HOT SHOT! book
月1ペースで読んでいる小説の読書感想文です。
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灰色のピーターパン/石田衣良
「池袋ウエストゲートパーク」のシリーズ6作目。
・灰色のピーターパン
盗撮をしていた小学生を恐喝してきた上級生との諍いが、凶暴なOBの参戦によりマコト、タカシを巻き込んだ大騒動になる物語。まぁガキの争いは面倒だというマコトのセリフ通りの展開だったかな…。

・野獣とリユニオン
通りがかりの男に足を壊されて自分の夢を諦めた男の妹が、犯人に復讐を誓う物語。人を憎む事の虚しさ。「相手を知る」事で矯正できる関係もある。人間ですもの、他人との関係ってそういう事の積み重ねだよね。

・駅前無許可ガーデン
キャバ譲御用達の無許可保育園に勤める男にかけられたロリコン容疑を晴らすために、真犯人を見つけ出す話。もうちょっと奥深い設定に出来たような気もするなぁ…。何となく物足りない印象。

・池袋フェニックス計画
指折りの歓楽街である池袋の浄化作戦の影に潜む闇の関係。池袋は“ああいう感じ”だからイイんだよねぇ、と近隣住民の私は思うわけで。まぁ闇の関係については序盤から予想できる展開だけど、タカシの色男っぷりが堪能できる一作。

灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク6 (文春文庫 い 47-10)灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク6 (文春文庫 い 47-10)
(2008/10/10)
石田 衣良

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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

LAST/石田衣良
石田先生の文庫本には「文庫版あとがき」が入っている事があって、それが愛読者にはとても嬉しい。今回は各作品に対する思いとかその作品を書いていた時の自分の状況などが書かれていてとても面白かった。特に先生が『4TEEN』で直木賞を受賞した時のドタバタぶりが何か微笑ましい。当時1時間おきの取材が1日6件もあり、そんな日が週に3日もあって大変だったと言っているが、今はひと月に取材が40件もあるんだそうだ(笑)。何故、と言うけどそりゃ先生、あなたのスノッブでソフィスティケイトな雰囲気と、作品の持つバイオレンスや堕落というキーワードとのミスマッチに惹かれてしまうのではないでしょうか?間違いなく、私もその一人なんだけども。
  「LAST RIDE」は町の製本会社を営む男が、悪徳な小切手金融に借金を肩代わりされて破滅してゆく物語。家族を売るか自分の命で借金を清算するか迫られた男の決断の行方は?というテーマだ。いつも最後にスカッとした結末を用意してくれる事の多い石田先生の物語にしては何かモヤモヤする終わり方。でもそれが逆にとても好感が持てた。物語には希望とか絶望とか、いろいろな結末があっていいよね、と思わせる作品だ。「LAST JOB」は住宅ローンに追われる妻が出会い系サイトで身障者と知り合う話。身障者のセックスをリアルに描いているが、それぞれが抱える問題や悩みが巧くリンクしていてちょっと切なくなる。「LAST CALL」は軽い気持ちでテレクラに入った男が衝撃的なシーンを迎える物語。先生はホント風俗に詳しいな~。テレクラってそういうシステムだったのか、と勉強になりました(笑)。でもホラーな結末は、かなり好み。
 「LAST HOME」は上野のホームレスを題材にした物語。私はホームレスには同情できないと思っていたけど、その原因は人によって様々だしその暮らし方は意外と秩序が保たれているようだ。作者が気に入っているというミチヨ、これの性別が何度読んでも良く分からなかったんだけどね…。「LAST DRAW」は盗難通帳から金を引き出す“出し子”をモチーフにした作品。 こんな簡単にお金って引き出せるものなのか、と思ったけど当時は銀行のチェックもこの程度だったらしい。『溺れる魚』の小気味いいラストのような軽快な終わり方が良かった。「LAST SHOOT」はヴェトナムのニャチャンを舞台にした少女売春の話。少女売春なんて悪趣味な、と思うけれど変態には変態の悩みがあるものなのだなぁという事を学んだよ。しかし少女の膣を大きくする漢方薬が実在するという話にはビックリ。かなり衝撃的なラストにもビックリだ。「LAST BATTLE 」は借金から身を持ち崩して街の看板持ちとなった男の物語。実際ヤクザの抗争にロシアンルーレットが使われる事なんてないだろうけど、「いや、もしかしたらあるのかも?」と思わせてしまう構成が秀逸。あんな事しちゃって、彼のその後が気になる物語だ。
  これまで読んできた短編集の中でも一位二位を争う面白さ。石田先生のテイストが存分に活かされた作品ばかりだ。物語はここまでコンパクトな文章量でも充分面白いものになるのだ、というお手本のような本。引き算の美学、みたいのを感じたなぁ。京極先生にもその手法を是非学んで欲しいと思うような傑作。石田先生ファンなら必読、短編好きの人は要チェック、社会派ミステリ好きにもお薦め。リアルとフィクションというのはこういう狭間で表現するとエンタテイメントになるのだという見本のような短編集、世のクリエイターに是非読んで欲しいと思う一冊だ。
LAST (ラスト) LAST (ラスト)
石田 衣良 (2005/08/12)
講談社
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

電子の星~池袋ウエストゲートパーク4/石田衣良
最近はテレビのコメンテイターなどで姿を見かける事もある石田先生は、自他共に認める音響マニアである。以前「サンクチュアリ/大人の聖域」という深夜番組に出演した時には、自宅にある320万円もするオーディオシステムを披露していた程。そんな先生が描く小説の主人公は、池袋のトラブルシューターでありながら好きな音楽はクラシックという設定だ。昨今のクラシックブームの立役者は間違いなく石田先生であると解説者は言う。まぁ間違いではないかもしれないけど、『のだめカンタービレ』の方が影響大のような気も…。とにかく、このシリーズは音楽と深く密接した世界観で描かれているのだ。前作で激しいレイブの世界を描いた次のお題は、ジャズである。
 『東口ラーメンライン』は、拒食症の少女と池袋東口で繰り広げられているラーメン戦争の模様を描く。そう、これはドラマ『池袋ウエストゲートパーク外伝~スープの回』に使われたモチーフ。前作の宮藤官九郎のあとがきでもこの事は紹介されていたので、楽しみにしていたんだよね。物語は大したひねりもなく、全くもって普通だったけど…。『ワルツ・フォー・ベビー』は、上野のチーマー、トシヒロの死の真相を探る物語。ビル・エヴァンス・トリオの「ワルツ・フォー・デビー」というジャズのメロディが切なく響く。子供には親に見せない顔がある。それを知らずに真実を追い求めて行った結果、待っていたのは今の幸せをも壊してしまう程のツラい現実だった。「ワルツ・フォー…」の原曲を知っていたら、もっと良かっただろうな。
 『黒いフードの夜』は、違法デリヘルで売春をさせられているビルマ人少年の話。88年にビルマで起きた民主化運動に関わった少年の父が抱える闇。そこから逃れようとする少年を助けるためにマコトがある作戦を考える。警察やGボーイズのキングことタカシを巻き込んで打つ大芝居はいかにもIWGPっぽいけど、ビルマの刑務所での拷問シーンとか少年売春とか、何とも心が寒くなるモチーフの作品だ。『電子の星』は人体損壊というものすごいインパクトの映像にまつわる物語。山形のネットおたくから「池袋でいなくなった親友の行方を捜して欲しい」という依頼を受けたマコトは、いなくなった親友の部屋で背筋が寒くなるような映像を見せられる。それは透明のシリンダーを模した舞台の上で、身体の一部を切断するというショウを映したものだった。ショウに出演した後に自殺してしまった親友の弔い合戦として、マコトが書いた作戦とは?という話だけど、悪者は案外すぐに分かってしまう。それを陥れる作戦も、割と普通。でもその世界観と悪趣味なショウの描写は迫力満点。こんな世界、ホントにあるのかも…と思わせるリアルさが怖い。ヘンタイ産業っていうのは無くならないらしいけど、「人体損壊ショウを観るのが趣味です」なんて彼氏(彼女)はイヤだなぁ。やっぱヘンタイはヘンタイ同士でうまく行っているのに違いない!いや、是非ともそうであって欲しいわ…。
  軽い語り口で、さくさく読める短編集。IWGP ファンなら、もちろん必読。ただ前作の『西口ミッドサマー狂乱(レイブ)』ほどのインパクトがある作品はなかったかな…。あんまり魅力的なサブキャラが登場しなかったのが原因の一つかも。ただ相変わらず先生の描く若者の世界はリアルで、登場人物達が小説の中で生き生きしている。日々変わってゆく池袋の街をリアルタイムに描いているし、先生は密かにしょっちゅう池袋に来てるのかしらん??だったら是非とも一度、池袋の街でお会いしたいなぁ。先生、『東口ラーメンライン』の舞台となった東通りの近くには大きな飲食ビルが出来たんですよ♪変わってゆく池袋の街は、どこでもマコトの舞台になる。それがIWGPの寅さん的な魅力なのかもしれない。次作にも乞うご期待、である。
電子の星 池袋ウエストゲートパークIV 電子の星 池袋ウエストゲートパークIV
石田 衣良 (2005/09/02)
文藝春秋
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

スローグッドバイ/石田衣良
『池袋ウェストゲートパーク』などの前衛的ミステリで定評のある石田先生が描いたラブストーリー。現代の若者の生き様を鮮やかに描いてきた先生らしく、そこにあるのはホントに普通の男女だけど恋愛の形は様々、という物語ばかりだ。恋をして、時間を共有して、それでも別れてしまう恋人たちの風景がリアルに描かれている。
 『泣かない』は恋人に振られた女友達と 、その悲しみを分かち合う男の子のお話。女が恋を捨てる時の苦しみと、男友達という微妙な関係の異性のありがたさが分かる物語だ。『十五分』は大学のゼミの女の子と恋をして別れるまでの一夏の物語を描く。若いときの恋愛ってこんな風に簡単に始まって、のめり込んで行ったらあっという間に別れてしまう。これが若い頃にありがちな恋愛ってヤツなんだなって思う。『You look good to me』はネットで知り合った女の子と徐々に心を通わせてゆく課程を描いた物語。コンプレックスの重さってヤツは本人にしか分からないからやっかいだ。それをこんな風に解釈してくれる男がいたら、楽かもね。『フリフリ』は、ふとしたきっかけから恋人同士のフリをする事になった二人の行く先を描いた切ないお話。異性としてより人間として魅力的でありたいと思っている女性に、ふさわしい結末。『真珠のコップ』は風俗嬢とその客の間で芽生えた恋物語。ありがちなパターンなのか…?風俗の世界は未知数なのでよく分かりませんでした。『夢のキャッチャー』はシナリオライターになる夢を叶えようとする女性とその恋人の物語。お互いにない部分を補いあってこそカップルは巧く行くと私は思っているのだが、自分にない才能に焼き餅を焼くっていう感情もあるのかな??
  『ローマンホリデー』はネットの掲示板で出逢った女性とデートをするまでのお話。ネットなんて所詮は虚構の世界。それをうまくロマンティックに仕上げた作品。『ハートレス』はセックスレスのカップルが気持ちをすれ違わせてゆく物語。釣った魚に餌をやらないとか、妻を女として見れないとか、女性にとっては結構切実な問題をリアルに取り上げた作品でドキドキする。『線のよろこび』は新しい才能に出逢った時の喜びから恋が生まれる瞬間までを描いたお話。男を引っかけるのってこんな簡単なものなのか??とも思うが、芸術家の感性というのはそういうものかもしれない。『スローグッドバイ』は別れてしまった彼女と“さよならデート”に出かけた一日のお話。こんな風にお互いを思いやりながら別れられたらいいと思うのかもしれないけど、私はこんな後を引きずりそうな別れ方はキライだな。
  ラブストーリーというのは誰もが身近に感じられるテーマである事から、感情移入しやすい人と実際はこんなんじゃない!と思ってしまう人がいるのだろうと思う。私は間違いなく後者だ。と言うか、身も蓋もないけれど他人の恋愛模様なんてあんまり興味がない。実際の話ならまだしも、それが創作の世界なら尚更だ。マンガだと恋愛物も大丈夫なんだけど、小説だとなんか違和感を感じるのは何故だろう??主人公の姿形を自分で想像して読む分だけ、思い入れが強くなってしまうのかな。その分リアリティに欠けると引いてしまう…そんな感じだろうか。これが長編だったら分からないけど、私は短編のラブストーリーはあんまり好きじゃない事に気づいちゃったかも。森博嗣の『まどろみ消去』に収録されている『やさしい恋人へ僕から』みたいな恋愛小説だったらまだ可愛くていいのだが…。現代の若者の恋愛模様を「ふーん」って思いながら読むんだったら、いいかもね。
スローグッドバイ スローグッドバイ
石田 衣良 (2005/05/20)
集英社
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

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