが登場人物の設定に活かされている。同じ京都人でも商人と土着の住人士では文化も違うのだなぁ。そしてやっぱり私は江戸弁の毅然としたストレートな物言いがカッコ良くて好きだ。大好きな歳さんの江戸弁は、言っている様が想像できてしまうくらいにリアルでカッコイイ!菱屋の主の愛人であるお梅は江戸出身。彼女が京都弁の遠回しな嫌味に江戸弁で啖呵を切るシーンは清々しいの一言!そしてそんな彼女は、これまでの新選組ものでは描かれた事のなかった程イイ女として登場している。深紅の薔薇のように凛として美しい彼女。私の中では、主人公の糸里よりも彼女の方に鮮烈な印象が残っている。
とは言え、「壬生義士伝」で受けた衝撃に比べれば大人しい印象の作品。女たちから見た新選組、というテーマは面白いが、新選組マニアにとってはちょっと作りすぎという感がある。歳さんの恋愛についても、アレでは男性としての魅力は半減だし…。「燃えよ剣」のお雪との恋が切なくて美しかったのは、彼女を愛しいと思う気持ちがキチンと行動に出ていたからだ。「燃えよ剣」ではクラクラするほど色っぽくてカッコ良かった歳さん。それが本作では、なーんか煮え切らなくて弱音を吐いたりしちゃって、頭がいいだけで恋愛にはからきし不器用な男って感じでイマイチだった。まぁそこが人間らしくてイイと思う人もいるのでしょうが…。彼の存在は、糸里という女を魅力的に見せるための小道具に過ぎないのだなという印象。そして糸里の存在が後の土方に多大な影響を与えたのだ、という設定もしかり。果たしてその効果が充分にあったのか?については、私個人としては甚だ疑問だが。
まぁコアな新選組マニアが読むとちょっとガッカリする所もあるかもしれないが、知り尽くしたと思っていた隊士たちの新たな一面がかいま見れる作品でもある。芸妓という職業や京文化の華やかさについて興味がある人なら興味深く読めるのではないだろうか。

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日輪の遺産/浅田次郎
浅田次郎を読んだ人から必ず薦められたのが本作。どんだけ面白いんだ!と期待しながら読んだのだが…うーん、何となく不完全燃焼な出来映え。浅田次郎流・物語の進め方が分かってしまったせいもあるんだろうが、サプライズはあまりなかったなぁ。敢えて言うなら、元日銀マンの行く末くらいだろうか。ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが。
第二次世界大戦中、帝国陸軍がマッカーサーより奪った時価二百兆円の財宝。それは一体どこに隠されているのか…。戦後50年経って、その財宝の在処を示す老人の手帳を手にした二人の男。二人は財宝を手にする事ができるのか?
という物語だが、この二人の男がまた魅力がなくてねぇ…。『シェエラザード』の時もそうだったんだけど、“小心者”なのに“虚勢を張る”性格で、変に世渡りが巧くて、でも大勢には弱いタイプ。あ~好みじゃない!ラストの構成は、何となく『シェエラザード』に似ているかな。みなまで言わないのが美学、みたいな感じ。その美学はとても良く分かるんだけど…「ここまで一生懸命読んだのに結論はそれかよ!」みたいなちょっとした不満が残る。しかも明らかになる事実はかなり重い。後味が悪い作品である事は間違いないだろう。
何かしっくり来ないんだよね、という感じがずっと続くので何でだろう?と思ったのだが、それは地主の男とその妻の性格のせいなんだろうと思う。その正体はすぐに分かると思うが、あんな体験をしていながらその図々しい性格は何??みたいな…。浅田次郎的・賢い女性っていう設定はいつも同じような性格だなぁ。まぁそれが作風ってヤツなんだろうけど。
全員が薦める程いいとは思えなかったが、次が読みたくて夢中になってしまう面白さは充分名作の域だろう。でも切なさよりは虚しさが残る設定。私達の現在の繁栄は、そういうものの上に成り立つのかもしれないと考えさせられる一作。そういう国を思う気持ちっていうのもどんどん失われている昨今、将来の事や過去の悲劇もなーんも考えてない若者に是非とも読んで欲しいと思う作品だ。

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地下鉄(メトロ)に乗って/浅田次郎
最近『シェエラザード』を読み返していたので、他の浅田作品も読みたくなって探した本。あらすじを読むと好みではなかったのだが、映画化もされるようだし一応チェックしとくか、という軽い気持ちで読んだら、やっぱりイマイチだった…(笑)。タイムスリップはいかん!そんな事が出来たら、世の中の不思議が理路整然と説明できないではないか。まぁそういうファンタジーが理解できる人ならいいんだろうけど。
父は一代で築き上げた一流企業の社長。弟は父の会社で働いているが、自分はそんな家に反発して、小さな下着メーカーの営業マンをしている。彼には兄がいたが、父とケンカした夜に自殺した。そんな中、主人公の真次は地下鉄の通路を歩いているうちに、いつの間にか30年前にタイムスリップしてしまう。それは、兄が自殺する日の夜だった…。という序章から、徐々に昔の時代に遡ってタイムスリップを繰り返す真次。そして若い頃の父に出逢い、彼に対する意識も変わっていく。過去で意外な事実が明らかになった後、現世に戻った真次が見たものとは?
という物語なのだが、終盤に明らかになる“意外な事実”は、予想通りだった。別に隠しておくつもりもなかったようだけどね。時代を遡ってタイムスリップするので話が分かりづらく、なーんか明らかになってない事があるような気がしてならないのよねぇ~。父の子供時代のエピソードには何か含みがあったんだろうか…。エピソードが盛り沢山な割に、スッキリしなくて気持ち悪い感じだ。
それはやっぱり、みち子(=愛人)との関係が納得できなかったからだろうと思う。不倫してる男が主人公って設定は女性の共感を得るのは元々難しいのに、真次は“ちょいダメ男”であまり魅力的ではない。まぁ浅田作品に出てくる主人公って“ちょいダメ男”が多い気がするけどね。いづれにしても「思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド」は、タイムスリップというあり得ない設定の上に成り立っている。それを乗り越えられた上で、みち子との関係を良しと思えれば受け入れ可能って感じかな。
しかし映画のキャストは真次=堤真一、アムール(真次の父)=大沢たかおってのが笑った。この二人…雰囲気似てるよね??
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壬生義士伝/浅田次郎
私はこれまで新撰組には全く興味がなかった。何やってた人達なのかも全く知らなかった。だからこの本を読み始めた時は結構ちんぷんかんぷんだったのだ。世界史専攻の私としては、幕末の出来事なんて「大政奉還」くらいしか覚えてなかったのでねぇ。
 その辺の情勢を歴史に詳しい父と新撰組に詳しいS編集長に聞いて、知識を補いながら読んだ。すると一気に吉村の置かれていた状況が理解できて、その非業の生涯に対する感情移入度も倍増である。幕末の歴史に詳しくない方は、ちびっと知識を入れてから読むと良い。何しろ私は戊辰戦争も忘れてたくらいだったからねぇ。それを知らずに読んだら、吉村の子が何故あんな目に遭うのか全く理解できなかった事でしょう。
 親子愛、家族愛、友情という、誰もが心の奥に大事にしまっている宝を言葉にされる時の切なさに溢れた物語。それが「そこまで言わないでいいから!それ言われたら泣いちゃうから!」と突っ込みたくなる程、ストレートであざとい表現なのだ。これぞ浅田節、と私は思うが、ありきたりのお涙頂戴モノと言われればそうかもね。こういう救いようのない悲しみによる涙がイヤだという気持ちは分からなくもないし。
 オープニング以降の物語は、吉村の独白と関係者の語りによって構成されている。この造りが絶妙で面白い。物事というのは、見る人によって全く解釈の異なるものなのだなぁと改めて考えさせられる造り。そして吉村に関わった人たちが語るからこそ、その物語がよりリアルになるのだ。何しろ50ページに一回は思わず涙が出てしまうようなエピソードが語られるので、電車の中で読むのは大変だったよ。侍とは何て悲しい生き物なのでしょうか。そんな遣りきれない矛盾を感じながらも、もう少し新撰組について勉強したいなぁとしみじみ思ったのであった。全然関係ないけど、この作品に出てくる沖田総司はセリフ回しがエノさんにそっくりでカッコ良かったなぁ~。肺病で亡くなるあたりも耽美な感じ♪来年の大河ドラマは絶対観よう!
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