HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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邪魅の雫/京極夏彦
お待たせしました、京極夏彦の最新作。前作の出来がイマイチだったので多少心配していたのだが…今回は面白いよ!全817ページの大作も一週間で読破。私の大好きなエノさんの恋愛事情も垣間見る事ができて、ファンも納得の一冊だ。
東京の江戸川で起きたサラリーマン殺人事件。その事件現場近くで目撃されていた香具師の男は、殺された男の恋人らしき女の写真を持ち歩いていた。その後、大磯で女子学生の死体が発見される。その被害者と香具師の男が平塚で目撃されている事が分かり、事件は一気に連続殺人事件へと発展する。エノさんの縁談が悉く破談になる理由を探っていた益田、戦時中に特殊な毒薬を研究していた人物と知己であった中禅寺、真犯人の意図に気づき始めていた榎木津。それらが全て一つに繋がった時、待っていたのは悲しい結末だった…という物語だ。
舞台は大磯と平塚。二箇所を移動しながら連続殺人事件が起こるのだが、物語を語る登場人物の一人がかなり愚鈍な人間なので、その言葉をまともに聞いていると段々分からなくなってくる。でも事件の重要人物の正体は、割とすぐに分かるんじゃないかな。それを理解しながら読むと流れも解りやすいだろう。
「邪なことをするとー死ぬよ」というエノさんの名ゼリフが切ない殺人事件。いわないで。その言葉が悲しくて胸につきささる。ちょっと人が死に過ぎな感はあるが、プロットが楽しめる名作だと思う。エノさんの新たな一面も感じられる一作。何度でも読み返したいと思えるシリーズ作は久しぶりだな、是非とももう一度頭からゆっくり読んでみようっと。


邪魅の雫 邪魅の雫
京極 夏彦 (2006/09/27)
講談社
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続巷百物語/京極夏彦
2005年5月にWOWOWで放送されたドラマ『巷説百物語~狐者異』の原作。それぞれが独立した短編の形を取っているが、共通したテーマが根底にあるため、一つの長編物語のような仕上がりになっている。分量は約760P、新書の厚さにして約5センチという大作である。これを2ヶ月に渡ってちびちび読んでいたので、読むたびに前の“仕掛け”を思い出すのに必死(笑)。全ての登場人物それぞれが背負った運命と業、そしてその生涯をしっかり理解して記憶してから読まなければいけないのでかなり大変だ。でも最終ページは、ちょっと泣ける。いや、泣くと言うかその前に「ええっ?これで終わり?」という気持ちになってしまうかもしれないけれど…。
 『野鉄砲』は百介が兄の軍八郎に頼まれて、八王子で起こった“頭に石がめりこんだ死体”に関わる殺人事件の真相を暴く物語。ここでは蝙蝠組の島蔵親方と治平にまつわる悲しい過去が明らかになる。『狐者異』は、何度斬首されても生き返る悪人・祇右衛門の謎を解き明かす物語。おぎんの過去と又市、小右衛門との関係が語られている。『飛縁魔』は丙午生まれの女と火事にまつわる物語。その後の物語に大きく関わってくる“白虎のおきょうと朱雀のおきく”という希代の悪女たちが登場する。『船幽霊』は百介とおぎんが、秘技「飛火槍」にまつわる事件に巻き込まれる物語。 北林藩、右近、太郎丸、楓姫、小右衛門など、次の『死神』に繋がるエピソードが満載だ。
 『死神』も以前WOWOWで『怪~七人みさき』という題名でドラマ化されている。北林藩にこれまでの登場人物全ての業が集結、そしてついに物語は収拾されるという壮大な物語だ。そして『老人火』は『死神』より六年後、一件落着して平和を取り戻したかに見えた北林藩に起こった新たな事件とは?という物語。その六年の間に闇の社会では大きな抗争があり、治平と西の傑物・十文字狸が死んでしまったらしい。私としてはこの辺の話をもっと知りたいと思うのだが…。数々の謎を残したまま、この時代での物語は一応決着する。え~?なんかスッキリしないんですけど?
 というモヤモヤはいくつか残るが、それは次作『後巷説百物語』で解明される事を期待しよう。前作では語られる事のなかった又市たちの過去。それを知ってしまったら、最終ページでは思わず胸がきゅんとしてしまうでしょう。御行姿から抜け出せなかった又市が黒装束を身に纏った時の決意は如何ほどのものであったのか。憎めない、いやどちらかというと愛すべき悪人達の末路を、もうちょっと知りたいと思う。 一言で言えば、「必殺シリーズ」の妖怪版。前作よりも人間味あふれる物語が多かったな、と感じたのは、やはり主要メンバー達にまつわる物語ばかりだったからだろうか。特に私は丙午生まれなので、『飛縁魔』はとても興味深く読ませてもらったわっ!しかしWOWOWのドラマのキャスティングが絶妙だったせいで、おぎんが出てくるたびに小池栄子の顔が浮かんでしまった…。前の遠山景織子もなかなか良かったけどね。WOWOWのドラマの出来は悪くないので、併せて見るのもお薦めです。
続巷説百物語 続巷説百物語
京極 夏彦 (2005/02/24)
角川書店
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百器徒然袋-風/京極夏彦
待ってましたのシリーズ最新作。と言ってもこのシリーズの主人公はエノさんだ。眉目秀麗、腕力最強、おまけに元子爵の家柄という天に二物も三物も与えられた男が大活躍するこのシリーズは、エノさんファンの私にとっては本編よりもオモシロイ筈なのだが。前作よりも歯切れが悪い仕上がりである。京極作品はページが多いので有名だが、本作は無駄なページが多すぎる!なんかいつものノリと違うなぁと思って初出一覧を見てみたら、発表された雑誌がバラバラである。これにはビックリ。『雲外鏡』はe-NOVELSと週刊アスキーの両方に掲載されたらしいが、このシリーズ作品が講談社以外の出版社で発表されるとは思わなかった。おまけに一作目の『五徳猫』が発表されたのは2001年5月で、最後の『面雲鏡』が発表されたのは2004年5月。発表する媒体を変えながら3年もの月日が経っている訳だ。…何となく作者の迷走ぶりが感じられるなぁ…。
  物語は前作と同じく、本島という凡庸な一般人によって語られる。彼が何故、薔薇十字団と呼ばれる榎木津の一味に加わったかという経緯は前作に詳しいが、本作ではその後彼が“自ら望んで”事件に巻き込まれてゆく物語を紹介している。そしてその事件の片棒を担ぐのは、本島の隣の部屋に住んでいる近藤という紙芝居画家。前作ではサブキャラ的存在だった彼が、本作では事件発端の鍵を握る人物へと成長しているのが微笑ましい。『五徳猫』はスランプに陥った近藤に本島が左手を挙げた招き猫を買って行ったのが事件の始まり。福を呼ぶ招き猫は右手を挙げている筈だーという近藤の主張を確認するために豪徳寺に出かけた彼らはそこで「榎木津」という名前を耳にする。それが縁で知り合った女中の奇妙な相談事を解決すべく榎木津の元を訪れた本島は、そこで風俗店が絡んだ異様な事件に巻き込まれる事になるのだった。その事件を“暴力をもって”解決するのは、我らがエノさん。そしてその事件を発端に、『雲外鏡』『面霊気』という事件が起こるのである。
 『雲外鏡』は 本島が拉致されて危うく殺人事件の犯人にされそうになる事件。大阪の霊感探偵・神無月が仕掛けた挑戦に、エノさんはどのように対処するのか?『面霊気』は空き巣に入られた近藤の家から見つかった怪しげな面にまつわる事件。今度の敵はアノ羽田老人、エノさん一味が彼らに仕掛けた罠とは?という、正義と策略が入り乱れた奇怪な事件三編が収録されている。物語は割と単純なのだが、ちょっぴり頭の回転の鈍い本島が絡むと流れが悪くなるのだ。おまけに本島のセリフに余計な言葉が多すぎてテンポが悪い。ちょっと笑いをとろうとしてるのかもしれないけど、逆効果だなぁ…。第一彼って、こんなおしゃべりなキャラだったっけ??
 ハッキリ言って、シリーズもここまで来るともう惰性である。新刊が出たらとりあえず読まなきゃ、と思うけれども既にピークは過ぎていて、あまり心に残らない感じ。エノさんの馬鹿ぶりには拍車がかかっているし、京極堂の意地悪さには磨きがかかってるし木場の下品さにはもう手がつけられないし…。ただ一つだけ、前作と本作を繋げる仕掛けがあって、それは大変気に入った。前作では語り部の名字が最後の一行まで明かされなかったのだが、本作では彼の名前が最後まで明かされないというギミックが用意されているのだ。でもこれを明かしてしまったら、もう次作はないのかな~?エノさんが主人公という趣向はいいが、実は彼が出てくるページは全体の1/3くらいである。いや、もっと少ないかな?もっと彼が活躍してくれるならこのシリーズもアリなんだけども。まぁそれよりも本作でも前作でも紹介されていた「大磯の事件」がなかなか発表されないのが気になる。それが次回作になるのなら、はたまたエノさんが大活躍しそうな雰囲気ではあるのだが。とりあえず過大な期待はせずに、のんびりと新作を待つ事にしますわ。
百器徒然袋 風 百器徒然袋 風
京極 夏彦 (2004/07/06)
講談社
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陰摩羅鬼の瑕/京極夏彦
久々のシリーズ最新作。この日をどれだけ待ちわびていたか…!その熱い思いがあれば新書で750ページにも及ぶ重さも厚さも何のそのさ♪と思いながら読み始めたのだが…。うーむこれは…!シリーズ一番の駄作、だな。
 まず前置きが長い!長すぎる!シリーズ作品中で一番のテンポの悪さだ。今まで以上に余計なセリフが多すぎる&状況説明が多すぎるというのが原因だろう。そして物語に直接関係ないムダ知識の説明がいつもに増して長すぎる!今までは京極堂のウンチクを素人が聞いてきたのでそれなりに分かりやすかったが、今回はソノ道のオタクと一緒に疑問を提示しあいながらしゃべるのでなかなか結論が出ないのだ。今までの作品よりも議論の的が絞られているので分かりやすいと言えばそうなのだが、一つの事について長く語られすぎて話に飽きた。今までは一つの項目を説明するために違う分野の知識が引っ張り出されてきて…という感じでオタクの中にもインテリジェンスを感じたものだったが。今回はマジで、単なる“儒学オタク”の論争を読んでるだけ、じゃなかった?
 事件の真相を聞いて「そりゃないよ~!」と思ったのは、最後まで作者が隠した一文があった事。そしてもちろん、犯人の動機についても。いくつかの事件が複雑に絡まり合って、そこで人間の切ない欲望や狂気に満ちた渇望などが明らかになるこれまでの作品とは大違いの結末である。非常~に底の浅い事件を解明するために、無理矢理いろんな人の長話を付け加えて750Pにしたのね、という印象の物語だ。
 エノさんが失明する事は知ってたので、ついにその原因が分かる!と大いに期待していたのだが、原因については一切語られず…。しかも朝起きたらいきなり目ぇ見えるようになってるし…。この変わりぶりは一体何が原因なんだろう?担当編集者が変わったのか、京極センセがスランプなのか…。次回作のタイトルも発表されているのが、この調子では今後が大変心配である。日本に根付いた儒教と仏教の関係についての知識をひけらかしたい時以外は、読み返す事はないでしょう…。
陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) 陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)
京極 夏彦 (2003/08/09)
講談社
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