HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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アウトリミット/戸梶圭太
『溺れる魚』と同じ世界観のアクション小説。『溺れる…』で圧倒的な存在感を放っていた御代田警視正がサブキャラとして登場し、彼の部下である女性の神崎警視が男性顔負けのアクションを繰り広げるクライムノベルだ。独特のスピード感と、個性溢れる登場人物たちの物語がパラレルで進むという、作者お得意のストーリー運びで軽快に描かれた作品である。
 犯人を殺してしまった井川刑事は、警察には犯人を追跡していると見せかけながら犯人が残したメモリーカードを現金に換えるべく墨田区近辺を逃げ回る。タイムリミットは18:00。しかしその日は隅田川の花火大会が開催されるため、街は見物客でごった返していた。“死体を隠す”“現金の受け渡し”“犯人は生きていると警察に見せかける”という命題を背負った彼は元同僚の男を共犯者に選ぶが、彼の取った意外な行動が更なる混乱を生んでしまう。拳銃、三千万、ボールペン・ガン、ホモのカップル、警察署内にはびこるマルチ商法、スナックの屋上で繰り広げられる花火見物の宴…。それら全てが暴力によって粉砕されてゆく。 相変わらず、ぐちゃぐちゃな物語だ。
 と言っても物語は極めてシンプル。目的は一つしかないのに、それを多数の登場人物が絡んで複雑にしてゆくのだ。他人を意のままに操ろうなんて、絶対に無理なんだよなぁと納得させられる物語だ。そしてウソは必ず見破られるのだ、という事も。
  井川が次々と窮地に陥っていくので、その先が知りたくてついつい読んでしまう。そんな物語。そして結末はこれまた意外にシンプルで。でもそれまでの物語があまりに濃密なので、最後くらいあっさりして丁度いいのかも知れない。神崎警視の意外なプライベートがちょっぴり明かされて、物語は終わる。相変わらず痛快でクレイジーなドタバタ劇だ。いろんな事を深く考えずに、読んだままのシーンを想像するだけで充分楽しい。でもやっぱり『溺れる…』には適わないかな…。ヒット作のパワーを維持し続けるってのは大変な事なんだなぁと痛感するね。続編にも期待しよう。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

闇の楽園/戸梶圭太
『溺れる魚』が気に入ったので、文庫化された著者のデビュー作を読んでみる事に。相変わらずいろんな事をキチンと調べてありますよ、若き社会派作家って感じかなぁ。複雑な人間関係とか二重三重にかけられた策略とか、一歩間違えば単なるドタバタ劇を上手く一つの物語にまとめてある。700ページを超える長編だが、スピーディな展開であっという間に読める傑作だ。
 キーワードは「都心から二時間ほどの田舎にある巨大な敷地」。その土地を巡って、土地の所有者と主人公とカルト教団と産業廃棄物業者と町会議員と町長とその娘とその彼氏と町役場の職員…などなどが大騒動に巻き込まれてゆく物語だ。暴力と狂信、罠とセックスと暴動。そんな状況がスピーディに展開して、人間関係をぐちゃぐちゃにしてゆく。カルト教団の存在が、実に不気味でいいテイストになっている。ホントにあるんだろうなこんな話…と思えてしまうリアルさもイイね。
 あとがきは映画版『溺れる魚』の堤監督。その中でも語られていたが、戸梶作品の魅力は「実在する言葉」である。ブランド品や芸能人、コンビニの名前などが全て実名で出てくる。リアルな単語たちが創作にリアリティを与える、その手法はまるでスティーブン・キングの様ではないか。登場人物の生き生きとしたセリフも、その一つ。いかにも創りました、想像してくださいっていうノンフィクションものとは違う魅力があるのだ。
 物語全体の奥深さは『溺れる魚』には敵わないが、デタラメさ加減は本作の方が好み。ご都合主義的な強引な展開もあるが、まぁそこはご愛敬。「破天荒な犯罪をポップなノリで描く」という紹介がピッタリな作品だ。相変わらずぼやけたラストがイマイチ気に入らないが、そこは今後の作品に期待って所かな。石田衣良と共に、これからが楽しみな作家だ。
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溺れる魚/戸梶圭太
ここんとこ二度目の『ハンニバル』を読んでいたので、久々の新作。大好きな窪塚洋介クンが出演する映画の原作本だ。窪塚クンの役は“色白で小柄な女装趣味の刑事”の秋吉である。彼とペアを組んで公安刑事の内偵をする白洲刑事の役は椎名桔平。本の序盤を読んだだけで、なんてピッタリな配役なんだろうと思った。特に窪塚クン!彼は小柄じゃないけれど、小顔で耽美な彼だったら秋吉の役はピッタリだ。戸梶圭太という作家は初めてなので、あまり期待せずに読み始めたがかなり面白かった。初めて『ハサミ男』を読んだ時の衝撃に似てる。文体がものすごくスタンダードでしっかりしてて、かなり好みだ。キャラクター設定も練りこんであって、セリフ回しが生き生きとしているのがイイ。ノーチェックだったなぁ、戸梶圭太。これまでの作品も読んでみようかなと言う気になった。かなり気に入ってしまったわ。
 特に終盤に登場する御代田という警視正がメチャクチャ好みでカッコイイのだ。丁寧な物腰でありながら冷徹。スッキリとしたスタイルで、『踊る大捜査線』の筧利夫を思い出すキャラクターだ。彼みたいに上品で物腰は柔らかいんだけどやる事はゴーカイ!っていうキャラクター、好きなんだよね~。優雅で上品な深町という賭博場の借金取り立て屋もかなり好みだ。それに比べて伊勢崎の汚らしさと言ったら!“自称・耽美派”な私の世界には生息しない生き物。全身から悪臭が漂う大男なんてイヤだよぅ。こんなモノが警察官、しかも公安の刑事だとは…。ぶるぶるぶる。
 その他にもちょっとイっちゃった革滅派の活動家とかいかにもなチンピラとか現代アートの芸術家とか、ホントに多彩な登場人物たちが生き生きと描かれている。こういう世界ってホントにあるんだろうなぁと思いこんでしまうようなリアルなストーリーに必要不可欠な人物ばかりだ。ラストは大金を巡っての大捕物。そして最後にニンマリした意外な人物。このあっけないような、その先を想像させるようなオチが殊の外気持ち良かった。いつもだったらこのような漠然としたドタバタした終わり方じゃ納得できない私なのだが、何故か「それもアリ!」って気持ちになっちゃったのが不思議だ。これ以上説明は要りません、っていう位にキャラクターがしっかり描かれていたからかも知れない。が、やっぱり二人の刑事の行方は気になるよねぇ。
 これまで読んだ本では平然と人を撃ったり殺したりするような登場人物が多かったのだが、ここの登場人物は皆、人を撃ってはげーげー吐いて、死体を見ては精神が崩壊しちゃったりする。それが案外普通の反応なのかもね、人間臭くてイイじゃん。しかし終盤はホントに読んでて身体が痛かった。昔映画で見て気持ち悪くなっちゃった「割り箸を鼻の穴に入れて突き上げる」なんてレベルの痛さじゃないんだよね、このバイオレンスさはちょっとツラかったかも。あと匂い。体臭や饐えた部屋の匂い、大量の血の匂いがページからわき上がってくるような描写、これもかなりリアルだ。ところで『溺れる魚』とは、脅迫犯人のコードネームである。脅迫に応じなかった際に犯人が行う破壊工作にちなんで名付けられた、言い得て妙なキーワードだ。このセンスにも脱帽!スピード感あふれるストーリー展開で、一気に読める傑作。日本の現代ミステリを読むならこれ!という位、お薦めしたい一冊である。

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